東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

4.VS 謎(今のところ)の虫(農:菅野 泰樹)

2024年10月30日 (水)

1.はじめに

 最近登山とか始めたいな~と思っています。そんなにがっつり高い山に登るぞという意気込みはないのですが舐めてかかって山の上でピンチになるのも嫌なので山登りに何が必要かを調べていました。仙台駅前に登山用品店があったのでなんとなく入ってみました。手近にあった登山用のウェアを見てみると5万円くらいしました。たまたま高いやつだったのかと思い、他のを見てみたら今度は9万円でした。このままだと登山を始めることなく大学を卒業してしまいそうなのでとりあえずどこか登ってみます。

 

2.ハクサイ、ホウレンソウの現状

 先週はすぐり菜大根に特化したこともあり、2週分の経過報告となります。どちらも徒長気味で不安でしたが、本葉が伸びてきました。また、温度計を導入しましたので観察時の写真に温度の情報を加えたいと思います。

 

ハクサイ

 ざっくりとした状況としましては密集していたところから2本間引きをして、本葉が出てきて今2枚ほどになっています。また、1029日の朝、ハクサイを見てみたところ葉っぱが食べられていました。虫だと思うのですが、鉢の付近、葉っぱ、土を見てみてもそれらしい影はありません。その前日の日中には特に食べられている様子はなかったので、28日の夕方~29日の朝にかけてのどこかで食べられたのだと考えられます。夜行性の虫だったりするのかなと思い、29日の22時頃、鉢を観察しました。よく見てみると2~3 mmほどの何かの幼虫が見つけられました。小さすぎて判別は難しいかと思います。糸のようなものを出していたため蛾の幼虫だと思っています。幼虫が夜行性の蛾がいるみたいなのでそれかもしれません。もしかしたら葉っぱに卵が植え付けられているのかもと思って再度確認しましたが、やはり見当たりませんでした。葉っぱもそれほど大規模に食べられたわけではないため生育には問題ない程度だと思っていましたが、この記事を書きながらハクサイを改めて確認したところ、食べられている範囲が広がっていて、同じ虫が56匹見つかりました。早急に対策しないと葉が全部なくなるため、なんとか対策します。

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対象が分からないため対策も漠然としてしまいますが、コーヒーがさまざまな害虫に忌避効果があるらしいので応急処置としてインスタントのブラックコーヒーをハクサイの鉢のあたりに噴霧してみました。生育には影響しないそうですが不安なのでなるべく直接は吹きかけていません。有効な農薬などが見つかれば試してみたいと思います。下の写真で、つまようじに乗っているのが見つかった虫です。

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 水やりは2~3日に一回くらい行っています。毎日土を確認して、土が乾いていれば水を与え、土が湿っている、または天候が雨や曇りのときは水やりを控えています。

 今後も成長を見つつ、株の密度が大きくなってきたら都度間引きをする予定です。目下の悩みは虫です。とりあえず酢酸のスプレーをネットで買ったのですがこの虫に効き目はあるのか...(この虫は何なのか?)

↓10月29日(播種後22日目) 13度DSC_1014.JPG

ホウレンソウ

 こちらも密になってきたので1030日に2本間引きました。こちらもハクサイと同じ要領で水を与えたり与えなかったりしています。室内、街灯の光がとう立ちの原因となりうるということをいつかの記事で書きましたが、鉢の位置がちょうど室内の光が遮られ、街灯もない場所なのはよかったです。こちらは特に虫は見られません。土寄せを行いましたが、まだひょろひょろの株もあります。

↓10月30日(播種後23日目) 13度DSC_1026.JPG

3.おわりに

 季節的にも栽培の規模的にも虫の被害はないだろうと高を括っていましたが甘かったです。実家が農家なので、祖母が害虫を敵視していたことを思い出しました。すぐり菜大根の反省を踏まえて観察の頻度は増やすようにしましたが、なおのこと注意します。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。次回の記事でハクサイが食べ尽くされたという報告をすることのないよう努めます。

コメント

菅野さんこんにちは

 冒頭の写真は「紫式部」ですね。写真だと実物よりも色彩がはっきりしていてキレイなものです。

 そして登山の話が出ていますが、こちらが面白いと思ったのは、登山そのものではなく「形から入ろう」とするところです。いやこれは性格が出ますね。悪くない、と思います。

 さて、早めに本題に入りますが、今回は重大問題として虫害がありますから。

 温度のこと、間引きのこと、水やりのことなど管理関係はあまり問題がないのでコメントすべきこともありません。写真が時系列に沿って撮られていないため、成長が判然としませんが、他受講生より遅いように思います。おそらく日照が充分でないせいだと想像するのですが......ただその対策は限られてきます(置き場の改善や反射板の設置......)。もちろんいかんともしがたい場合もあることはこちらも重々承知しています。そのため、成長が遅いこと自体は仕方ないこととして、最低限どの程度の日照なのか具体的に示されれば来年度以降の受講生の参考になるでしょう。

 さあ、虫害のこと、始めに「ハクサイは食べられてホウレンソウは食べられていない」ということに注目です。これは虫の「食性」によるものです。一見当たり前のようなことですが、なかなか奥の深い学問です。いや学問的に面白いだけではなく、産業的にも重要です。例えばカイコが桑の葉しか食べない、といったことも含まれます。

 「食性」はもちろん進化の過程で「それが生存に有利」だから選択されてきたのでしょう。何でも食べられた方が有利そうに見えてしまうのですが、実際はそうではないというのが面白い点ですね。まあ逆に言えば雑食性の動物はそれが有利だから雑食になってしまったわけです。

 ちなみに人間ほど雑食な動物はありませんね。例えばネコにとってタマネギなどのユリ科植物は猛毒ですが...... 逆に人間は好んで食べますし。植物が一生懸命に動物対策としてカテキン類を蓄えても、人間はお茶やコーヒーやカカオを喜んで食べてしまいます。

 まあどうでもいい話ですが、「強い」ものの代表格としてゴキブリが挙げられることが多いのですが、実際は40℃を越えると死んでしまいます。人間は熊谷や前橋で40℃以上になっても生きていますのでゴキブリ以上です。

 さて話を戻して、ホウレンソウは比較的虫害を受けていません。もともとホウレンソウの方が虫害に遭いにくいものですが、ハクサイのこともあるので油断できませんね。ホウレンソウもハクサイも食べる「食性の広い」虫も存在しますし。

 ただ、今回のハクサイに付いている虫は指摘の通り蛾の仲間です。蛾の種類まで確実な特定は難しいですが、いずれにせよ性質は同じです。体は小さくとも食欲は旺盛で、ばりばり葉を食べていきます。対策としては捕まえるのが一番早いものです。ただ小さいし数もあるので......農薬も選択肢に入ってきます。もしも当研究室に来て相談頂ければ詳しいことを伝えられます。

 しかしま、自分であれこれ試していますね。正直コーヒーに有効な作用があるのか分かりません。多分カフェインの意味なのでしょうが、殺虫までの効果があるのか......単なる忌避効果なのか...... そして酢酸はどうでしょう。確かに酸性ではありますが、有機酸はそもそも動物が普通に代謝経路に入れるものですし。

 農業や園芸について民間的な言い伝え(牛乳を散布とか、あるいは凝ったものでは竹酢液とか、黒糖発酵液とか)は多くあります。作用機序的に考えられることは考えられるのですが...... あまり学問的な研究例はありませんね。それは産業的な大規模のものでなければ学問的なメインストリームにならない、ということが大きいのでしょう。本気でやれば面白い研究になると思いますが。

 ともあれ今回の虫害はこれを奇貨として、いろいろ考えてやってみるのがいいでしょうね。困ったことではありますが、例年虫害は滅多にないことなので、独自性のある記事投稿になります。

 ではその後の記事お待ちします。

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 ネーミング的にいいけど......若干語呂が悪い気も。

ラボスタッフ・オガタ