東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

第8回 浅漬けミックスに対する追肥の効果と朝霧の近況(理:山本実永)

2022年12月 1日 (木)

第8回報告 11月25日~12月1日

 こんにちは。山本である。突然だが、皆さんは腱鞘炎になったことがあるだろうか?私はないのだが、腱鞘炎になりそうだと感じた出来事がつい最近あったのでお話ししたいと思う。それは、3週間ほど前の土日の話である。自然科学総合実験のレポートと本講義の中間発表の執筆に追われていた私は、土曜日に自然科学総合実験を終わらせた後に中間発表を書き上げた。この二つを書き終わった時点で、打ち込んだ文字数はおよそ1万文字、パソコンに向かい合ってからおよそ8時間が経過していた。メールチェックをしよう、私はスマートフォンを手に取った。しかし、手首の疲労のあまり、スマートフォンを操作できなかった。かすかな手首の痛みを感じた私は、とっさに腱鞘炎のことを思い浮かべた。結局、これは腱鞘炎ではなかったようで次の日には痛みが引いた。しかし、もしこれを長期間蓄積したらどうなるだろうか?そう考えると恐ろしい。この経験を踏まえて、タイピングなどの手首を酷使する作業の際は、30分おきくらいの間隔で手首のストレッチをするようにしている。人間をホモ=ファーベルたらしめているこの手が使えなくなるということがないようにこれから気を付けていきたい。
 さて、そろそろ本題に入る。今回の主な題材は、追肥した浅漬けミックスの変化と朝霧のホウレンソウらしさが現れてきたということである。浅漬けミックスの追肥に関しては、前回報告の追記を参照してほしい。

1 朝霧について

 朝霧は、子葉の元気がなくなってしおれ始めたということを以前の記事に書いた気がする。播種から49日目の11月28日には、黄色く変色した葉が土に横たわっている様子が窺える。茎の色は白くなっていて、水分がなさそうである。触感は、霜が降りた後の雑草みたいにしなびた感じと言えばよいだろうか。ともかく、生きのよい植物とはかけ離れた触感であった。その3日後の12月1日には、腐り始めている様子が分かる。上の写真白円内が11月28日の子葉、下が12月1日の子葉の様子である。

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今、たくさんの本葉が育っているのも、彼らが最初に土から出てきて光合成をして生長に必要なエネルギーや養分を作ったからと考えると、寂しいものがある。そして、とがった本葉が続々と出てきている。株の中心に近いところに本葉が出てくるところがあり、そこを中心として本葉が生えているようである。また、この本葉が出てくる所はだんだん上に移動しているように見える。上の写真は、播種から49日目の11月28日の本葉が出てくる所の位置を示している。一方で、下の写真は、それから3日後の12月1日の本葉が出てくる所の位置を示している。

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葉の色は濃い緑色で、市販のホウレンソウと同じように青々としている。しかし、市販のホウレンソウと違い、いまいち背丈が伸びていないように感じる。市販のものは30cmくらいで売られているのに対し、朝霧はまだ20㎝前後と大きく差がある。これから追肥などをしてさらに大きくしていきたい。以下は播種から52日目となる12月1日の朝霧を横と上から写したものである。

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2 浅漬けミックスについて

 浅漬けミックスは、播種から48日目の11月26日に固形肥料と液体肥料による追肥を行った。今後は、液体肥料を定期的にやりどんどん伸ばしていきたい。浅漬けミックスは追肥をしたことで、元気を取り戻したようである。上の写真は11月26日の追肥をする直前の浅漬けミックスの様子、下の写真は追肥から6日が経過した12月1日の浅漬けミックスの様子である。

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追肥の前は葉の緑色が薄くなり生長が止まっていたが、追肥してから5日後の12月1日には、葉に緑色が戻っている。葉が元気になったのはよかったのだが、背丈に関してはまだ効果が表れていないようである。追肥をしてから5日が経過したが、背丈は18㎝くらいにとどまっている。上の写真は11月26日の追肥をする直前の浅漬けミックスの様子、下の写真は追肥から6日が経過した12月1日の浅漬けミックスの様子である。

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前回の収穫の際は21cmほどまで生長したことから、18cmくらいで生長が止まるということは考えにくいが...どうしてだろうか。まだ肥料の効き目が背丈に反映されていないだけかもしれない。もしくは、前回収穫時よりも寒くなっているということが関連しているのかもしれない。湿度が下がると光合成が抑えめになるということが他の受講生に向けたコメントに書いてあったので、それが関係しているのかもしれない。何はともあれ、私の予想ではもっと伸びるはずであるから、辛抱強く待ちたいと思う。

第8回報告は以上である。


コメント

理学部 山本さん

育種の渡辺です。よいペースでの投稿、何よりです。時間の使い方をself-regulationで来ているからだと思います。最初のkeyboardの件。渡辺はほぼ机の前での仕事なので、打ちまくっていますが、文字数は数えたことがないです。ただ、デスクトップパソコンに附属のkeyboardではなく、ノートパソコンと同じように「パンタグラフ方式」というのを使っているので、keyboardを見ないで打つことができれば、さほど、苦痛を感じていません。それよりもマウスを使うので、右手の方が影響を受けているように思います。いかがでしょうか。

The ホウレンソウという感じになってきましたね。子葉がこの時期まであるというのは肥培管理がよくできている証拠です。よくないとすぐに子葉の養分が展開葉に移行してしまいますので。あと、ホウレンソウ、浅漬けミックスの生育が止まっているというのは栽培に使っている植木ばち、つまり、作土、つまり、根が展開できる量が限界に来ていると言うことかと思います。講義を終える頃に収穫をすると思いますが、土の中の根張りを見てみて下さい。驚くかと思います。あと、日長が短くなり、寒さが来たのも影響しているかと。それ以外については、ラボスタッフ・オガタさんが月曜日にコメント予定です。それまでお待ち下さい。


わたなべしるす

PS. とある畑でのハクサイの栽培の様子です。広大な面積に根が展開できることの偉大さが分かるかと。。。もちろん、この講義の栽培は誰でも簡便にできるという強みもあるわけで。。。。

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山本さんこんにちは

 さてさて、子葉が枯れましたか。

 一抹の寂しさもありますが、知っておいてほしいのは「命が尽きて枯れた」のではなく、「転生した」のです。それはどういうことかというと、植物の葉というものは、寿命になると自分自身を分解・消化し、それによって作られたリソースを本体に送り届けて枯れるのです。この季節は枯れ葉が多いですね。それもまた同じことで、葉のリソースを幹に送り届けてから、枯れ葉になります。だから枯れ葉というものは驚くほど軽いものです。ちなみに枯れ葉が落ちるのは、リソースを届け終わると離層を形成し、切り口のダメージが無いようにしてから落ちます。とても合理的にできています。

 そして本葉の出る位置をしっかり見ていますね。

 まあ、ホウレンソウはほとんど茎が無く、地際に近いところに成長点があり、そこから葉を伸ばします。

 ちなみにもっと寒くなれば葉が寝てくるものと思います(既に徴候がありますね。市販のホウレンソウ、この時期はトンネル栽培が主なので、その分温かいですから比較すると背丈が伸びます)。栽培はあともう少し、頑張りましょう。

 浅漬けミックスも追肥のおかげかとても元気です。まあ、この気温では以前ほど早く大きくなりません。それより混みあっていれば順次収穫して下さい。というかそうしないと株が大きくなれません。教授の指摘通り、地下部は地上部以上に押し合いへし合いの混み混みでしょう。

 最後に光合成と温度の関係ですが、普通の植物は5℃を下回ると一気に効率が落ちます。だからこそ気象学では5℃を上回る日の日数を積算し、重要な区分としていますね。

 ちなみに、学年が上がり化学でどこまで習うのか分からないのですが、一次反応二次反応、そして10℃2倍速の法則というのを習うかと思います。むろん酵素反応はもっと温度にセンシティブであり、最適温度でないと効率悪いです。

 もっと言えば、光の強さが変わらないのに光合成反応が落ちればどうなるか。すると、光エネルギーを消化できなくなり、かえって細胞に障害を与えます。植物が冬に葉を落そうとするのはこれを予防するという意味もあります。紅葉でアントシアニンなどを多量に作り出すのはこの余分な光エネルギーから守るためだとも推測されています。

 さあ、栽培も終盤、次記事も期待してお待ちします。

DSC_1374.JPG イモになって休みたいものですね。

ラボスタッフ・オガタ