平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

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研究経過

性の成立進化には、性決定遺伝子の多面的機能が重要な役割を果たすことを解明(赤木班)

November 12, 2019 5:01 PM

Category:研究成果

main:赤木班

赤木班は、植物の性の成立進化には性決定遺伝子の多面的機能が重要な役割を果たすことを明らかにし、Proceedings of the Royal Society B誌にその成果を発表しました。

 

起源が両全性である植物にとって、性の成立、特に「オスの成立」は、本来、進化的なメリットが無く大きなリスクを伴うものであると考えられています。

その成立や固定には、雄性にとって優位に機能する性的二型性(sexual dimorphism)の獲得が必須であり、その積極的獲得において、性染色体の構築や異形化が促進されると考えられていました。

 
本研究では、性染色体の由来が非常に古いにもかかわらず、全く異形化を生じていないカキ属とマタタビ属に着目し、オス化に寄与するY染色体上の性決定遺伝子が本来持っている多面的効果について性的二型性との関連性を調査しました。
その結果、性決定はいずれも系統特異的に付与された「新機能」であり、それらの遺伝子が本来持っていたであろう多面的機能が性的二型に直接的に寄与していることが明らかになりました。
つまり、これらの二属では「オスになったから性的二型を手に入れた」わけではなく「オスに優位に働く環境を作る遺伝子が性決定をも担うようになった」可能性が示唆されました。
同時に、これらの種では、性決定遺伝子付近に性的二型を促進する因子の蓄積が必要では無いため、性染色体の異形化が起こっていない可能性が示唆されました。

 

<発表論文>

Akagi T and Charlesworth D.

Pleiotropic effects of sex-determining genes in the evolution of dioecy in two plant species.

Proc Biol Sci. 2019 Oct23;286(1913):20191805.

doi: 10.1098/rspb.2019.1805