東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

【中間発表】植物と人間(私)の、強さと弱さと──。(文:恵利一花)

2022年11月25日 (金)

 渡辺先生、オガタさん、コメントありがとうございました。コカブは順調に育っております。今週末のTOEFLが片付けば、遅くはなりましたがようやくカイワレに手が出せそうです。暖房をつけるようになったので、少し前に比べて室内は逆に暖かくなっており、カイワレにとっても快適かと思われます。

 

 フランス語に関しては、「発音は同じなのに綴りが違う活用なんて、どうやって覚えるんだ!文末の子音は読まないなら書くな!書かれたアルファべはちゃんと全部発音してくれよ!」と半ばキレ気味でしたが、ある程度文法をものにし、いざ文章を読んでみるとあら不思議。男女だの単複だのを細かすぎるほどに分けてくれるおかげで、今誰が話しているのか、誰のことを言っているのか、それが女性なのか男性なのか、いったい何人いるのか。綴りと活用を見るだけで、場面の様子が全部分かっちゃうんですね。オガタさんの言うように、この情報量の多さを語順で補おうとしているのだとすれば、覚えてしまえば勝ちのフランス語よりも、英語の方が使いこなすのは難しいのでは?とも思ったり。

 カミュの「異邦人」を原文で読むのが目標地点だったのですが、ふと「もしかしてもう、ちょっとなら読めんじゃない?」と思い立って原書を開いたところ、ちょっとどころではなく、まあまあ大体読める。知らない言語をゼロから学ぶというのは実に6、7年ぶりになるわけで、久しぶりのこの「0→1体験」には、さすがに感激しました。最初の大きな谷を越えてからは、少し楽しいですね。何が決め手なのかも、誰が決めているのかも分かりませんが、おにぎりも納豆も男性名詞らしいです。

 

 そして先週ようやく、心の重荷筆頭格であった仏検くんが終了しました。結局コツコツと勉強する時間は全く取れませんでしたが、直前1週間死ぬ気で机に向かったところ、意外と余裕で3級に合格。しかし、就寝時と授業を受けている時以外ずっと問題集を睨んでいたため、試験が終わった途端に完全に燃え尽きてしまい、その他諸々の不調も重なって、その後の1週間はほとんど寝込むことになりました。

 

 そして迫る中間発表の〆切。焦燥感はあるものの一言目を書き始めることができず、ほとんど布団に沈むような体制でただ過去記事を眺めていたところ、ふと渡辺先生の、震災直後の手記があるのを見つけました。ちょっとだけ冴えた目でそれを読み、「私もシャキッとせなあかんなぁ」と思い直して、久方ぶりに起床。

 米を炊き、風呂に入り、必要最低限の人間の生活を取り戻したところで、洗濯待ちのコインランドリーにてパソコンを開いた夜の11時です。

・・・

S__9338915.jpg祖父母から長浜のしぐれが届きました。

上品な甘さで美味しいです。糖分補給。

1.驚き~植物の強さと弱さと~

 一番の驚きというか、感心したポイントは、この数週間で圧倒的にコカブが強くなったということです。タネが芽を出すまで、そして小さな子葉が本葉を出すまでは、実際失敗も多かったですし、見ていてひやひやする不安定さでした。しかし一度本葉が出て、「根付いてきたな」と思わせてからは、本当に強い。ここ2,3日は風が強く、カブの葉もあちらこちらへと振り回されていましたが、それでも変わらず元気そうです。

 

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コカブ(11/22 気温16℃/8℃)

前日の風で盛大になぎ倒されていたが、

土を寄せて立たせたところ今は元通りに。

 
 人間の世界でも、いくらか前までは子供の死亡率が非常に高く、現在まで残る七五三を祝う習慣や、柳田国男の「七歳になる迄は子供は神さまだと謂って居る地方があります」という言葉からも、幼児期の成長の難しさが感じられます(ただ、この柳田国男の主張には明確な根拠や具体例が無いらしく、最近では否定的に捉えられることが多いようなのですが、子供が元気に育つことは稀だったという現実は確かでしょう)。
 うちのコカブは、おそらく7歳の、最後の七五三を終えた時期にあるのではないかと思います。もうすでにはきはきと生意気を言うようになる歳でしょう。いつでも土からすっぽ抜けてしまいそうだった子葉2枚の頃からは見違えるように力強くなりました。
 
 しかし、ある程度大人になれば心配なし、という訳には行かないのも承知しています。
 

 何年か前、近所の稲がみんなウンカという虫にやられ、大半が駄目になってしまった年がありました。見渡す限りの黄金の海のようだった田んぼが突如浅黒くなり、台風になぎ倒されでもしたかのように地べたに倒れていて、農業をまったく知らない私も、その異様な雰囲気に息をのんだ記憶があります。小さいながらも自分で植物を育てるようになってからはなおさら、そりゃあ台風の中田んぼを見に行きたくもなるよな、とも思いました。水をやれば元気になり、忘れているとしおれる。自分が行う一挙一動に対するレスポンスが想像以上に明確に感じられるため、たった一日の何かのアクシデントが、小さな判断ミスが、無知が、命取りになりうるという緊張感が常にあります。犬などの意思表示のできる動物というよりは、ひな鳥や昆虫の類のような、「か弱き命をこの手に握っている」という感覚が非常に強いです。

 

 そういえば実家の前のコンクリートの隙間から、なぜかサボテンが生えていましたね。一体どこから来たんでしょうか。すべての植物があのくらい図太ければいいのに......と、今は切実に思います。

 

2.参考になった記事

 まず、初回投稿をする前に参考にしたのは、昨年の林瑞紀さんの記事。......といっても、「すごいなぁ」と思っただけで、自分の記事にはほとんど生かせていません。自分も入念にタネの観察をしてみたくらいでしょうか。特に参考にしたいと思ったのは、以下の3点です。

 ①気温や湿度、経過日数に加え、行った手順などもすべて漏らさず書かれていること

 ②気になった点について、条件をそろえて比較してみていること

 ③疑問点に対して仮説を立てていること

 これらに加え、スケッチは私も絶対にやりたいと思っています。写真ではわかりづらい情報を伝えるのにも、自分で状況を整理するのにも、スケッチは最適ではないかと思います。

種の観察、播種(1日目~2日目)(経:林瑞紀)

 あとは、他の受講者の方の投稿をコソッと拝見している中で、印象深かったものを一つ。山本実永さんの「収穫と別れ」についての記事です。文体の「読ませ方」やポップさはもちろんなのですが、山本さんが「マッペが枯れ行く姿までを、詳細に記述している」ことに、少しハッとさせられました。

 マッペとの別れは十分に役目を果たした(?)後の話であり、まったくもって失敗ではないため、私とはまた違った状況ではありますが......自分はイタリアンパセリの芽が出なかったり、コカブの芽も出なかったり(かなり芽が出ない)と何度も失敗を繰り返しているのですが、ネガティブな情報、うまく育たなかったものへの言及は最低限に抑えてきたような気がします。単純に「悲しいから」という理由と、あとは「成長の記録」なのだから、失敗はメインではないだろうと。しかし、うまく育たなかったものこそが「次をうまく育てるヒント」を秘めているのは一目瞭然。失敗こそを記録し、分析するのが成功への一番の近道だろうと、反省いたしました。

第4回 収穫と別れ(理:山本実永)

 

3.参考になったコメント

 また、参考にさせていただいた外部サイトはたくさんあるのですが、その中でも特筆すべきは「Yahoo!知恵袋」ですね。少々禁じ手な気もしますが、ただ「こうしたらうまく発芽しましたよ」という成功体験が書かれた記事よりも、「どうしよう、発芽しない!」と悩んで相談している人の姿、そしてそれに対する返答を見る方が、現在進行形で悩んでいる自分の状況に合っており、参考にしやすかったです。最初から正しい方法をとっている人の手順を、途中から模倣したところで、すでに手遅れなのではという懸念があるため、その時その時に応じた対処法を示してくれる知恵袋にはとても助けられました。

 あと、自分と同じ悩みを持っている人を見ると、やはり安心します。勝手に仲間意識を持ってしまいますね。

Yahoo!知恵袋 イタリアンパセリの種をまき、芽が出ません。

4."双方向の講義"について

 間違いなくメリットの多い授業形態だと思います。あとはそれを自分が生かし切れるかどうか──。

 

 余談のようになりますが、私は通常の授業形態であっても、先生方と積極的に話してみたいタイプです。しかし、先生に話しかけるには必ず「質問」が必要で、「先生、面白かったです!似たような話をもっとしてください!」なんて話しかけ方ではいけないわけです。私はいつもその「質問」が浮かばず、結局だんまりで教室を後にする、というのがいつものパターンでした。

 しかしこの授業に参加していて気づいたのですが、私は一切授業に対して「疑問点」を持っていないわけではなくて、ただ自分の考えていることを、「先生にわざわざ言うほどのことではない」と判断して切り捨てているだけなのかもしれません。記事に、ほとんど独り言のようなつぶやきを書いてみる。すると先生やオガタさんから、専門知識を土台にした意見や的確なアドバイスが飛んでくる。自分のちょっとした感想も、専門レベルの知識をもってすれば、いろいろと付け足したり、議論の題材にしたりできるポテンシャルを持っているのかもしれないと思うと、今後の道筋に少し光が差した気がします。

 何よりこういったキャッチボールは非常に楽しく、例えれば毎週講義後に教授を独占し、自分のぐだぐだとまとまっていない考えを聞いてもらっているような状態なわけで、それはとても贅沢なことです。有効活用したい......!もっと頻繁にこの機会を楽しみたい......!というのが正直な感想で、本当、頑張りたいです。

 

5.これから

 今、数えてみると、4."双方向の講義"について までの時点で4000字を超えていました。過去記事の字数も数えてみましたが、いずれも3000字超え。やたら腰が重いくせに、書き始めると楽しくなって長々書いてしまうのが悪癖でもあります。文章力の養成も重要なのですが、自分にとってはやはり、一番の目標は野菜を無事に育て、おいしく頂くこと!ですので、アドバイスを拝するため、やはり目指すところは簡潔かつ頻繁細かな投稿です。

 やはりそのためには、渡辺先生のおっしゃる通り、「観察したその時に投稿」が一番なのだと思います。

 

 あと、最近の懸念点なのですが、ベランダが寒すぎて、長時間の観察が非常に苦痛です(笑)部屋に冷たい風が入るとエアコンが奮起し、室外機から出る風がさらに強力になる悪循環が起こっています。これをいい機会に、観察するときは植木鉢を部屋に持ち込んでしまい、そのまま記事を完成させてしまう習慣をつけられればと思います。

コメント

文学部 恵利さん

TOEFL、仏語検定3級へのチャレンジなど、色々とされているようですね。ただ、この観察して記事を書くというのも大事な講義の一枠です。仏語検定が終わったあと、燃え尽きたようにはならないように、この講義を続けることです。「継続こそ力なり」というのを誰かが言っていたような。もちろん、人生にはある種のピークがあり、そこでならどんなこともできるという状態が来ます。そんな時は無理をしても頑張るようにということを渡辺の師匠が言っていました。そうかも知れないですが、基本、毎日、コツコツと。というのが基本ですから。渡辺の震災直後の記事を読んで頂けましたか。大変でしたが、記録を残しておくことは大事と思ったわけです。もちろん、その時はできることが限られていて、文章を書く時間があったのも事実ですが、今すべきことは何であり、何から手をつけるのか、そんなことを後半戦に向けて考えて下さい。現状のペースではいけないという自覚を持って。

「ウンカのごとき」という言葉があるようですが、猛烈な大群で襲ってくることなのかと。渡辺が子供の頃、田舎で生活だったので、ウンカ、ヨコバイなどたくさんいました。猛烈に発生することはなかったですが、猛烈になる前に農家の方は防除していました。もちろん、彼らはその予兆のようなものを分かっていたのかも知れないですが。なので、この講義で農家レベルの観察眼とまでは行かないまでも、しっかり観察して萎れ始めたら、ぼちぼち水やりかなと感じることを学んで下さい。ちなみに、コカブの11/22の写真レベルであれば、渡辺は水やりをします。植物はかなり水分が抜けています。

すごいな!!! と思ったら、実行することです。何のためにそれを見たのか、自分のものにすることが大事なわけです。全くできないレベルであれば別ですが、そうでないなら、その技を自分のものにしてください。参考の仕方が独特ですね。それはそれで反則、禁じ手ではないと思います。確かにこうしたらうまくいくと言うよりも失敗している方が、臨場感はあると思います。講義でも話をしたように、どんな手を使ってもよいと言ったはずなので、禁じ手はありません。どんどん、新しい技を習得して、他の受講生と共有して下さい。自分の技だけでなく、他の人に教えることも大事なポイントです。双方向性を講義のあとのやりとりとの比較をされたのもはじめでだと思います。なるほどと思って読みました。確かにちょっと話をしたいけど、質問レベルのことをいわないと引き留めるのは難しい。その通りですね。でも、講義のことはよくわからないからというと、自分でやりなさいと言われる。ここでもそれに近いレベルで厳しいことをいうことはありますが、受講生が書かれる文章、写真からこれはまずいということを見いだすことはあります。なので、これも禁じ手ではありませんので、双方向性を活かした後半戦にして下さい。また、観察したタイミングで記事を書き、uploadを完遂する。あとでやろうと言って、よかった試しがあるでしょうか。その当たりを考えた後半戦を期待します。

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わたなべしるす