東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

伝統野菜仙台芭蕉菜とはなんだ(文:岡根史歩)

2022年12月13日 (火)

 マイペースな性格で、ゆっくり生活するのが好きです。そのためにも、やるべきことはとっとこ終わらせなければ。とは思いつつ、時間は過ぎていってしまうものです。いつの間にか冬になっていて、最近ようやくベッドを夏仕様から冬仕様に変えました。あたたかくて気持ち良いです。

 今回は、栽培中の野菜の一種、仙台芭蕉菜について調べたことをまとめました。

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〇仙台芭蕉菜とは

 「芭蕉菜」という名前の由来は、葉が大きく芭蕉の葉と似ていることによります。歴史背景としては、江戸時代に江戸の三河島で栽培されていた三河島菜を、参勤交代で来ていた伊達藩士が仙台に持ち帰ったものが仙台芭蕉菜になったのではないか、と言われています。大正時代頃からは白菜が普及するとともに栽培されなくなっていったものの、近年伝統野菜として注目されています。

 東北から北関東にかけて栽培されている「芭蕉菜」はタカナの一種。辛味があって、主に漬物用として岩手県南部で親しまれています。一方で「仙台芭蕉菜」はナタネの仲間で辛みが少ないです。呼び名は似ているものの、辛みのある芭蕉菜と区別するために「仙台」という地名を付けたという説もあるようです。

〇食べ方

 仙台芭蕉菜は辛みがなく、茎、葉ともやわらかいのが特徴です。

食べ方は

①漬物

②炒め物

③お浸し

④鍋

の大きく4種類ありました。

 独特の風味があって、主には①の漬物として利用されます。熱湯で湯通ししてから漬けるとやわらかく漬かるようです。塩漬け、醤油漬け、味噌漬け、どれにも合います。漬けた葉はごはんを巻いたり、炒め物や鍋などに入れたりなど様々活用できます。古漬けは煮物や味噌樽(仙臺味噌)につけ直す方法もあります。

 ②の炒め物は、油いためにすると、爽やかな香りとアブラナ科特有の辛みが出ておいしいそうです。
 若葉は③のお浸しにするとよさそうです。

 また、これから雪が降る季節になりますが、雪がかぶると柔らかくなってトロみが出て、それがまたおいしいとのことです。

 料理の腕はありませんがせっかくなのでおいしく調理したいですね。1株は漬物、もう1株は炒め物にしてみようかと思います。

〇参考文献

https://yasacolle.jp/dentou/traditional-vegetables-miyagi-sendai-basho-greens

https://www.ehealthyrecipe.com/meal/chisan_chisho/detail.php?szid=2086

 年末年始は長期で家を空ける予定はなく、今と同じように栽培を続けられそうです。

 肥料について前回の記事に丁寧なコメントをくださり、ありがとうございました。次回は芭蕉菜の施肥についての記事を書きます。

コメント

文学部 岡根さん

育種の渡辺です。文章を書くことのペースをつかんだというところでしょうか。前文で、お休みになる場所が夏仕様から冬仕様に。渡辺はずいぶん前に替えていました。というか、かえないと寝ることは不可能なので。。。今回は文学部の学生さんらしい由来について調べてあるのはよいことかと思います。仙台芭蕉菜はBrassica rapaという植物かと。一方、他の芭蕉菜はカラシナなので、Brassica junceaになるのでしょうか。何故、仙台だけ辛味がないものになったのか、調べてみるとよいのでは。もちろん、観察重視はいうまでもありませんが。

年末年始を長期に空けることがないと書いているので、まとめて、全体の記事として書かないといけないと思っているのですが、アブラナの仲間は特に、雪に弱いです。雪がだめなのではなくて、雪がゆっくり解けて、いつまでもぬれていることに起因します。今週、来週と雪も振りそうです。降って積もるようであれば、できるだけ迅速に雪をのぞいて下さい。それが生育によい影響をもたらします。それ以外については、ラボスタッフ・オガタさんが月曜日にコメント予定です。それまでお待ち下さい。


わたなべしるす




岡根さんこんにちは

 冒頭の写真ですが、毎回芸術的ですね! 空が暗めでシュールな感じがします。

 さて、仙台は今日から急激に寒くなり、来週にはなんと最低気温ー2℃という予報が出されています! 数年前の暖冬ならばもう冬の一番寒い頃の気温です。それが12月半ばで到来とは...... かなり異例なことです。

 このままいくと最も寒いだろう2月初旬(県によって最も寒い時期は違うが、宮城仙台ではだいたい2月10日頃が最も寒い)にはどうなるのか...... 少なくとも水道が凍る温度まで下がってほしくないのですが。

 持論なんですが、人間はだいたい一週間に1℃以内の変化なら馴染むと思っています。それを越えると寒い暑いを強く感じます。植物もまた気温の変化に耐えられるよう備えをしていくのですが、やはり急激な変化にはストレスを感じます。室内に飾る鉢花などは、置き場を変えると温度変化のストレスによって障害を受けるものも多く、シャコバサボテンあたりは特に弱いですね。

 展開ゼミで育ててもらっている野菜は温度変化に強いものばかりであり、多少の寒波が来ても、成長は鈍化しますが枯れることはありません。気を付けるべきことは鉢土を過湿にすると凍ってしまい、その膨張によって植物が押し上げられ、根を切ってしまうことです。タプタプに水があるとそうなりやすいですね。かといって仙台の冬は風が強く、また乾燥しているので油断すると乾き切ってしまいます。つまり、冬の間は水管理がちょっとシビアになります。その他、教授が上のコメントで書いている通り、雪に埋もれると葉が過湿の害を受けるという心配もあります。ここまで育ったバショウナ、ぜひゴールまでもっていきましょう。

 今回記事の内容はバショウナについての調査ですね。こういう記事もアリです。

 私も知らなかったことが沢山書かれています。なるほど......仙台バショウナは他と違って辛みが少なく、また用途が本当に多彩ですね。

 こういった葉菜は、デンプンなどの栄養は少ないものですが、ビタミン類は豊富にあります。他に特筆すべきことはグルタミン酸なんかのアミノ酸系うま味成分を含んでいます。そのため、葉っぱなのに「ダシ」のようになります。

 ちなみにですが、グルタミン酸などのうま味成分と、イノシン酸(カツオ節や肉など)やグアニル酸(シイタケなど)といった核酸系のうま味成分は相乗効果があります! それは、最適配分だと何と7倍にまで高まります。それは舌にあるうま味成分受容体の性質なんですね。単一のうま味成分では濃度を上げても頭打ちになってしまうのですが、こういう相乗効果を利用すれば強くうま味を作れます。

 コハク酸(貝類)などの有機酸系うま味成分は相乗しないようですが......

 まあ、要するにうま味というのは、食材を各種取り揃えれば強くできるということです。鍋料理などは肉、魚、野菜、キノコ、併せて入れますのでその意味で素晴らしい料理です。

 余談ですが日本料理はやはりうま味で食べさせる、というか勝負している料理だと思います。これが西洋料理では食感やコクかもしれませんし、インド料理では香味(スパイスにはうま味はない)が主要だと思います。

 さて話は伝統野菜のことに戻ります。

 日本各地に伝統野菜というものがあり、逆に伝統野菜のない県はありません。昔は食用植物の種子は本当に重要なもので、その伝搬には様々なドラマがあったことでしょう(例を挙げればいくらでもあります)。一方、伝搬した種子は、栽培されているうちにその土地の用途や嗜好に合わせ、また土壌や気候といった成育条件にも合わせ、品種が分化していきます。そして固定化して名が付けられます。

 最も有名なのは「加賀野菜」「京野菜」でしょうか。私もあまり見たことがないのですが、その地方では普通に食卓に並んでいるのでしょうね。今、全国に流通している一般品種でなく、そういう伝統野菜を復権し、目玉とする地域振興プロジェクトが多いですね。近場では山形の庄内野菜が有名になってきました。植物学的観点からも、そういう伝統野菜固定種の遺伝子が保存されていくのは喜ばしいことだと思います。岡根さんも「変わった野菜」を見つけたら、好奇心をもって買って頂ければ......

 学生生活でも、栄養的に野菜は重要です。私の本職は歯科医なので言いますが、鉄分やビタミンB2、B12が不足すると舌炎になりやすいですね(まあ、主要な要因は口の中の雑菌類ですが)。例えばしょっちゅう氷を食べたがる人は、舌に慢性的な熱感があり、たいがい鉄分不足から来ています。

 いくらでも余談に飛んでしまいますね。植物伝搬でのエピソードや、うま味を含めた人間の感覚のウェーバーの法則など、またいつかの機会があれば書くことにしましょう......

 では、次記事、施肥などの実施と結果についてでしょうか。お待ちします。

DSC_1258.JPG やるな生協......

ラボスタッフ・オガタ