東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

[05]危機一髪(理:植木優)

2018年10月 8日 (月)

こんにちは。台風一過を記念してコロッケを10個食べて食欲が満たされましたが、休みが少ないので睡眠欲が満たされません。理学部3年の植木です。


※この記事における「気温」とは、屋外において鉢のそばにおいた植物環境に近い場所における温度計の指示値のことを示し、気象学的な定義「地上より1.5mの場所における、外気(直射日光や照り返し)に直接触れない状態で測定した温度」とは異なります。

       

【日数=5】10月8日(月) 晴れ

最高気温 41.5度 最低気温 16.6度 (0:00~10:45)

最高室温 29.7度 最低室温 23.8度 (10:45~23:00)

   

       

10:29 気温 34.6度 相対湿度 30%

      


朝、強い日差しが差し込み目が覚めました。明らかに暑い...ハッ!これは植物がピンチ!

慌てて外へ飛び出すと、からからに乾いた土の表面と、目を疑うような温度計の表示...。

       

05a.jpg

◎温度計は「34.6」を指していた。

       

          

今が本当に10月なのかと疑うより先に、乾いた土に早急に水をやり、観察に移りました。

      

05b.jpg◎サラダ菜の4号鉢

          

             

すでに4本の子葉がまさに開こうとしていました!やはり日光の力は偉大です。なお、鉢の上で計測した照度センサの指示値は9486luxになっていました。

          

        

05c.jpg◎ブロッコリーの5号鉢

          

            

確認しづらいのですが、赤丸の部分に開きかけの子葉があります。どちらの鉢も移植から一晩で子葉の確認まで至りました。

            

一方のスプラウトは再び大きく成長しました。

     

05d.jpg◎ルッコラスプラウトは、最大28.8mmに達する個体があった。

       

            

あまりに植物がかわいそうだったので、10時45分、やむなくなるべく窓際の室内に避難させました。気温も29度台に落ち着いたものの、安心はしきれません。また日光が当たりにくいので、ここは高温によるデメリットと天秤にかけてどのように工夫するかを検討していく必要がありそうです。

          

05g.jpg◎危険な暑さのため、やむなく屋内に避難させることにしました。照度センサの値はわずか143lux。

       

          

ちなみに避難後もしばらく外に温度計を放置していたのですが、みるみるうちに温度が上がり、恐怖を感じました。

         

05e.jpg◎温度計と、私の体温を表示した体温計。なお、この後体温計はこの猛暑の中、体温をまだ測定しているものとみなして反応し、結局測定限界の42.0度を指して止まった。

        

             

我々動物の体温は自律神経系によるホメオスタシス(恒常性)によって保たれているものの、はたして植物にこのような機構が存在しうるのかどうか、ましてや発芽したばかりの植物であるため、かなりデリケートであることには間違いないですし、前にも述べたようにこの手の秋冬野菜は暑さにあまり強くないのはおろか、タンパク質の変性温度にも肉薄する温度条件下はかなり危険かと。

「寒冷環境下で育てる秋冬野菜」という名目で育ててはや5日目。まさか暑さ対策に本腰を入れて取り組まねばならぬことになるとは1ミリも思っておらず、当惑しております。

去年の記事を見ても、気温は20数度。40度近いものなど当然のことながら存在せず。果たしてどのように対策すべきか、考えを張り巡らせているところであります。

      

           


        

本日はここまで。ごきげんよう。

コメント

植木さんこんにちは

 台風でコロッケというのも、なんともいえない風習ですね。誰の得にもならないような......

 温度について、34.6℃、38.1℃で慌てる必要は全くありません。外の環境で局所的にはよくあることです。ベランダのコンクリートの上なので上がりやすいのかもしれませんね。気になるようでしたら、鉢がコンクリートに接さないよう、一段何かで上げてやる(カゴでも箱でも)のがいいかもしれません。

 まあ、乾燥に対しては対処して下さい。発芽初めで乾燥には弱いですから。しかし、一度大量に水をやっておけば普通には数日は大丈夫なはずです。まだ植物が水を吸っていないので。

 画像で見ますと日当たりはいいようですね(意外にセンサの数字は低いのですが)。それで結論としては外のその場所に置きっぱなしでいいと思います。今のうちは多少温度高め、明るめでスパートをかけましょう。

 繰り返しですが成長初期に光不足で徒長させるとリカバリーが大変です。今は明るくしましょう。それ以前に植物は場所の移動を嫌うものです。鉢花などを栽培する時には移動させないのがコツになります。

 さて、この先にも関わることなので言い添えます。人間のような恒温動物は体温の数度の差が致命的になります。酵素などは厳密にその温度で働きます。ところが変温動物では温度が変わるのが前提ですから温度によってそんなに酵素作用は比較的変化しにくいものです。まして植物は移動できず、環境温度の変化をダイレクトに受けます。だから少しくらいの変化は大丈夫です。当研究室の温室も日中40℃程度まで上がり、夜間は10℃くらいになったりします。

 なぜそう言うかというとこの先冬になり、ゼミ受講生の多くが夜間の寒さを気にします。そして夜間部屋にいれたりするのですが、植物にとって光のある日中に温度が高いことが重要であり夜間に温度が高いと逆に消耗します。逆効果なんですね。熱帯植物の場合は絶対的に低温に弱い面があるので夜間の加温が必要(例えば胡蝶蘭は20℃以上)なのですが、それはまた別の話です。

ではまた

ラボスタッフ オガタ