平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

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研究経過

【プレスリリース】繰り返す猛暑に植物が適応する仕組みを発見(伊藤班)

June 11, 2021 3:24 PM

Category:研究成果

main:伊藤班

 奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域の山口暢俊助教・伊藤寿朗教授(公募研究)の研究グループは、東京大学、龍谷大学、九州大学との共同研究により、DNAを巻き取っているヒストンというタンパク質にメチル基が結合(メチル化)することで、熱ショックタンパク質の遺伝子の発現を抑制しており、高温になるとメチル化が除去されて、その遺伝子が活性化されるという生体防御の機構が働きはじめ、さらに気温が下がった後もその状態がしばらくの間、維持されることを突き止めました(図)。熱ショックタンパク質の遺伝子の発現が抑制されないままなので、連日のように訪れる高温の刺激に速やかに応答できることも明らかにし、植物が繰り返しやってくる高温の刺激に適応した上で、あらかじめ次の高温刺激に備えておくという巧妙な生体防御の仕組みを世界に先駆けて明らかにしました。 

 

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 繰り返される高温に応答したヒストン修飾の変化
(a)高温の刺激がない場合、H3K27me3がついている
(b)高温の刺激がある場合、JMJがH3K27me3を除去した状態を維持する

 

さらに日本各地の温度条件に応答した遺伝子の発現の状態を数理的なシミュレーション(模擬実験)で予測し、人工的に操作して高温耐性を付与することにも成功しました。

 

植物の生き残り戦略を知るとともに、植物に対する気候変動の影響を軽減するための対策を講じていくうえでも非常に重要な成果で、2021年6月9日付け「Nature Communications(ネイチャーコミュニケーションズ)」(オンラインジャーナル)に掲載されました。

  

◆プレスリリース詳細はこちら→奈良先端科学技術大学院大学のHPへ

 

<発表論文>

H3K27me3 demethylases alter HSP22 and HSP17.6C expression in response to recurring heat in Arabidopsis

Nobutoshi Yamaguchi, Satoshi Matsubara, Kaori Yoshimizu, Motohide Seki, Kouta Hamada, Mari Kamitani, Yuko Kurita, Yasuyuki Nomura, Kota Nagashima, Soichi Inagaki, Takamasa Suzuki, Eng-SengGan, Taiko To, Tetsuji Kakutani, Atsushi J. Nagano, Akiko Satake, Toshiro Ito

Nature Communications DOI:10.1038/s41467-021-23766-w