東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

本葉の相違点と共通点(理:伊東功平)

2025年11月 8日 (土)

CONTENTS

1.近況報告
2.今回の記事について
3.本葉の共通点
4.本用の相違点
5.終わりに


1.近況報告

 こんにちは。気温も一桁になる日が増えてきてあっという間に冬が近づいてきた気がします。それに加えて大学では風邪が流行しているようで、マスクをする人が増えました。私も風邪真っ只中です(泣)。上の写真は新大久保のコリアンタウンの韓国料理店の出口に立っていた看板です。私は韓国料理を食べただけですが、「お疲れさまです」と謎の労いの言葉をかけられました。突然の「お疲れさまです」に二度見してしまいました。しまいには写真まで取ってしまいました。

2.今回の記事について 

 これまでは植物ごとに観察したことをまとめて記事にしていましたが、今回は「本葉」という植物の器官について比較しまとめることにしました。そのため以前よりもすっきりとした記事を書くことができると思います。たまにはこのような記事もありかなと思い投稿してみました。以下にダイコンとキャベツとホウレンソウの3つの写真を載せておきます。一応、野菜の成長報告も兼ねて最新の写真を用いているのでキャベツだけ成長の進んだ写真となっています。

Day33(11/8,14:45) 気温11度 湿度55%Day33 ダイコンB.jpgDay33 キャベツ.jpgDay33 ホウレンソウ.jpg

                                     3.本葉の共通点

 まずは共通点から。ダイコンの本用はまだ小さく観察しづらいものの、子葉とは直角の向きになるように本葉が開いていることがうかがえます。子葉とは異なり、本葉それ自体には栄養が含まれていないため、光合成を効率的に行うための重要な形質であることが予測されます。これから本用の第二葉がどの向きで開くのか注目してみたいと思います。

 次に葉脈に関する共通点について。ダイコン、キャベツ、ホウレンソウはどれも子葉よりも本葉のほうがはっきりとした葉脈が現れています。その様子は、本葉は葉脈による溝の影響で子葉よりも起伏のある葉であることからもうかがえました。光合成に必要な物質や光合成産物などを運搬する役割である導管や師管が発達しているために葉脈が大きくなっているなら、子葉よりも光合成に特化した葉であることが推測されます。ありきたりな共通点かもしれませんが、自分で観察して気づくと少しうれしく感じます。

4.本葉の相違点

 3種類の野菜の相違点を見るため書き出したらきりがないのですが、2つに絞って書きたいと思います。

 まず、本葉の開き方です。どの個体も2枚で1セットの本葉ですが、その開き方はダイコンとキャベツで同じでホウレンソウは異なる開き方をしていました。ダイコンとキャベツはまず一枚の本葉が先に出てきてその次に2枚目の本葉が出てくるという開き方でした。一方ホウレンソウは手を合わせたような形で二枚のほぼ大きさの等しい本葉が現れ同時に開き始める様子が見られました。写真ではこんな感じです

それぞれの本葉の様子ダイコン本葉.jpg

ホウレンソウ本葉.jpg 次は本葉の質感についての違いについて。キャベツとホウレンソウはつるつるした感触でしたがダイコンはいわゆるトライコームというものが発達していました。少し気になったのでトライコームについて調べてみました。そもそもトライコームについてよくわからなかったので調べてみました。[1]

トライコームについて

・ギリシャ語でgrowth of hairという意味がある
・植物の表皮細胞が伸びたもの
・強い光に対する防御
・強風時に気孔からの過度な水分喪失を防ぐ
・物理的、化学的に小さな害虫が近づくことを防ぐ

 調べてみると主に自分の身を守るために発達させてきたようです。そこでダイコン、キャベツ、ホウレンソウの原産地の環境の違いがトライコームの有無を生んだのではないかと思い調べてみました。調べてみるとキャベツは地中海沿岸、ホウレンソウは中央アジア、ダイコンは地中海から中央アジアが原産地で、ホウレンソウとキャベツは比較的冷涼環境であったがダイコンは温暖な環境であったということがわかりました。このことから簡単な考察ですが、ダイコンはより温暖で害虫にさらされやすい環境であったためにトライコームが発達したのだろうと考えました。この仮説がどれだけ正しいのかは置いといて、自分なりに考えて植物を観察することにおもしろく感じました。

5.終わりに

 このような記事のほうがThe観察のようで楽しいです。でも成長報告をメインにしたいのでこの形式はたまに行うことにします。過去のブログを参考にすると明らかに野菜の成長速度が遅く茎も細く、心配ですが今回のような観察も成長が遅いからこそできたことのような気がします。(特に本葉の開き方とか)本葉の観察をしていて、これから野菜たちは本葉を増やして光合成をしてたくさん成長する時期に入ると思ったので、ここで光環境を改善する対策をもう一手講じたいと思います。それは次のブログで報告できたらなと思います。(忘れてるかも)

参考文献

[1]草本植物の産毛? の役割 | みんなのひろば | 日本植物生理学会      URL:https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2383

コメント

伊東さんこんにちは

 冒頭の写真は良い感じです。何気なしに暮らしているだけで何かの発見があるものです。楽しいものですね。写真に撮っておくかどうかは、趣味によりますが......

 はてさて、今回の投稿はきちんとテーマを絞っています。文中にあるように、成長報告と平行して時折加えるとのことですが、その塩梅はお任せします。読者側としてはテーマがあった方が興味を惹かれますね。成長は栽培しているのだからいわば当たり前のことであり、例えで言うとピアノを叩けば音が出るというのと同じです。特に複数の植物を日数で併記するとほぼ定点観測になってしまいますから。

 今回のテーマは本葉観察なのですが、結果的に「本葉は子葉と直角に出る」、「ダイコンとキャベツの本葉は一枚一枚、対してホウレンソウの本葉は二枚同時に出る」、「本葉は葉脈や凹凸がはっきりしている」、といった事項を見て取ることができました。

 このダイコン・キャベツ・ホウレンソウの三種類を栽培しただけでは、「植物に普遍的な戦略上の形態」なのか、「植物種ごとの固有の形態」なのか、判別は不可能です。まああまり考えすぎてもいけないのですが「その形態を取る理由」まで思いを馳せるのは悪いことではありません。

 もう一つ、トライコームについて調べたのもいいですね。植物分布に関連付けたのも面白いことです。まあ正直言えばその意義について、それほど確定したものではなく、ほとんど不明です。トライコームのある植物種と、その近縁かつトライコームのない植物種とで比較しても明確な優劣は出ないものと思います。植物学の奥深いところというか、植物の多様性というか、面白いものですね。

 最後に光環境改善の計画? どんなものか楽しみにお待ちします。この場合やはり光環境が悪いせいで成長が遅延しているようですから(特にホウレンソウ)。

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 最初から木綿ではいけないのか......

ラボスタッフ・オガタ