東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

葉が黄色くなる原因は?(農:高橋悠太)

2022年12月25日 (日)

こんにちは。高橋悠太です。

クリスマスですね。最近何かとクリスマス会のようなものが多くケーキをたくさん食べられて幸せです。家でも家族とクリスマスを楽しむことができました。

さて、最近記事を投稿することができていなかったので、できれば年内に挽回したいと思っています。今回の記事は小松菜の実食とする予定でしたが、すみません、予定を変更させてください。次は実食します。では本題です。

黄色くなる葉について

 今回は黄色くなってしまった葉についてである。道に生えている植物も、全体が枯れていないにしても葉の一部が枯れているという状態が見られることがあるが、この原因は一体何なのだろうか。

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 まず、この現象は葉焼けというようで、緑色色素であるクロロフィルが分解されてしまうことで色素が抜けこのような状態になる。葉焼けの主な原因の1つは光で、光が強すぎる場合に起こることがあるという。高校の生物で習った光呼吸という現象は今回の葉焼けの防衛反応といえるかもしれない。本来の光合成では、通称ルビスコと呼ばれる酵素が中間体とCO2を用いて次の中間体を作っていくのだが、光呼吸では、ルビスコが酸素を触媒する反応に寄与し、わざわざ生命のエネルギー源であるATPを用いて光合成の回路を進めるのだ。つまり、光が当たり過ぎることは植物にとってエネルギーが大きすぎるため、無駄な反応を促進してしまいかねないということだ。

 また、他の原因は温度である。高温はタンパク質の変性に関わる条件であるため、非常に重要である。この場合に考えられる植物へのダメージは、酵素に関係する可能性が高い。先に述べた通り、ルビスコの最適温度を超えてしまった場合、光合成がうまく行われなくなってしまうのではないだろうか。

 葉焼けに似た症状が出る場合として、カリウムの不足も挙げられるようだ。カリウムは浸透圧調節に関わる植物の必須元素である(第5回参照)。そのため、葉緑体の細胞が浸透圧調節できなくなってしまい、破裂、もしくはそれに近いことが起こったと仮定すれば、カリウム不足で葉焼け的な症状が出ることも納得できる。

 ここまで、葉焼けについて記述してきたが、結局今回の原因はどれなのだろうか。この中に原因がなく、単に役目を終えて枯れたという可能性もあるのだが、これは子葉ではなくしっかりとした葉であったことから、自分的には光が原因なのではないかと思う。なぜなら、温度やカリウム量は他の個体と一定なはずだが、この葉には窓で屈折した光が当たっていた可能性があるからだ。

 しかし、つい最近になって「葉焼け」という考察が間違っていた可能性が浮上した。この2日分の比較画像を見ていただきたい。

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 これらは栽培開始から60日目(1枚目)と70日目(2,3枚目)の画像で、先ほどの枯れた葉とは別のものである。この葉もしおれてしまっているのだが、原因は明らかに葉が別固体に当たってしまっていることである。60日目時点でもよく見るとその片鱗はある。また、その下の葉は、植木鉢の側面に当たってしまったことでしおれている。これは間引きの失敗、または植木鉢の狭さによるものだと考えられるので、まず今できる間引きというよりかは収穫を早く行いたいと思う。

コメント

農学部 高橋さん

育種の渡辺です。昨日はクリスマスでしたね。たくさんケーキを食べる機会があるのはよいですね。コロナ禍がなければ、盛り上がってできるイベントができないのは残念ですが、これを乗り越えた先に何かがあると思って頑張ってください。

ラボスタッフ・オガタさんが誰かのコメントに書いていたかと思いますが、植物はたくさんの葉っぱを作ることができます。一方で上位葉である新しい葉っぱを着生させて、代わりに下位葉の「栄養」を上位葉に転流させることをします。リサイクルですね。根が伸びる範囲が広い畑などではN2, PO4, K(窒素、リン酸、カリ)という主要栄養素はたりていると思いますが、小さな植木ばちでたくさんの植物が植えられている場合は、不足することが想定されます。なので、書かれてあったように間引きを行うのがよいかと思います。植物で起きている引き抜いたら根を傷つけると思える場合は、できるだけ地面に近いところからハサミで切断というのがよいかと思います。それ以外については、ラボスタッフ・オガタさんが今日の夕方にコメント予定です。それまでお待ち下さい。


わたなべしるす

髙橋さんこんにちは

 立派なケーキですね! 透けて見える「生協」がファンタジー感を9割減にしている気もしますが......

 ケーキもそうですが、プリンでも肉でも何でもたくさん食べられるうちに食べた方がいいです。年を取るに従い、あまり食べたくもなくなり、また食べた幸せ感が減ってきます。しかも若い時は太ることないのがアドバンテージですね。私もBMI19で、決して太っていないのですが、近年なぜだか食べ物のカロリーを瞬時に計算する癖がついてしまいました。

 さて、髙橋さんの記事は栽培日誌というよりは植物を巡る考察が多いですね。これは歓迎します。やはり栽培している上で感じる疑問をスルーせず、調査し、考えるのが大事です。この展開ゼミのテーマでもあります。

 前回の肥料に引き続き、今回は「葉の枯れ」ですね。

 直接的な原因としては記事に書かれた通り、「光エネルギーによる障害」も候補の一つです。温度が低いと光合成暗反応(CO2の同化)が低下し、光合成明反応(光エネルギーによる励起)が勝ることによる葉緑体障害です。そのため、調べられた通り、植物は光呼吸というショートカット回路を使い、「ガス抜き」にかかります。また、アントシアニンなどの色素を作って酸化障害を防止します。

 植物は直射日光を嫌う種類も多くあり、そういう種類は強すぎる光による「葉焼け」を起こします。ランのカトレアやシンビジュームは5割くらいの遮光を施して栽培するものです。まあ、今回の展開ゼミで育てる植物は直射日光を好むものばかりですが。

 その他、「高温障害」、「カリウム不足」でも葉が枯れますね。というか大抵の栄養元素不足は葉が枯れる原因になります。特に肥料が不足しなくとも根の活性が弱ると(過湿で根が呼吸できずに弱る、特に先端部)そうなります。また、土のpHが適正でない場合もまた栄養元素が土に強く吸着されてしまい、根が吸い上げることができなくなります。

 しかしながら今回見つけた葉枯れは、いずれとも違うものです。

 なぜなら上記の原因はみなパッシブというか、葉が弱って死に向かわされていることです。植物はそういうパッシブだけではありません。逆にアクティブな反応の結果ということがあります。例えば以前書いた通り、落葉樹木の落葉は「アクティブ」であり、積極的に枝から葉が切り離される反応の結果です。

 写真だけでは正確な判断が付かないのですが、株が寒さを検知し、「備え」を始めたタイミングで、この葉があまり光を受けられずにいることで、株が不要と判断したように見えます。そこで葉のリソースを回収し、重要な成長点部分に集中させた結果の「葉枯れ」です。教授が上で書かれた通りです。

 畑で栽培していても冬期間はそこそこ葉枯れが起きます。まして狭い鉢栽培では、これまた教授の書かれた通り植物の防衛反応として葉枯れが起きやすいですね。いずれにせよ「炭疽病」や「軟腐病」といった病気の結果ではなさそうです。

 まあ、このまま枯れ込んだら収穫量が減りますので、できるだけ葉枯れを防ぎたいところです。やはり追肥、そして水管理を怠らないのがいいですね。そろそろ帰省の時期でもあるので、過去記事を参考にして「水切れ」も「過湿」も起こさないようにしましょう。

 そうそう。枯れた葉を取るタイミングですが、これは9割枯れ切ったら除去して下さい。早過ぎるとリソースの移動が終わらず、また傷が大きくなります。遅すぎると腐敗して病気の温床になってしまいます。

 さあここまでが一般的な話です。農学部であるからにはもう一歩先を知っておかねばなりません。先ほどの「リソース」の集中、成長点部分へ向かうのは当たり前です。農学的には「収穫部分」への集中も重要なことです。

 ここで植物の種類によって、リソース移動の強さ弱さが分かれるのがミソです。例えば柿の木、実が貪欲にリソースを要求します。結果、木が疲れてしまい、多くの実を着けた翌年はあまり花を付ける余力がありません。そこで実の数もまた少なくなるので、この年は木の元気が復活します。しかし翌年は花が多い、実が多い、でまた疲れるんですね。このように豊作・不作を年ごとに繰り返すのを「隔年結実」と言います。柿はこの性質の強い代表例です。

 イチゴなんかでも、花・実が多いとリソースを奪われて、すぐ「成り疲れ」を起こします。

 その逆にサツマイモなどはイモ部分がリソースを吸い取る力が強くありません。そのため、ちょっとしたことで地上部の茎・葉ばかり茂り、肝心のイモ部分が成長できなくなります。いわゆる「ツルボケ」です。キュウリなどもこういう性質があります。まあ面白いものですね。

 次記事は収穫と実食でしょうか。またお待ちします。

DSC_1138.JPG 寿司屋のメニューとして微妙......

ラボスタッフ・オガタ