東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

6.中間発表~実際に経験して学ぶ意義~(農:佐々木美園)

2020年11月23日 (月)

こんにちは、農学部の佐々木美園です。冒頭の写真は私が目指している結球した白菜です。先日、所用で帰省したら実家の白菜はここまで育っていて、私が育てているものとのあまりの格の違いに膝をつきかけました。しかしまだ時間はあります。なんとかして結球を目指したいものです。

 

さて本題に入りますが、早いものでいよいよ中間発表がやってきました。現在は栽培開始から約二ヶ月弱くらいでしょうか?振り返ってみるとその間に様々な発見や失敗を経験してきました。なので、今回の中間発表では改めてそれらを確認し、これからの目標を明確化できるようにしっかり報告したいと思います。


~目次~

1.栽培において一番驚いたこと、野菜に対する気持ちの変化

2.参考になった記事

3.コメントから気づいたこと

4.双方向講義の利点

5.今後の展望


1.栽培において一番驚いたこと、野菜に対する気持ちの変化

 根本的なことではありますが、これまでの栽培で最も驚いたことは、植物の生命力の強さです。植物が過酷な環境でも生存できることは、高校までの生物で学んだ分化全能性などで知識としては入っていたはずですが、実際に植物を育ててみるとその生命力の強さには目を見張るものがありました。例えば、前回までに行っていたカイワレ大根の実験では、10日間水を与えずとも、最初に与えた15mLの水だけで10cm近く生長させることが出来ました。もし、人間が10日間、何の補給も無い状態で放置されれば、成長出来ずに衰えていくばかりでしょう。それを考えると、植物の優れた適応能力と生存能力が明確に感じられました。これは、教科書の勉強だけで無く、実際に植物を育てていたからこそ得られた感覚だと思います。

 また、ここまで野菜を栽培してきたことで、そこにかかる苦労の大きさを身をもって痛感しました。私は基本、実家の祖父母が育てた野菜を食べてきたのですが、今までは農業の最終産物しか見ていませんでした。そして今回、右往左往しながら自分の手で初めて野菜を育ててみることで、ようやくそこにかかっている手間暇が見えるようになってきました。この、背後に隠れた情報を推測するようになったことが、ここまでの栽培を通しての大きな変化かも知れません。野菜一つとっても、その裏には多くの時間と、長年かけて培われた知識や技量が隠れていることを忘れずに、これからは食べる野菜に対してもっと心を込めて「いただきます」と言いたいと思います。

2.参考になった記事

 記事を執筆するにおいて、竹本泰さんの記事がとても良い参考になりました。字の色分けや、配置の仕方などのレイアウトを始め、肥料過多との生長の差を比較する実験の考察などは、分かりやすく読みやすい記事を書く際や、カイワレ大根の実験などで実験結果をまとめる際にとても参考になりました。

 また、記事以外では青葉山キャンパスにある図書館から借りてきた、『野菜づくり虎の巻』という本が、実際の栽培において役に立ちました。特にホウレンソウの芽が出ない理由の考察では大活躍してくれました。結局、原因を考察して直してみても芽は出ませんでしたが、原因を考察したことはかなり有意義だったと思っています。

3.コメントから気づいたこと

 今までの記事でオガタさんから様々なコメントをいただきましたが、その中で一番印象的なコメントは2.ぐんぐん成長していますのコメントです。その記事では、揃って発芽したことに対しての農業生産上の意義についてのコメントをいただき、選抜による品種改良は品質向上だけでは無く、栽培を容易にするためにも行われているということをそこで初めて知りました。確かに改めて考えると、種子が散布しないような稲や小麦、ある程度一様に育つ植物など身近にある農作物の生長上の特徴は管理をするには楽な性質ですが、生存や種の繁栄にはかなり不利な能力のオンパレードになっていることが一目瞭然です。農業は自然との関わりがクローズアップされることが多く、「自然的な」営みとして捉えられがちですが、実はその中で育てられている作物は「反自然的な」性質だらけという所に、現在に至るまでの農業、もっと細かく言うと育種の進歩や成果が感じられ、自然を相手取り、それを理解し利用しようとする農学の面白さに気づきました。

4.双方向講義の利点

 双方向の講義で良かったと思ったことは、相手を意識して情報を発信しようと意識するようになった点です。この講義では、自分が育てている作物の情報という自分しか知り得ない情報を分かりやすく相手に伝える必要があるため、必然的に自分の発する情報に不備や不明瞭な点が無いかどうか自己批判する必要が出てきました。一方向のみ、特に聞き手に回りがちな講義だと自分から情報を発することがほとんどないため、このように情報を他者に分かりやすく伝えるための能力はほとんど育たなかったと思います。

 また、一緒に講義を受けている人の視点や着目点を知ることで、新たな刺激を受けることが出来るのもこの講義の利点だと思います。私が流しているような変化でも、他の受講生の方が調べて記事として取り上げていることがあったり、本質的には同じ内容でも話の発展のさせ方が全く異なったりと、様々な人の様々な思考に触れられるのは新たな発見にも繋がりますし、何よりも、とても面白いと思います。これは学部ごちゃ混ぜかつ、全体で情報共有できるこの講義ならではのことなのでは無いでしょうか。

5.今後の展望

 この講義全体の目標としてはやはり、「作物を無事生長させ、収穫まで持って行くこと(白菜に至ってはあわよくば結球させること)」であることは変わりありませんが、後半ではさらに作物の変化をより詳細に、分かりやすく伝えられるように意識して栽培と記事の更新を続けていくことを目標にしていきたいです。そのために、最近乱れがちな更新頻度を整えて、一定のペースを維持するように注意することで変化を追いやすくするように心がけていこうと思います。また、より客観的で学術的な観察記録を提示できるように日々の測定などからデータを集めていこうとも考えています。

 これらを意識して今後の栽培を続けていくことで、より充実した記事を書き、自らのライティング能力を高めていきたいと思います。また、農学部の私にとって、実際に何かを育てることで、簡易的な一次産業を経験することは貴重な経験であり、今後の栽培を通して、自らと農との関わり合いについても深く考えていきたいと思います。(2,629字)

コメント

農学部・佐々木さん

 育種の渡辺です。最初の写真、インパクトがありますね。プロの農家であるおじいさん、おばあさんが作っているハクサイを見て、「格の違い」を自分の目で感動できたのはよいことだと思います。コロナ禍がなければ、その生長過程を見ることができたかも知れないですが、そんな植物の生長を自分で気にかけることができるようになったところが、大きな収穫ですね。教科書では知っているけど、実際はどうなの?? と言うところだと思います。実験でもそうで、花が咲くためにフロリゲンが機能していますが、実験室という室内でのからくりと、屋外で栽培したときに、その機能に違いがあるとか。なので、プロの農家が作ると、ここまでできるんだということを理解して、実験するのと、そうでないのは大きな違いですから。

 また、農家の方々がどれだけ苦労しているか、それを理解できたことも大事なことです。その意味として「いただきます!!」という言葉の重さも。コロナ禍で実家に帰ることが難しいと思いますが、今回学んだことをおじいさん、おばあさんと話をする、その経験と勘について、議論すると、さらにこの学びが深まると思いますので、やってみてはどうでしょうか。ラボスタッフのオガタくんのコメントから、農業という自然に優しいと思われがちなことも、見方を変えると、とても不自然で、人間が管理するから収穫までできるということ。でも、そろいが良いということで、農家の人たちがどれだけ、栽培、収穫までに楽ができるかというところ。この点は農業という産業を考えたとき、とても難しいバランスだと思いますが、その心を大事に、農学の学びに活かして下さい。

 相手を意識して、文章を書くと言うこと。大事なポイントです。専門家が読むのであれば、ある程度難しい言葉を使わないと、薄っぺらい感じになる。でも、分野が違う専門家であれば、あまりに専門性をあげると、理解してもらえない。その意味で、どんなスタンスで文章化するのか、後半戦はそんなことを意識してもよいかと思います。また、今回のこの講義は受講生の農作物に対する理解はほぼ同じ位というスタートで、それを相互に見ることでも、自分に足りないことを周りから学んで吸収することもできるかと思います。他の講義では、一緒に学んでいる受講生が発言をするとか、あとから話をしない限り、分からないのが、このような双方向で少しは透明化されているのではと思いますので。今後の展望の結球すること、是非、トライしてみて下さい。もちろん、プロの農家の方と議論をして、考えるのもありです。自分でチャレンジしてやってみることで、野菜だけでなく、佐々木さんも大きく生長しますので。


 わたなべしるす

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