平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

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植物新種誕生原理植物新種誕生原理

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研究経過

シロイヌナズナ属多数種のゲノム情報解析から非分岐型の種分化を明らかにした論文がNature Genetics誌に掲載されました(清水グループ・瀬々グループ・土松グループ)

October 28, 2016 7:41 PM

Category:研究成果

main:瀬々班

sub:高山班

モデル生物シロイヌナズナのゲノム情報を活かし、ハクサンハタザオ、異質倍数体ミヤマハタザオなどを含むシロイヌナズナ属は種分化研究のモデル系となってきています。今回、シロイヌナズナ属の進化に興味を持つ様々なグループのコンソーシャムが、全シロイヌナズナ属を代表する27分類群の94個体のゲノム情報を用いて解析を行ったところ、種分化過程が単純な分岐過程ではなく、多くの多型が自然選択などによって種間で共有されていることが明らかになりました。このように、多数種のゲノム全体をみることで、少数の遺伝子の解析では見落とされていた種分化の実態が明らかになってきました。今後はモデル生物以外でもこのように全ゲノムを活用した種分化研究が広がっていくことが期待されます。また、このような解析にはこれまで異質倍数体を含めることが困難でしたが、我々が開発したソフトウェアHomeoRoq (Akama, Shimizu-Inatsugi, Shimizu, Sese, Nucl Acid Res 2014)を用いることで、異質倍数体ミヤマハタザオ(Arabidopsis kamchatica)も含んだ網羅的な解析になりました。その結果、我々が様々な解析で既に示してきたように、日本を中心に分布する異質倍数体ミヤマハタザオが、二倍体種であるハクサンハタザオとセイヨウミヤマハタザオの交配で生まれたことが改めて支持されました。Nature Genetics誌に要約の日本語訳があります。

Sequencing of the genus Arabidopsis identifies a complex history of nonbifurcating speciation and abundant trans-specific polymorphism.

Polina Yu Novikova, Nora Hohmann, Viktoria Nizhynska, Takashi Tsuchimatsu, Jamshaid Ali, Graham Muir, Alessia Guggisberg, Tim Paape, Karl Schmid, Olga M Fedorenko, Svante Holm, Torbjörn Säll, Christian Schlötterer, Karol Marhold, Alex Widmer, Jun Sese, Kentaro K Shimizu, Detlef Weigel, Ute Krämer, Marcus A Koch & Magnus Nordborg

Nature Genetics 48, 1077-1082 (2016)