東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

追肥の影響はいかに‥(農:柚原結女)

2024年1月 7日 (日)

こんにちは、柚原結女です。
1月に入りましたが、暖かい日が続いています‥
今日の朝は馬場の地面が凍っていましたが、年末から凍らない日がまちまちです‥
暖かいのは、寒さ嫌いの私にとっては過ごしやすいですが、少し変な感じで、不安のあるような暖かさです‥

それでは本題に入る前に‥
写真は、祖父母の住む香川県三豊市の家付近の風景です。
先日、1年ぶりに会った祖父と散歩をしました。祖父は歩きながら、休みながら、昔話や教訓などを色々と話してくれました。
まず、祖父は毎日2500歩程度の道のりをウォーキングをしています。
その道のりはいつも一緒で、毎日欠かさないといいます。ウォーキング仲間に会うから、健康のため‥などと言ってサボりは全く無いのです。
そんな祖父は、継続の大切さを話していました。
この講義をしっかりと進められないように、計画と継続が苦手な私には、かなり刺さりました‥

目次

1. 追肥の影響
2. あの悩み、再発‥?


1. 追肥の影響

栽培から92日目午後4時頃(気温10℃、湿度32%)、追肥から15日目のカブの様子です。
追肥前の萎れた様子からはかなり回復しており、葉の艶や硬さや厚みが増えたように感じました。
特に、葉の先の丸まりがかなり軽減されていました。
追肥によってカブの窒素吸収量が増えたことにより、葉の硬さや厚みが増し、結果的に葉の先の丸まりが軽減されたと考えられます。
写真として記録を残してはいませんが、追肥2、3日後には、ぱっと見で分かるぐらいの葉の状態の改善が既に観察されていました。
化成肥料の即効性には、想像以上に驚きました。
高校時代、家庭菜園でピーマンやきゅうりなどの夏野菜を育てたことがありますが、その時にはここまでの化成肥料の影響は見られなかったように思います。
鉢植えと露地栽培では、野菜の周囲の土の量には違いがあり、鉢植えの方が肥料に対する土の量は必然的に小さくなると考えられます。そのため、肥料の直接的影響が鉢植えの方が大きくなるのではないかと感じました。

IMG_6191.JPG

IMG_6192.JPGカブの付け根の膨らみについて、3個体のうち最も大きい個体は1.2mm、最も小さい個体は0.8mm程度でした。
前回より僅かに肥大していますが、肥料の影響は葉ほど顕著には観察されませんでした。
与えた化成肥料に含まれる成分に偏りがあるのか‥
それとも、カブ自身の肥料に対する反応スピードは成分ごとにばらつきがあるのか‥
ともあれ、追肥のタイミングが遅かったのは痛手であった可能性が高そうです‥


2. あの悩み、再発‥?

ここで、1つ悩みに気付きました。
それは、個体の傾倒です。どの個体も安定感がなく、倒れかけているではありませんか‥!
以前も傾倒が起きましたが、今回は少し原因が違いそうです。
観察してみると、茎が弱くヒョロヒョロとして倒れているのではなく、茎の付け根から倒れているようです。
そして3個体のうち1個体は、付け根の肥大部分が丸見えになっていました‥!(1枚目の写真中央個体です)
軽く引っ張ってみると、主根含めしっかり土には根付いているようには感じられました。
元気になった葉の重みを支えられず、倒れてしまったのか‥

IMG_6193.jpg対策としては、
1. 土寄せ
2. 傾倒のひどい2個体について、支えを付けて軽く固定
を行いました。

今回の投稿はここまでです。
それでは、よろしくお願いします。

コメント

柚原さんこんにちは

 先ずは「追肥の影響」ですが、おっしゃる通り「鉢栽培の方が顕著に影響が出る」のはその通りです。単純に考えても分かる通り、畑栽培と鉢栽培で比較すれば「根域の体積」はいったい何十、何百倍違うでしょうか。畑であれば土はその面積だけではなく深さも相当深くなりますので(実際は硬い耕盤層、あるいは地下水位、または還元層の直上までが根域になる)。

 根域が狭いことで、影響は主に二つ現れます。一つは、根が障害物あるいは自根を感知してあまり伸びなくなることです。つまり根の量そのものが減ります。このため、自動的に地上部も小さくなります。そうしなければ、地上部と地下部がアンバランスになって萎れて枯れるでしょう。実は盆栽というのは、根域を狭い鉢で制限することによって地上部の生育を抑制するから成り立つものです。それで芸術品となるのも凄いですね。そこまで至らなくとも、例えば果樹栽培をする際、敢えて根の一部を切り、成長のバランスをとるといったことも行われています。

 もう一つは根域が狭いということは含まれる土壌の量も変わるということです。もちろん鉢栽培では水管理が重要になります。それ以外に、「土壌に吸着されて保持される肥料分」の量も変わるということです。

 これは農学部の学生なら基礎的に知っておくべきことなのですが、肥料分は多くが陽イオンであり、それに対する「陽イオン交換容量(≒保肥力)」が土壌の性質で大変重要です。この性質は土壌を構成する「鉱物の種類」、そして「有機物の量」で決まります。そのため、土壌鉱物が堆積岩由来なのか火山岩由来なのか、そういったことが重要になります。

 その知識をベースにして、更に加えて「水田は陽イオンを保持しやすい形式である」とか、「日本の畑土はリンを固着してしまって無効にしやすい性質がある」といったことを学習します。

 そして土壌ではなく植物側の性質として「生育初期には特に窒素分が求められる」とか、「リン分は植物体内に取り込まれて貯蔵される」とか、「カリウムは逆に一定量が要求される」とか、学ぶ必要があります。

 そこでようやく、「元肥と追肥の割合、それも養分ごとの数字」が割り出せます。具体的には窒素なら元肥と追肥が「6:4」、リンなら「9:1」、カリウムなら「5:5」という基礎的数字になります。

 その上で、作物が「葉菜なのか果菜なのか、根菜なのか」、「生育期間はどのくらいなのか」まで考えて元肥や追肥の量が決まります。

 実は更に「肥料そのものの性質として即効性なのか緩効性なのか、無機質なのか有機質なのか」、「作物固有の性質はあるか(例えばイチゴは硝酸態窒素よりもアンモニア態窒素の方を好む)」、そして「経済的な問題として肥料のコスト及び散布の労力はどのくらいか」まで考える必要があります。

 最終的に例えば「タマネギは基本元肥のみ」だとか、ホウレンソウは「追肥を超即効の葉面散布で行う」だとかの結論が出ます。

 これが栽培上の一部の事柄である施肥についての概要です。どうでしょうか。これから農学部で学ぶことが多いと思いませんか? だからこそ面白いのです。ちなみに農学部の研究レベルでは「施肥に対する反応の遺伝子レベル解析」とか、「根圏微生物との共生的インターアクション」といったことまで進んでいます。

DSC_0331.JPGラボスタッフ・オガタ