東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

3.成長とこれから(農:鹿股とほこ)

2022年11月 5日 (土)

オガタさんのコメントありがとうございます。発芽に1年もかかる植物がいるとは驚きでした。種子が土と出会ってから、発芽しようと思う1年後まで、自分が生きていくために十分な環境であるかを見極める能力はすごいですね。

私が種子だったらいち早く芽を出したくなってしまいそうです。

目次

1.キャベツさんの成長

2.キャベツさんのこれから

3.ミックスさんの成長

4.ミックスさんのこれから

5.編集後記

1.キャベツさんの成長

 11月3日(22日目)

 毎日少しずつ成長していく様子を見る楽しさを、うふふふと思いながら独り占めしていました。3日現在このように育っています。

IMG-6793.jpg

 場所による違いはあまり見られないようです。日光はしっかり当たる南側に置いていたので、徒長している植物体はないように見えます。どの葉も子葉が2枚に本葉が1から2枚付いているようです。植物体によって成長の違いはありますが、枚数に大きな違いはなさそうです。
IMG-6794.jpg

 斜め上から見てみるとこのような感じです。ちょうど子葉が茎のおなし高さから生えているのがわかります。本葉に伸びる茎を無視すると綺麗に「Y」の字になっているように見えます。写真の左手前に見えている植物体を見ると、一番土に近い部分からの茎と本葉との角度は約145度でした(写真をアップロードすると角度を計算してくれるサイトがあり、そちらを使わせていただきました)。ということは、子葉同士の角度は360-145×2で70度くらいでしょうか。角度は光を多くの葉に届けるために重要であると聞いたことがあります。これからはが増えてくるにしたがってだんだん子葉同士の角度も大きくなってくるのでしょうか。
IMG-6795.jpg

 次に横から見た写真です。葉の裏側の様子が観察できます。葉の表側に比べると少し色が薄い印象です。茎が特に薄いのでわかりやすいですね。IMG-6796.jpg

 上の写真はキャベツさんの中で最も高い背丈の植物体です。もしかしたら最後の一つとして選抜される可能性が一番高いかもしれません。この植物体は最も背丈が高いということで、最も成長が進んでいるだろうと思い、観察してみました。子葉は形が緩やかにカーブしているのに、本葉はギザギザしています。これは何の役に立つのでしょうか。次回までに調べてみたいと思います。IMG-6797.jpg

 次にキャベツさんの中で最も背丈の低い植物体です。まだ本葉の高さが使用の高さに追い付いていません。今のところ最も成長が遅いと考えられますが、これからどうなっていくのか楽しみです。こちらも子葉は緩やかな形で、本葉はギザギザしていますね。

2.キャベツさんのこれから

 キャベツさんについて、これからどのようなことに注目して観察していきたいかをまとめます。

 まず、キャベツの葉の角度が成長とともにどのようになっていくのかについて興味があるので、曜日を決めて角度を記録し、グラフ見まとめてみたいです。

 次に、オガタさんの話にもあったように、植物体の背丈についても同じように記録していきたいと考えています。

 今のところ火曜日と金曜日ですと時間が取れそうなので、その曜日に記録したいと思います。

3.ミックスさんの成長

 11月3日(17日目)

 続いてミックスさんです。4つのグループ分けは果たしてどのようになっているのでしょうか。

IMG-6786.jpg

こちらが上から見た写真です。なんとなく左上の灰大さんゾーンが植物体の成長が早いように見えますね。この写真からはそれ以外の違いが分かりにくいので、斜め上から見てみましょう。IMG-6791.jpg

 左上の灰大さんが何とも言えないくらい荒れています。窮屈なのでしょうか。かなり感覚を空けたつもりだったのですが、少し無理があったようです。続いて横から見てみましょう。IMG-6789.jpg

 かなり徒長しているのがバレバレです。渡辺先生のコメントで「弱光で温度が高い室内での栽培にすると、徒長します。」とありましたが、ちょうどその状況を作っていました。キャベツさんは暖かい光が当たり、かつ寒くないように窓の内側に置いておいたのですが、そこだと私の生活環境から少し遠いため、手元に置いておきたいとミックスさんは場所を変えていました。まずは自分の都合を優先しないで、キャベツさんと同様に場所に置いてみたいと思います。

4.ミックスさんのこれから

 このミックスさんの特徴はグループ分けをしたことだと考えているので、そのグループごとに観察をしてみたいと思います。今回はうまく写真が取れずアップできなかったのですが、それぞれ少しずつ葉や茎の形態が違うので、その特徴についても観察できればと思います。

5.編集後記

 いよいよ寒くなってきました。植物体にとっても勝負の季節となるのでしょうか。実はまだご紹介していないスプラウトさんを次回登場させたいと思います。

 今回はリンクの挿入方法を学びました。そちらはうまくできたようなのですが、前回も課題だった、写真が横長にしか投稿できないにもかかわらず写真を縦に撮ってしまい編集に時間がかかってしまったので、次回は忘れずに横向きで撮りたいと思います。

コメント

農学部・鹿股さん

育種の渡辺です。キャベツはこのペースで寒い中でも栽培して、日当たりがよいところにおいて、今の水管理を守るとよいかと思います。いろいろ調べたいことがあるのはよいですね。手書きで図示したり、グラフ化することにトライしてみてください。先達も同じようなことをやっていますので。文章化するよりも意外と難しい側面がありますので。その図版を説明することも忘れずに。

ミックスは言われるとおり、猛烈な「徒長」ですね。菜類なので、Brassica rapaという植物種ですが、これでここまで徒長はすごいです。ダイコンはカイワレダイコンというのがあるようにかなり徒長しますが、菜類では感動ものです。本葉を数枚で収穫できるので、まずはこれで栽培しつつ、新しい植木ばちを提供しますので、再チャレンジもありかもしれないですね。こうしたことについての詳細なコメントは、ラボスタッフのオガタさんからのコメントをお待ちください。


わたなべしるす





鹿股さんこんにちは

 キャベツがキレイに育っていますね! 若干華奢な感じもしますが、これは光量が少ないからかもしれません。室内では人の目には明るく見えても屋外に比べれば光は弱いものです。これは照度を測ると一目瞭然です。そのため屋外栽培が基本となります。ただし、今年は寒くなるのが早いですので、初期生育の間だけは室内でもいいかと思ったのですが......どこで屋外に切り換えるかが難しいですね。観察していて、徒長の兆しがあれば屋外に移しましょう。

 葉の角度についてよく気が付きました。そしてその意義についてもよく知っていました。加えて言うと、葉の角度は植物の光確保戦略にとって極めて重要です。ただ単に光を多く集めるなら、葉を薄く真横に伸ばす方がいいに決まっています。しかし、群落としての効率を求めるなら、それではダメです。ご存じだと思うのですが、光を強く受けても光合成には飽和点があります。光合成明反応(光エネルギーを集めて励起させる)の段階でも、光合成暗反応(二酸化炭素を使って有機物合成する)の段階でもそれがあります。

 そのため、「弱い光では、わずかでも光合成をして」、「強い光では大量に光合成をする」、そういう機構があれば最大効率になります。むろん植物は化学的レベル、組織的レベルでなるべくそれに沿うようにしています。更には形態レベルで対応しているのです! それが「葉を立てること」です。こうすると、強い光でも葉に斜めに当たることになるので、飽和することなく光合成に利用できます。ちなみにこういった形態的戦略が最も上手な植物はイネ科植物(イネ、ムギ、ヒエ、キビ、トウモロコシ、サトウキビ......)です。結果的にイネ科植物は他のものより豊富な光合成産物を得るので、収量が高くなります。日本のイネは収量がだいたい10アール当たり600kgほどなのですが、マメ科やタデ科、シソ科の作物ではそれの半分以下になります。ついでに言えば、イネ科植物でも更に収量を上げることを目指して、葉をもっと立てる方向に品種改良されてきました。

 こういったことは学年が上がれば、光呼吸、二酸化炭素補償点などの生理学レベル、作物生産の農学レベル、バイオマスや環境保全の環境学レベル、いずれでも習うと思います。しかしながら、根底には「植物の生存戦略」というものが存在することを頭に入れておいてほしいものです。

 個体ごとのバラツキ、本葉のギザなどもよく見ています。今後も観察していきましょう。

 さて、次はベビーリーフミックスの話ですね。これは......猛烈な徒長というか、記録的な徒長です。単に暗所に置くよりも絶妙な光加減だったのでしょうが、凄いです。

 正直、ここからリカバーするのはかなり困難です。土寄せなどで固定するのも限界があります。まあ、通常のベビーリーフよりも小さ目で収穫すると思って下さい。そして、余裕があるなら研究室からもう一鉢持っていって、またベビーリーフを播いてみてもいいですね。今度はなるべく明るいところに置いて......

 さて、次記事はスプラウトのことでしょうか。また期待してお待ちします!

DSC_1135.JPG 写真はざるそばを食うネコです。ツユは必要ないそうです。

ラボスタッフ・オガタ