東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

161011 豆苗の成長、いとすさまじ(文:村上敦哉)

2016年11月24日 (木)

(前回のブログ(10/10観察分))

中間発表での皆さんの声を拝見していると、
豆苗栽培に期待してくださる方がいらっしゃるようですね。
記事数が少ないながらも、このように評価いただいたことは大変嬉しく思います!
皆さんの期待に副えるように、豆苗栽培の部分はかなりじっくりと紹介していくことにしました。
「まだここかよ!!」とか思われるかもしれませんが、
ぜひ楽しんでみていってくださればと思います。


では、さっそく紹介する――

その前に。

前回のブログ(リンクは前述)のように、愛読書から豆苗の基礎情報について書いておきたいと思います。

"エンドウの若芽。食用。中国料理に使われる。"(デジタル大辞泉(小学館)より)

とあるので、サヤエンドウのページを見てみます。以下一部抜粋。


【サヤエンドウ】
和名・語源など:豌豆(エンドウ)の「豌」には蔓が曲がりくねって伸びる豆の意など、いくつかの説がある。(中略)青実エンドウは、青豌豆(あおえんどう)や実豌豆(みえんどう)とも称する。古くは胡豆(こず)とも言った。
学名など:Pisum sativum L. マメ科エンドウ属の蔓性一年または二年草。硬莢種と軟莢種があり、野菜用には後者を用いる。
原産地:諸説がある。中央アジアから中東にかけての地帯が有力。原生種は、今も近東に存在する自生種(P. humile Boiss. et Noe. もともとは麦類の雑草)とされる。
栽培適性―気象:発芽は5℃辺りから始まるが、発芽と生育の適温は15~20℃ほど、開花結実以降は最低温度8℃以上が必要である。25℃を超えると生育と開花結実は遅れる冷涼で乾燥した多日照を好むが、日陰にもやや耐える
栽培適性―土壌:pHは6.5~7.0の範囲が良く、酸性に敏感にする。排水の十分な土壌を好むが、乾燥と停滞水を嫌う多湿では根腐れを起こしやすい
栽培適性―生育の特徴:移植適性は中位。発芽は、種子を地中に残して本葉を抽出する。幼名時には氷点下でも生存するほど耐寒性は強いが、成長ととも徐々に弱くなる。葉身は複葉で、葉腋からは花房や分枝を出す。草丈10㎝余り(本葉4~5枚)ほどから巻きひげを出し、支柱などに絡みつく。主枝からは分枝を出す。(中略)根には根粒菌を着生するが、チッソ固定量は少ない。茎は中空で、草姿全体は他のマメ類に比べ軟弱である。
栽培・管理の要点:タネの準備は本編の「2.エダマメ」に準じる。元肥は前面全層施肥とし、排水の不良や滞水地では高畦にする。
育苗中の間引きは抜き取りでなく地際部を刃物で切る。
収穫:開花後10~15日ほどで鮮やかな緑色となり、適期になる。
栄養特性:莢と青実のいずれもタンパク質が多く、ビタミンA、B1、B2、Cに富む。無機質もまんべんなく含み、食物繊維も多い。(中略)豆苗はビタミンA、B、EやKにごく富む。


ここで"本編の「2.エダマメ」に準じる"部分を見てみます。


【エダマメ】
栽培・管理の要点:排水不良や滞水常習地では高畦にする。通常、元肥は前面全層施肥とする。無病種子を選ぶ

一部抜粋以上


とのことでした。
この情報も参考にしつつ、栽培をしていきます。

まずは初回記事のリンクにも貼ったように、過去のブログを参考に、冷暗所で育てていきます。
いちばん最初にあげた写真がその様子です。
自室のクローゼットを利用しました。

すると、この10月11日の時点ですでに根を張り始めていました
早いですね。驚きました。

それぞれのパターンごとに見ていきましょう。
パターン分けについてはこちらをご覧ください。
なお、それぞれ紹介順は写真左のものからです。


A)スポンジの硬い面
B)スポンジブロック
C)スポンジカット

Murakami-1011-01.JPGMurakami-1011-02.JPG全ておおむね根が出ていますが、
特にC)スポンジカットについては豆のポジションが変わってしまうほどで、
それだけ根を強く張ろうとしていることがうかがえます。

Murakami-1011-03.JPGこの写真を見ればわかりますが、すでに2㎝強ほど根が伸びており、
まもなくカップの底に達しようかという勢いです。
カットしたもののほうがやはり根を張りやすいのでしょうか。


D)シート状のキッチンペーパー
E)カットキッチンペーパー

Murakami-1011-04.JPGこちらも、若干カットしたもののほうが根が伸びているような気がします。
でもこのぐらいであれば誤差の範疇でしょうか。


F)シート状のタオル
G)カットタオル

Murakami-1011-05.JPGタオルのほうも根はしっかり出ています。
G)カットタオルのほうは根が切ったタオルの間に根が入り込みそうな雰囲気もあります。


H)塊状の綿
I)ちぎり綿

Murakami-1011-06.JPG問題はこちら。他の部類と比べると全体的に伸びていないようにも見えます。
実際、大体の豆がさほど根を伸ばせていません。

Murakami-1011-07.JPGそれでも、一部はこうしてカップの底まで既についているものもあります。
この豆自体がカップの底まで沈み込みかかっていますし、
根も全長が2㎝ちょっとであるので、取り立てて発育が進んでいるわけでもありませんが...。

この綿のジャンルですが、水やりの段階で気になることが。
それは、

Murakami-1011-08.JPG他のジャンルと比べると水を吸わないこと。
他の素材なら水がすうっと染み込んでいくのですが、綿だけは容器を傾けると水が流れ出てきます。。
吸水性はいいはずなので、徐々に順応していくのでしょうか。

さて、全体的には、わずかにカットしたものの方が根が伸びている印象があります
ここからどうなるのでしょうか。
双葉が出るあたりまではしばらく様子を見ていくことにしました。
どうなっていったかは、今回がここまで長くなったので次回報告します。
豆苗のみならず、小松菜、カリフラワーについてもどうぞお楽しみに!

[追伸]
室温と湿度のデータをなくしたか欠測したので今回は期日できませんでした。
申し訳ありません。


【参考文献】
戸澤英男著(2014)『栽培技術・利用方法がわかる 野菜・山菜ハンドブック』誠文堂新光社

コメント

村上さんこんにちは。

 エンドウマメについての資料をありがとうございます。発芽生育適温は割と低めですね。今の部屋温度と同じくらいでしょうか。

 さて、素材の違いで出る様子を記載してくれてますね。根の様子の写真、ちょっと分かりにくいのですが、各素材に根が入り込んでますか?見た目には各素材とも根が入り込んでいないように見えます。とすると、種子と根に水分が触れるかどうかの話になりますね。水分保持能力と種子との接触面積の話になるような。

 もし根が入り込む素材がありましたら、それを是非観察して載せて下さい。

 それと、綿素材では傾けると水が出てくる話ですが、それは綿に含まれた水でしょうか。それとも弾いている水でしょうか。市販の綿は脱脂綿ですので、水を弾くことはなく、含むとは思うのですが。

 とすると、水が出てくる、というより、元から綿はスポンジよりも体積当たり水を多く含むので最初に水を多く与えたということでしょうか。それとも他の素材は毛細管的に水分保持が強いのですかね。せっかく実験を行ったので、考察もよろしくお願いします。

それでは、豆苗と他の鉢の植物も、報告お待ちします。ラボスタッフ・オガタ