東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

161010 小松菜とカリフラワーも播種(文:村上敦哉)

2016年11月17日 (木)

前回の記事

記事を書く時間の確保がなかなか難しいですね。。
他の方と比べれば報告がかなり遅れていますが、めげずにやっていきたいと思います。


1か月以上も前の話になってしまいましたが、小松菜とカリフラワーの播種の話です。
播種といっても、初回の講義で話にあったように、シャーレに種をまいたということなのですが。
種についての観察は初回の記事をご覧ください。
中間報告の前にこちらについて書いてしまって、すべての野菜についてスタートした時の様子をお伝えすることにしますね。


さて、もちろんのことですが、ただ種を濡れたろ紙の上に置いていくだけで発芽してくれるわけではないと思います。
それなりに発芽に必要な環境ってあるはずなのです。
そこで、小松菜とカリフラワーについて調査をしてみました。
以下、文献より一部抜粋。参考文献は頁末をご覧ください。



【小松菜】
和名・語源など:小松菜(コマツナ)は江戸時代の下総国葛飾郡小松川村(現東京都江戸川区)に因む。
学名など:Brassica rapa L. Peruviridis Group. アブラナ科の越年草。
原産地:始原種は古く地中海沿岸に自生し、それが文化・伝播・渡来した。
栽培適性―気象:発芽温度は5~35℃と幅が広く、適温は15~25℃生育適温は20~25℃ほどで、冷涼を好む。耐寒性が強く、積雪下でも生気を失わぬことが多い。また葉は凍結しても枯れることなく回復することが多い。暑さに耐え光を好むが、半日陰でも良く育つ。
栽培適性―土壌:pHは5.5~6.5辺りが良い。土壌をあまり選ばないが、排水・保水が十分で有機質の多い肥沃な状態を好む。
栽培適性―生育の特徴:移植適性は中位。葉は欠刻のない葉身が葉柄を囲むヘラ型の根出葉で、緑色で柔らかい。根は浅いが、根張り良く主根は少し肥大する。
栽培・管理の要点:間引きは、葉が触れ合わないように適宜行う
盛夏の高温や冬季の厳寒に対しては、遮光や防寒覆いなどの対策を取る。
収穫:食味を重視した適期は本葉が4~8枚、丈が15~25cmほどの時である。間引き株も利用できる。秋から冬が旬である。
栄養特性:全体的に栄養価の高い部類に入る。特にカルシウムが多く、現物200gには1日の必要量が含まれる。ビタミンA(カロテン)、C、K、カリウム、鉄分なども多く、ホウレンソウ並みに栄養バランスが良い。

【カリフラワー】
和名・語源など:花椰菜(ハナヤサイ)は食用部が花のように多くつく野菜の意。また、椰菜は野菜とくにブロッコリーの意。多く用いられるカリフラワーは英語の日本語読みで、キャベツ類の花を意味するcale(またはkale) flowerに由来する。
学名など:Brassica oleracea L. Botrytis Group. アブラナ科の一~二年草。
原産地:西ヨーロッパ。栽培化された非結球性キャベツから分化したブロッコリーの変種である。
栽培適性―気象:発芽適温はは15~20℃生育適温は日中が25℃、夜間が10~20℃ほど花蕾成長の適温は10~20℃
栽培適性―土壌:pHは5.5~6.5辺りが適しており、排水・保水が良く、有機質に富む肥沃な土壌を好む。
栽培適性―生育の特徴:種子は光好性発芽。移植適性は高い。食用部は、茎の頂部に未発達の花蕾の花柄がまとまって肥大したもの。色は白、黄、紫系などで単色野菜に属する。
花蕾は花芽分化後の初期生育が停止した多数の花芽原基の集合部である。花芽分化は緑色植物の低温感応型である。花蕾形成条件は品種で異なり、極早生では本葉5枚以上・21~23℃、早生では本葉5~7枚以上・17~20℃である。日長はほぼ関与しない。(筆者注:今回栽培するスノードレスは中生である)
栽培・管理の要点:定植は、本葉4~6枚までに終える
花蕾管理のポイント:花蕾の大きさは主茎の太さに左右されるので、茎の太い丈夫な苗を育てる異常花蕾は、生育適温10~20℃から外れると発生する。高温では花蕾にさし葉(小葉)が混ざったり、花蕾表面がざらつき変色したりする。低温では、花蕾表面が粒々状や変色することがある。
花蕾の仕上げ法:花蕾をそのままにすると、害虫の侵入、日射による花蕾の変色、ゴミ汚染などの発生が多くなるので、仕上げ作業が必要である。作業は花蕾の直径が3~5㎝時に外葉を覆って軽く縛るか、外葉2~3枚を掻き取って花蕾の上にのせる。通常、この作業から3~4週間が収穫適期になる。
収穫:花蕾の直径12~15cmほどが適期である。収穫は数枚の外葉をつけて切り取る。収穫が遅れると花蕾がゆるんで表面がでこぼこし、さらに花器の形成されることがある。
栄養特性:栄養成分は高く、ビタミンA(カロテン)、B2、C(加熱でも壊れづらい、茎部分にはつぼみの数倍を含む)やカルシウム、カリウム含量が多い。食物繊維も多い。
わずかながらも辛味成分シニグリン、メチルメサネサイオスルホネート、アスコルビン酸を含む。ともに抗酸化・抗がん性があるとされる。

以上一部抜粋終わり



とりわけ今回重要なのは発芽の条件について書かれている部分。
小松菜はあまり発芽環境を考慮に入れなくてもよさそうですが、
カリフラワーは小松菜ほど気温に対する適応能力がないということに加え、
光好性発芽、すなわち光を当てておかねばならないことが分かったのです。

「これは知らなかった。調べておいてよかった――」

この事実に初めて触れたときにはこのように感じました。
調べ学習って本当に大事にしなければなりませんね。


というわけで、この下調べをもとに、さっそくシャーレ上の濡らしたろ紙の上に種子を並べていきました。

Murakami-1010-04.JPG

後は光の当たるところに置いておくことになりますが、
ここで問題なのは、いかにして発芽に適した温度を保てるかということです。

講義の空きコマに種の様子を見に行けるほど大学と家の距離が近いわけではなく、
通学にも40~50分は要します。
そのためただ窓辺に置くだけでは、朝晩の冷え込みで発芽適温より低温の状態にしてしまう可能性がありました。

そこで、シャーレの下にはたたんだ手ぬぐいを敷き、下から冷たさが伝わることを防ぐようにしました。
地面に触れる部分に対策を施せば、10月の気温なら大丈夫でしょう。
寒さ対策には万全を期して、夜間は窓際ではなく屋内の白熱蛍光灯の近くに移動させることにしました。

Murakami-1010-05.JPG

この状態でシャーレを窓際に配置。
10月10日15:30、小松菜とカリフラワーも栽培開始です!

これだけ小さな種子から、食卓に並ぶ野菜になるとはにわかに信じがたいですね...!
これからの成長を楽しみに見守っていきたいと思います。

【データ】
10月10日15時半
室温21.5℃、室内湿度62%

【参考文献】
戸澤英男著(2014)『栽培技術・利用方法がわかる 野菜・山菜ハンドブック』誠文堂新光社



[閑話]
一番最初の写真に写っているのは、今回の参考文献と、スイスチャードというお野菜です。
スイスチャードは別名不断草とも呼ばれ、ホウレンソウの代用品として使える野菜だそうです。
彩りもよくてとてもきれいな野菜ですよね。
こんな感じに野菜を作れたらいいなと思います。
今回用いた参考文献を愛読書にして生育を頑張ってまいります!
今日この後中間報告も別にあげておきたいと思いますのでしばしお待ちを。。

コメント

村上さんこんにちは。

 よく調べましたね。そうです。しっかりと調べ、それを基に考えて、自分の場合に応用して下さい。コマツナとカリフラワーについて発芽のことのみならずこれだけ知ってると、一生有用な知識になりますよ。いつ使える知識なのかは別にして。

 コマツナの方が発芽・生育温度が幅広いですね。それで、コマツナは冬でも採れる野菜です。それでもきちんと対策してあるところがいいですね。てぬぐいのところもいい感じです。好光性種子のことも理解してますね。

 今の状態も併せて、すぐに中間報告出して下さい。お願いします。

 スイスチャード、今風の言い方ですね。フダンソウは昔からある野菜で、今ほど冬季の保温栽培技術が発達してない時代には重宝されました。ベビーリーフとして使われるようになって再び注目されてるんですね。ホウレンソウほどの食感はないですが、逆にシュウ酸が少なければ生食に向いているかもしれませんね。

それでは、続きを早くアップして下さい。ラボスタッフ・オガタ