東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

[12] ロマネスコ生長のグラフ(農:菅原のの)

2018年1月 7日 (日)

目次

1.使用したデータについて

2.それぞれの葉の生長のグラフ

3.栽培環境との関係

こんにちは。2018年になってから、もう一週間が経とうとしています。冬は何気なくイベントが多いですから時の流れが速いように感じます。小さい子供の頃はもっと1年、1日、1時間が長かったように思うのですが、最近は本当にあっという間に過ぎて行ってしまうので驚きです。心が時間についていけなくなるようになってしまったように思います、直したい部分です。さて前置きが長くなってしまいましたが、今回はロマネスコの生長のグラフについて記事にしようと思います。グラフ化する際にエクセルを使用したのですが、慣れないからかとても時間がかかってしまいました。見づらいものがあるかもしれないです。申し訳ないです。


1.使用したデータについて

現在のロマネスコの株全体の写真です。葉が出てきた順番を確認し直して、番号をつけました。以下のグラフについてもこの番号を使っているので参考にしていただければと思います。

20180107160410-893117d28f3bc0587d86fa8aa3075ef141d1dd98.jpg次に今回のグラフで使用したデータについてです。気温や、日照時間のデータは気象庁の過去のデータから参照して利用させていただきました。計測したのは葉の全長です。真ん中に走っている葉脈の長さを測りました。葉の横の長さを計測してこなかったので、面積換算するのは難しいと判断しました。横の長さも初めのうちから測っておけば良かったです。以下の表が計測してきたデータです。すべて単位は(cm)です。計測日の間隔がまばらなところがあります。データの量が多いにもかかわらず、字が小さく見づらいですがご容赦ください...

20180107160823-cd699e3647f145919f317980c7567d719081ba56.jpg


2.それぞれの葉の生長のグラフ

まずはじめにそれぞれの葉についてです。データ点がついている折れ線が葉の全長の計測データのグラフ、直線はそのグラフの直線近似です。折れ線グラフはどれくらい生長したかがわかるように差をとったものを表しています。

20180107161546-5ba42f8f55bccff6c461ed5a759d7af02c108ad8.JPG20180107161559-48e18070b86e4ad6720387fd5fc484cf2cdbde54.JPG20180107161610-2b6928d37f58c52907bd0d8700ee3479cd2a2c56.JPG20180107161621-94efbc0be113135457c454f3a3bf11815005eebc.JPG20180107161636-d14237538b50f70bc44d0861ca1e4944f6166cc3.JPG後から生えてきた葉の方が直線の傾きが大きいことが読み取れます。つまり、後から生える葉の方が生長が速いということがグラフからもわかりました。初めに出てきた葉は出てきた最初の時期が一番速く一気に生長し、その後の生長のスピードは遅く、大きさを保っています。はじめの方の葉の方が、生長のスピードの低下が顕著に表れました。①の葉の大きさは変化しなくなってしまいましたが、②の葉はまだ少しずつ生長しています。一番大きかった②の葉と同じくらいの大きさまで後から生えてきた葉の生長しています。


3.栽培環境との関係

次にどのような要因から生長が促されうるのか、また、阻害されうるのか考えてみました。要素としては、気温、日照時間、肥料のタイミングです。

(1) 気温

緑の面グラフが平均気温の推移、棒グラフで最高気温、最低気温を表しています。気温は、11月中旬から下がり始め、11月終盤から12月初旬にかけて気温が高くなることもありましたが、12月中盤には最低気温が0度を下回るなど寒さは増しています。11月19日周辺など、気温が下がっても葉の生長がある程度起こっています。12月中旬の成長速度はどの葉も小さくなっていましたが、12月後半に気温がある程度上がると葉がより生長しているように思われます。

20180107164619-8b8e6709f1a6060c924ffe75c2d79259785e0b09.jpg

(2) 日照時間

気温よりも1日ごとの変化が大きい指標となりました。11月中旬は日照時間が少なくなっていますが、新しい葉は生長しています。一方で、はじめの方に出た葉の成長は小さくなっているように思われます。ですが、12月初めの日照時間が比較的少なくなっているときでは②、③、④の葉が生長しています。さらに、11月終盤に日照時間が多くなった時がありますが、葉の生長はあまり変化していません。

20180107164646-d02f6ef319d3a9a0635827bfe978cada93271a7b.jpg

(3) 追肥のタイミング

肥料のタイミングに悩んでいたこともあり、それほどの回数は与えていませんでした。11/19、12/4、12/26については肥料を上げたタイミングの直後、大きく生長した葉がありました。12/19については、肥料をあげた直後ではないですが、葉の大きさは大きくなりました。12/4以降、肥料をあげていなかったのですが、葉の生長のスピードが小さくなっているように思われます。肥料はすぐに効くものだとは思ってはいなかったので、これは驚きでした。追肥をすることによって葉の生長に良い影響を与えられているということを確認できました。

20180107171922-fc810627d66df8e645fbed7064b496c90e131f66.jpgはじめの方の時期のグラフから、どの葉においても、速いスピードを維持して生長していることが分かります。(1)、(2)のグラフから、生えてきたはじめは環境にあまり関係なく速いスピードで生長するのだと考えました。他から優先的に栄養を与えられるためではないかと思いました。(2)の日照時間との関係だけのグラフを見るとあまり生長に関係しているようには見えませんでしたが、日照は生長に必要不可欠であることから、得られたエネルギーを効率的に使うことができる可能性もあるように思いました。ある程度日照が少なくても、成長するエネルギーを得られているというように思います。今回育てているのは秋冬野菜ですから、ある程度の低温や少ない日照に強く生長できるように進化しているのではないかと改めて思いました。


この記事を書く際に昨年の武田萌さんの記事榊原里奈さんの記事を参考にしました。他にもデータをとってうまく表現している方がいました。どのようなグラフにするか、考えて作成するということがすでに難しかったです。今回は、気になっていた環境との関係を調べられたので少し心が満たされました。一株でしか計測できていなかったので、株分けをした他の株でも計測すれば良かったとも思います。また、葉の横の長さから面積の計算など、もっとできることがあったようにも思います。これらのことから、まだこの葉の生長のデータや考察に信憑性は少ない様に感じます。また、環境、植物の生長は様々な膨大な要素からなっているので、何かの要因を断言しようとするのは、データを集める面でも、関係性を考える上でも、非常に大きい労力が必要になるように感じました。授業の自然科学総合実験よりも自由に自分なりの課題設定で考察するのは楽しくもあり、難しくもありました。

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コメント

農学部・菅原さん

 あけましておめでとうございます。遺伝の渡辺でございます。残り少ない展開ゼミですが、がんばって下さい。時間の流れ、不思議ですね。渡辺も小学校の頃は、6年間、長かったですが、高校の頃には短くなり、今では、あっという間です。なにか、理屈があったと思います。調べてみるとよいです。なので、直すこともないというか、そんなものだと。さて、前置きが長くなりましたが、これまでの計測結果をきれいなグラフにしてみましたね。気象dataを組み合わせての解析も興味深いですね。まず、葉っぱの生長曲線。一般的かも知れないですが、生き物が増殖したり、生長するとき、いわゆる、シグモイド曲線で近似できるといわれています。分かりやすいのは、大腸菌などの成長曲線です。最初は遅いですが、一定量になるとほぼ直線的に増えて、一定の数で飽和します。飽和がsaturationなので、「さちる」という様ないい方ををします。生き物を扱っている業界で。①が一定の大きさで飽和しているのが分かりやすいです。②も近いですね。それ以外は、生長途中というところでしょうか。

 温度、日照、施肥との関係をよく考察できています。生物の成長は温度に依存するといわれています。その点をよく見いだしています。また、受講生の方に渡した肥料は速効性ですが、それでも施肥をして翌日から、急に大きくなるというわけではないと言うことです。それでも速効性ですね。緩効性というのがあります。それは、一度、施肥をすると、60-100日くらい、ゆっくりと肥料成分が出ていくものです。農学部で、植物の専門の講義を取ると、これらのことの背景をしっかりと学ぶと思います。興味があれば、是非、調べてみて下さい。あと、最後に書いてあった、自分で問題点というか、やることを決めて、考えて見ることは、難しいですが、楽しいことです。これが、卒論、修論などの研究につながりますので。そのスタート地点に立って、始めたということです。これからの他の講義でも活かして下さい。そうそう、linkの武田さん、榊原さんのURLが違っていたようなので、修正しておきました。確認して下さい。

 このあと、ラボスタッフのオガタくんがコメントを書いてくれると思いますので、参考にして下さい。では、今年もがんばって下さい。投稿も楽しみにしております。


 わたなべしるす





ー 追記 ー

 さてさて、今回の報告は細かくて凄い出来ですね!

 教授が言うように、年取ると時間は早く感じるのですが、この理由は判然としていません。一つ言えるのは、特別大変な何かが無く過ごしたということで、悪いことではありません。時間が経つのが遅く感じるほど大変では困りますでしょう。

 エクセルの取り扱い、今のうちに習熟すれば、大変結構なことです。誰でもできるようになるということはなくて、研究者でも差がつく部分です。将来のアドバンテージになることはどんどんやっておくべきです。

 このデータのいいところは、教授も言うように、気象とリンクさせたり、施肥と比較できたりするところです。データを取るだけでは意味合いが半分です。そこから何を読み取るか、おそらくまだ分散分析などは習っていないのでしょうが、読み取らなければなりません。

 そしてより重要なことは一体何を自分が言いたいのか、実験結果から何を想像し何の仮説を立てるのか、です。ついでに言えば作り上げた仮説をしっかり証明するために次の実験系を純化して組み立てるのが基本です。データを蓄えるだけの研究者ではなく、必要にして充分なデータ取得をはかる研究者になって頂きたいのです。

 データそのものは、私には時刻表のように見えました。老眼で・・

 データからの読み取りはまさにその通りですね。葉の順番と初期拡大、そして上限のこと、ですね。他の条件とのリンクも見事です。ただ一つ、指摘しておきたいことがあります。

「統計の罠」というのをご存じでしょうか。何かというと、二つのデータを突き合わせて、因果関係が無いのにあたかも影響しているかのように見てしまうことです。更にいえば因果関係があるように見えるデータを持ってきてしまう、ということも世の中にはありえるのです。それを防ぐために各種統計手法があるのですが、完全には防げません。もちろん今回の報告では因果関係が充分ありえるのでそこまで考えなくて良いのですが、頭に留めておいて下さい。

 結論として、施肥は思いのほか効果が素早く出ること、そして成長を律速しているのはこの場合で言えば日照ではない、ということでしょうか。ともあれ見事に解析されたこと、大いに褒めてあげたいですね。

 ではまた、続きもお待ちしております。

 ラボスタッフ・オガタ