研究経過
マカロニコムギとAegilops umbellulataの合成6倍体コムギの穀粒硬度(宅見班)
September 3, 2018 4:03 PM
Category:研究成果
main:宅見班
宅見班では、マカロニコムギ(AABB genome)と近縁2倍体Aegilops umbellulata (UU genome)の雑種から得た異質合成6倍体の穀粒形質についての研究成果をJournal of Cereal Scienceの9月号に報告しました。
ほとんどの2倍体コムギの種子は軟質で、胚乳のマトリックスタンパク質からデンプン粒がポロポロとこぼれます。これは機能的な2種類のpuroindolineタンパク質を胚乳で発現していることによります。一方、マカロニコムギではA, B両ゲノム上のpuroindolineが機能しておらず、そのために胚乳のマトリックスにデンプン粒がしっかりと抱え込まれた硬質の種子をつけます。一般に薄力粉用のパンコムギ品種は軟質コムギで、強力粉用のパンコムギ品種は硬質コムギになっていますが、パンコムギ(AABBDD genome)成立後にタルホコムギに由来するDゲノム上のpuroindoline遺伝子のいずれかに変異が生じて硬質コムギ品種ができたと考えられています。Aegilops umbellulataは、コムギ野生種の中では珍しく、調べたどの系統でもpuroindoline遺伝子の少なくともどちらか一方が発現しておらず、配列にも非同義置換が蓄積していました。そのため硬質の種子をつけており、この性質は新規に作出したマカロニコムギとの異質合成6倍体へと伝達しました。タルホコムギが軟質コムギの穀粒硬度に変異をもたらす遺伝資源とされているのに対し、Aegilops umbellulataは硬質コムギの穀粒硬度に多様性を与えてくれるのではないかと期待されます。
発表論文:M. Okada, T.M. Ikeda, K. Yoshida and S. Takumi (2018) Effect of the U genome on grain hardness in nascent synthetic hexaploids derived from interspecific hybrids between durum wheat andAegilops umbellulata. Journal of Cereal Science 83: 153-161.
(リンク先:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0733521018302303)