東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

その10 発芽から実食まで(すぐり菜大根・ブロッコリースプラウト)(医:金濱 央子)

2024年12月29日 (日)

 こんにちは!写真はクリスマスに友達と作ったケーキです。中には桃とミカンを大量に入れました。スポンジを売ってるスーパーがなかなかなくて数件探し回りました。意外と材料費が高くて買った方が断然安いのですが、自分で飾り付けを考えたり楽しく作れるので来年も手作りしたいです。いつかはスポンジから作ってみたいと思います!

 今回は「すぐり菜大根とブロッコリースプラウトの比較」、「温度と成長速度の相関性」の2つをテーマに栽培しました。

目次

1.成長

2.実食

3.考察

1.成長

 12/5 23:00 種まきを行いました。前回の反省を生かしてキッチンペーパーをプラカップの底の形に合わせて切ってから敷いて凹凸が出来ないようにしました。前回と同じくらいの密度になるように種を置いて、その後水没しない程度に水をあげました。前回は台所のシンク下で栽培しましたが、今回は部屋の直射日光が当たらない場所の段ボールの中で栽培しました。ぱっと見で比較がしやすいように前に比較用に買った市販の2区画あるブロッコリースプラウトの容器を用いて栽培しました。

12/8 8:05
1208はつが.jpg

 どちらも発芽してきました。12/6の時点ですぐり菜大根は発芽してる個体があったので発芽はすぐり菜大根の方が早いことが分かりました。

12/13 8:041213.jpg

 左がすぐり菜大根です。すぐり菜大根は種子が大きいので発芽したものが窮屈になって上に重なるようになりました。そのせいなのかは分かりませんが全てのまだ発芽していない種子もあります。おそらく種子が底についていないものは水を十分に得られなかったために発芽出来なかったのだと思います。根毛がすごくふわふわしていました。ブロッコリースプラウトはほぼ全ての個体が発芽しました。前回の発芽率は7割くらいだったので反省を生かした対策が功を奏したのだと思われます。

12/18 7:481218.jpg

 すぐり菜大根は6.5㎝、ブロッコリースプラウトは4.5㎝まで成長しました。

12/23 9:561223.jpg

 前日に観察したあとに段ボールの蓋を閉め忘れたせいで緑化してしまいました。直射日光は当てていないのに少量の日光でここまで緑化するのかと驚きました。

12/27 8:13 緑化前 21:20 緑化後ryokuka.jpg

 それぞれカップの高さまで成長させるのが目標でしたが、種まきから2週間経過していることや、若干におってきたようにも感じたのでここで緑化させることにしました。ですが23日に緑化されていたので緑化での変化はほとんどないように見えます。

2.実食

チャーハン.jpg まずは生で食べ比べてみました。すぐり菜大根はダイコンのような辛みがありました。ブロッコリースプラウトも辛みがありましたがすぐり菜大根に比べてわずかに感じる程度でした。すぐり菜大根の方が胚軸が少し太かったのでその分食感も楽しめました。私は辛い物が苦手なのでサラダなど生で食べるならブロッコリースプラウトの方が好きだと感じました。残りは全てチャーハンに入れました。が、ほとんど味がわからなかったです。もっと最後に入れるなどあまり火を通さないようにして食感や風味を残すようにすればよかったなと思いました。

3.考察

 ここで「温度と成長速度の相関性」について考えていきます。まず前回、台所のシンク下で栽培したときのグラフが次のようになります。

スクリーンショット 2024-12-02 151607.png

 そして今回、室内で栽培したグラフがこちらです。

スクリーンショット 2024-12-27 202937.png 前回の傾きが0.83、今回が0.41という結果になりました。

 室内の方が暖かいはずなので今回の栽培の方が傾きの値が大きくなるだろうと予想していましたが真逆の結果となりました。温度は計測していなかったのですが室温は外気温の推移に近似するだろうと考え仙台市の気温の変化を調べてみました。こちらのサイトから平均気温を計算すると、前回の栽培期間である11/11~12/1の平均気温は最高気温が14.78℃、最低気温は6.48℃、今回の栽培期間である12/5~12/27の平均気温は最高気温が7.90℃、最低気温は0.64℃となります。最高気温は1/2程度、最低気温に関しては極端に下がっています。ここから考えられるのは今回の栽培を室内で行ったとはいえ、気温が相当低いので11月のシンク下より寒かったのではないかということです。日中に家にいることはもちろんないのですが夜も帰ってきて寝るだけ、またはこたつだけしか暖房をつけないという生活でエアコンで部屋全体を暖めることが少ないのであり得る話です。他にも与える水の量だったり光量の違いだったり色々な条件がそろっていなかったと思います。なので今回の栽培では対照実験になっていなかったというかデータ不足で検証不能という結論になりました。次回行うときは同時に別な場所で育てて温度以外の条件を同じにして完全な対照実験を行ってみたいと思います。

 次に「すぐり菜大根とブロッコリースプラウトの比較」ですが、グラフから分かるようにすぐり菜大根の方が成長速度が速いことが分かりました。この結果からは種子の大きさによって蓄えているエネルギーが異なるので、種子の大きさと成長速度に相関があるのではないかという仮説が得られます。似たような植物として豆苗やカイワレ大根などもあるのでそれらも含めて種子の大きさと成長速度を調べてみたら面白そうだなと思いました。まだ種子は残っているので、もう少し暖かくなってから挑戦してみたいです。

 今回の栽培は爪が甘かったなというのが正直な感想です。ですが前回の反省を生かして成功した面もありよかったです。さて、最終報告のお知らせが出て焦ってきました。中間発表は早めに投稿出来たのですが今回はそうもいかない予感がします...。とりあえず通常投稿を少しペースをあげて頑張りたいと思います...!最後まで読んでくださりありがとうございます。よいお年をお過ごしください!

(2279字)

コメント

金濱さんこんにちは

 これは見事なケーキですね!

 完成度がかなり高い! 何よりもイチゴサンタが独創的で、斜め上の発想に驚きました。スポンジは市販品とのことですが、今どきの市販品は昔のようなパサパサ感が薄らいでいるので食べやすいものです。本当なら作って一日置けばクリームの油分か水分を吸っていっそう食べやすくなります。

 もちろんスポンジから作れば手作り感は増しますが......確かに面倒ですね。ただし、失敗はほとんどありません。「全卵を使う」ジェノワースは味わい深いですがなかなか膨らまず重くなりがちです。しかし、「卵白を別に泡立てる」ビスキュイならば簡単に必要充分の膨らみになります。その他、焼き加減や甘さなんかは割といい加減でもそれなりの味になるものです。

 どうでもいい余談ですが、私が考える「この世で最も簡単なケーキ」、それは...... 先ず大きめのプリンを買ってきます。そして半分だけ食べます。次にそのカップへホットケーキの粉を適当に投入! よく混ぜ混ぜしてから電子レンジ! これだけで妙に奥深い味のカップケーキができます!

 さて本題の植物ですが、「スプラウト栽培スキルを手に入れた!」となるでしょうか。

 ツボを押さえた栽培で、とてもきれいなものです。遮光は確かに途中でうまくいきませんでしたが、まずは充分ではないでしょうか。この成功の要因は、前回栽培の教訓を生かし、「下敷きを適切に」したことが第一でしょう。結果的に播種密度や水分供給もいい感じになりましたね。

 市販品に比べて若干短いのはご愛敬、それよりも収穫のタイミングをしっかり見計らったのはいいことです。低温では栽培期間が長くなりがちなので匂い等で見極めないといけませんから。

 実食のものも美味しそうですね。個人的に、チャーハンをよく作れるなあ、と思いました。チャーハン作りはケーキ作りより難しいというか、油でベタベタしがちになるので難しい......

 さてさて、最後はきちんとした科学的考察になっています。データを取り、グラフ化して、何かを読み取る、基本がしっかりしています。

 成長速度はグラフの傾きからよく分かります。今回の場合、前回より約半分の速度になりました。要因は、おっしゃる通り温度の違いで、冬期間は室温も低いものです。人間は徐々に寒さに慣れていくので、実際の気温を感じ取りにくいですね(個人的に一週間で一℃程度の変化なら人間は簡単に慣れて、感じ取れない。もちろん一定のスピードであれば)。

 対照実験でないのはこの場合仕方ないですね。いろいろと条件が変わる、というかあれこれ考えないと進歩しませんので。そして「種子の大きさに応じて成長が変わる」、これまた面白い発想です。確かに世の中には大きい種子(ココヤシとか)もあれば小さい種子(ケシ粒、あるいはラン科植物などの極度に小さいもの)もあります。植物の専門家は「種の違い」に捉われますが、たしかに純粋な貯蔵エネルギーの差で見ることはあんまりありませんね。

 余談ですが、イネ栽培において江戸時代に画期的な方法が登場しました。それは「塩水選」というものです。イネの種子(というか籾)を一定濃度の塩水に浸し、そこに沈んだ種子だけを使うことです。つまり塩水の比重よりも重いものを選び取るんですね。言い換えると栄養分豊富でずっしりと詰まった種子を使う、それにより播いたあとの成長スピードが速く、なによりバラツキが少なくできるというわけです。この塩水選、よくラノベの異世界転生なんかのネタにされます。

 さあ最終発表の要項も出されたことですし、最後までこの講義を頑張りましょう!

DSC_0052.JPG ............微妙にチグハグ感が、いいというか......

ラボスタッフ・オガタ