東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

第11回報告 自作温室は効いているのか?(理:山本実永)

2022年12月27日 (火)

第11回 12月23日~12月27日

 皆さんこんにちは。山本である。以前、野菜の防寒として、段ボールとビニールで簡易の温室を作ったということを話したが、今回はそれの効果を調べてみる。製作から時間が経過し、段ボールがふにゃふにゃになりつつある温室。しっかりと保温できているのだろうかという疑問を抱いたため、今回の検証をすることにした。その前に、朝霧と浅漬けミックスの近況について軽く触れておく。今回は以下のような順番で書く。
1 朝霧の近況
2 浅漬けミックスの近況
3 温室内の温度と湿度

1 朝霧の近況

 朝霧は、生長が鈍っており、収穫の目安である20㎝まで到達するか怪しい状況である。そろそろ追肥をした方がよいのかもしれないと思い、ホウレンソウの追肥について検索したところ、収穫の7~10日前に追肥するとよいということであった。しかし、収穫の目安まであと10㎝くらいあるため、収穫のめどが立っておらず、追肥はもう少し先になるかもしれない。そもそも、生長が鈍っている原因が肥料ではないということも考えられる。鉢いっぱいに根が展開し、これ以上生長できなくなっているということも十分に考えられる。また、寒すぎて生長が鈍っているということも考えられる。今のところは、葉の緑色が薄くなるというようなことはないため追肥は行っていないが、これからどのように生長するか注意して見ようと思う。写真は播種から77日目となる12月26日の朝霧を上から見た様子である。

IMG_20221226_085503.jpg2 浅漬けミックスの近況

 浅漬けミックスも同様であり、生長が鈍っている。これを受けて、播種から75日目にあたる12月24日に液体肥料による追肥を行った。葉にえぐみが出るかもしれないため、追肥するべきではなかったかもしれないが...その2日後に観察したところ、一部の葉は緑色が濃くなって元気になっている一方で、緑色が薄いままであまり元気がない葉もあることが分かった。おそらく、植わっている位置によって日光の当たり方が異なることに原因があると考えられる。私は、鉢を常に同じ向きで置くようにしているため、日光に当たる株と日光にあまり当たらない株が生まれてしまい、結果として生育に差が出るのかもしれない。そういうわけで、まんべんなく日光が当たるように、少しずつ鉢をずらしていこうと思う。写真は播種から77日目となる12月26日の浅漬けミックスの様子である。

IMG_20221226_085532.jpg

IMG_20221226_085539.jpg

3 温室内の温度と湿度

 さて、私が製作した温室は雨風と直射日光によりだいぶ弱っている。よく見ると隙間もあり、気密性があるのかどうか心配になる。以下に示す測定結果は、12月25日に測定したものである。天候は1日中晴れていて、直射日光が差し込んでいた。9時半と18時半の測定結果が欠けているのは、他の用事があり記録できなかったためである。日が差し始めたのが8時半であり、日差しがなくなったのが16時半である。

温度表.png

 上に示すのは、温度の測定結果である。測定結果を見ると、日光が出ている時間には温度がかなり上がることが読み取れる。一番暖かい時間は12時半から13時半くらいの間にありそうであることが分かる。また、日光がないときは10℃前後だが、日光が差し込んでいる時間には25℃まで上がっていた。朝霧の生育適温は15~20℃、浅漬けミックスの生育適温は15~25℃であり、日光が差し込んでいる時間にはこの温度に達していることが分かった。

湿度表.png

 湿度は温度と逆の変化をたどっており、温度が10℃前後のときは湿度が70%以上と高いが、最も暖かいお昼ごろの時間帯には40%前後まで低下した。以前、光合成には程よい湿度と温度が必要ということを知ったが、今回の測定から光合成に必要な湿度と温度を作れていることが分かった。段ボールがふにゃふにゃになっていても、温室としての働きは意外としっかりしているということに驚いた。この様子であれば、新たに作り直す必要はなさそうである。

第11回報告は以上である。それではみなさん、よいお年を。

コメント

山本さんこんにちは

 今回の記事は大変興味深いものです!

 温室を作っただけではなく、その効果をしっかり計測したのは素晴らしいことで、来年以降の受講生にとって有用な示唆になります。

 さて最初から見ていきます。

 ホウレンソウは元気そうですね。葉の色もいい感じです。成長が鈍っているのは低温のせいでしょう。なぜなら株が全体的に寝ていますし、葉に縮れが入っていることから低温に備えるモードに突入しているのが見て取れます。

 追肥は日数で自動的に行って下さい。余分な肥料は鉢底から流れ出ると思います。収穫の10日前というのは......単なる誤解です。解釈が逆であり、収穫の直前には肥料を切って、味を改善しましょうということです。もちろん成長を考えたら肥料を継続することが必要です。

 根もまた成長を鈍化させているはずですが、もう鉢土いっぱいには回っているはずです。そこで葉の成長にもリミッターがかかったという考察をされたのですね。そのこと自体は実際起きているのですが、一鉢に一株ということもあり、まだ成長の余地はあるかと思います。

 浅漬けミックスも大変よく成長しています。そして更に観察し、日光の状態に思い至り、鉢の向きを変えてみるという「実験」をしているのも褒められます。

 さあ今回のメインである温室の「性能」、グラフを見る限り上々ではありませんか!

 温度と湿度が相反するのは当たり前で、これは相対湿度ですから。日中乾燥気味ともいえますが、逆に言えばこれよりわずかでも湿度が高まれば、即ビニールの内側に水滴となります。理屈からいって当然ですね。すると日光をわずかでも遮ってしまうという不都合になります。

 そして夜間の湿度が高く、これは鉢からの蒸発のためでしょうか。数字的に過湿になることはなさそうです(過湿だと病害が起きやすいが、その恐れはないということ)。

 肝心の温度、日中はしっかり光合成できる温度になっています! まさに適温です。これより低いと気密性が低いということになり、せっかくの温室が...... そしてこれより高い温度になると、昼と夜の温度差が大きくなり過ぎてしまうでしょうか(実際はこれによる障害はほぼ出ない。過去、あまりにもしっかり温室を作ってしまった受講生に対し、この恐れがあるために、水を入れたペットボトルを温室に入れて温度変化を緩和するように示唆したことがある。これは例外であって普通はそれほど気密性が高くならない。また、二酸化炭素の供給という面からも気密性が高くない方が安全ともいえるが......)。

 いや本当に温室の効果がしっかり出そうです。欲を言えば、温度の計測を何日か行い、「日照と温度の対比」、つまり日照の加温効果を確認できればベターです。科学的な意味では。

 温室の強度について、写真でみると若干ヤワかもしれません。強風による破損にご注意を...... 植物ごと破損しないように。外側から棒を貼り付けるだけでも違うかと思います。

 では、次記事でも元気なホウレンソウを見せて下さい。浅漬けミックスの続けての収穫と実食もまた。

DSC_1147.JPG この味は微妙だろう......(たぶん)

ラボスタッフ・オガタ



理学部 山本さん

育種の渡辺です。昨日の早い時間のうちにコメントする予定だったのですが、昨日の午前中にラボスタッフのオガタさんがコメントを書いてくれたので、こちらはほぼ言うことなしです。同じことを書くことになりますが、お許しください。

何よりも自分で新しいものを作って、その製品の評価を行うということは大事なことです。今は実験をしていても実験器具類はほぼ市販されています。場合によっては実験のdataを取ってくれるところもあります。ところが、渡辺が学生の頃は市販されてなかったので、アクリル板を切り、貼り付けて何かを作ると言うこともありました。思ったものができなかったり、いろいろありました。そういう点で、自作のものがきちんと機能するかを評価することは大事なことですから。今回のことは学部での卒業研究、その先の大学院などでの研究に活かされると思います。年明けの投稿を楽しみにしております。


わたなべしるす