14.ハクサイ、ホウレンソウ総まとめ(農:菅野 泰樹)
2025年1月28日 (火)
はじめに
最近、学期末ということもあり、試験にレポートに、いろいろと立て込んでいます。「今週さえ乗り切れば...!」とここ3週間くらい思い続けています。来週もこう思っていることと思います。しかし、来週は本当に乗り切れば試験、レポートからは解放されます。年末年始休んだかと思ったら今度はほぼ2か月の休みがあるということで、ちょっと怖いような気もしますが充実させたいと思っています。今のところ自動車学校に通う予定です。
ハクサイ、ホウレンソウの振り返り
10月7日に種をまいてから現在までのおよそ4か月間、ハクサイ、ホウレンソウの管理、観察を続けてきました。その過程を振り返りたいと思います。なお、過去にも振り返りの記事を投稿しているので、今回はそれ以降(11月8日~)のまとめとさせていただきます。
ハクサイ
葉の枚数が増え、肥大したことが写真から分かります。また、茎が太くなってきたことも目立ちます。栽培34日目時点では芽から生長してきた際の徒長が目立ちます。栽培途中で土寄せを行いました。感覚的ですが、葉の色が濃くなっていっているように見えます。単純に生長に伴って光合成の能力が整えられているのではとも考えましたが、弱光の環境に適応して光合成色素をさかんに合成した結果とも考えられます。最近の記事で、よく中肋について取り上げていましたが、写真を並べてみると生長が良く見えます。どの段階で特に発達が始まったかは観察からは読み解くことはできませんでした。
写真を並べてみて、葉が増えても高くなっていないことが分かります。葉を広げてロゼットの形を取ることで、よく光を受け、風をしのぐ植物があるということは聞いたことがありますが、ハクサイのこの低さも同じような効果が望めるのでしょうか。
今回栽培した品種は「極意」でした。想定される栽培期間は3か月ほどで、すでに過ぎています。仮にこれから十分に光が当たる環境で、適切な栄養管理をした場合どこまでの成長が望めるのでしょうか。栽培初期の生長が肝要であるとされているため、いくら育ててもこれから結球するようなことはないと考えています。
ホウレンソウ
ホウレンソウに関しては、葉の色が濃くなったことが顕著です。以前の記事でも観察しましたが、やはり、葉は日がたつほど垂れてきていることが分かります。また、茎の赤色も明らかに濃くなってきています。わざわざ色素を合成している以上、何らかの意味はあるのだと考えています。もしくは、代謝の結果の副産物に過ぎないとも考えることもできます。
葉の色についてはそもそもホウレンソウが半陰性植物とのこのことなので、葉の色が濃いことは不思議ではないと考えています。ハクサイは陽性植物でした。この情報を考慮して栽培環境を変える工夫ができたのではないかと反省しています(光をさらに取り込むことは難しいですが)。
ホウレンソウの品種は「ハンター」で、こちらは4か月ほどでの収穫を想定されています。ホウレンソウもこれからどれほどの生長が望めるのか、気になるところです。
おわりに
ハクサイ、ホウレンソウともに、一部は収穫して食べますが、一部は残してしばらく育ててみます。間引きで1株まで減らさなかった唯一の恩恵かもしれません。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。次の投稿がラストになります。収穫、実食が主な内容となりますが、雑多な気づきなどを載せたいとも思っています。
コメント
菅野さんこんにちは
学生時代は長期休みこそ華!ですね。夏休みよりも長い春休み、さあどうするでしょうか。ただダラダラするだけでも意味は充分ありますが...... 自動車学校もいいですね。ただし、季節的に自動車学校は混む(合宿であればこの限りではない)ので、教習時間の予約がなかなか難しくなります。モザイク状に学科教習と路上教習を組み立てるのは、頭の使いどころになるでしょう。ちなみに自動車学校はそれぞれ内容に大差があるので、評判をしっかり聞いた上で、なるべく街中から遠い自動車学校を選んだ方がいいですね。
さて、今回投稿内容は栽培振り返りの続き、まとめて写真で追うと見ごたえがあります。
その変化よりも、菅野さんの観察結果に興味があります。先ずはロゼット的な背の低さ、これは低温に対する自然な反応ですね。風と雪に対応する形態です。次に栽培期間と大きさについて、これはもちろん大幅に遅れています。ハクサイの種子袋に書かれている栽培期間は標準的な適期・畑栽培のものです。そこから遅れるのは想定の範囲内なのですが...... 確かにここまで遅れると結球は難しそうです。葉の大きさのこともありますが、ハクサイには「最低結球葉数」があり、おおむね25枚以上の葉が必要ですので。
三月になって暖かくなれば急激に成長する、と普通なら断言するのですが、ここまでの経過を見るとどうなんでしょうか。育ちは遅く、しかし枯れず、絶妙な経過できていますから。ともあれ花をつける(三月末くらいから)のがタイムリミットです。結球しなくとも食べてしまえばあんまり変わりません。
そして今回更に興味深かったのは「葉の色」への気付きです。仰る通り、植物は弱光の環境下で、むしろ葉緑素を増やして光合成をしようとする性質があります。おまけに強光下では光による葉への障害があるため、葉緑素を減らしておこうという戦略も取られます。
ただし、それまた程度問題で、あんまり弱光だと植物は「光合成しようとしても仕方がない」と判断して葉緑素を作らず、ただのモヤシになります。
今回の栽培環境は、そういった意味でも本当に絶妙ですね。
さあ、こういった話は一般的としても、農学部生であればもう一歩、数字的なところも知っておくべきですね。だいたいの作物は明るい日蔭程度の照度が栽培の下限であり、逆に照度上限は真っ向から直射日光を浴びる強さの数分の一です。それを越える過剰な照度は葉の細胞へ電位的ダメージを与えるので、「光呼吸」という一種の安全弁的なショートカット回路を作動させます。もちろん成長には寄与しません。
ところが......一部の植物(具体的にはイネ科植物)は巧妙に最大照度を利用します。そのシステムは......「葉を傾ける」ことです。斜めに光を受けることで光による障害を避けつつ、しかも光合成に目一杯利用できます。その戦略のせいだけではないのですが(他にも気孔のメカニズムなど他の科よりも効率的な部分がある)、ともあれイネ科植物の光合成産物は多いので食糧生産に適しているわけです。その元々の性質に加え、現代の多肥農業時代に対応し、葉の傾きも品種改良で次第に変えられてきました。結果、だいたい10アール当たり、コメなら600㎏取れるでしょうか。これは人間一人分のカロリーををコメだけで賄うとすれば、18メートル四方の土地があればいい水準です。海外のコムギなら10アール当たり900㎏といった例もあります。これが飼料用あるいはバイオマス用のイネ科作物なら更に倍はいけます。
それに対し、他の科の作物は数分の一の収量しかありません(例えばアズキやソバは10アール当たり200㎏程度)。まあ、それぞれの他科作物には特徴があり(マメ科なら空中窒素固定という特技とか)、利用されるのですが。
今の農学部のカリキュラムを知らないのですが、そういったことも習うかもしれませんね。では余談はこれぐらいにして、ホウレンソウの話です。茎の赤色(アントシアニン)について、これまた他の受講生もよく気付くところで、その代謝経路や意義については割愛します。「陽性植物」や「半陰性植物」ということも、これは生産者的な意味合いか、純粋に光補償点的な植物学的分類なのか、少し不明な部分があるので割愛します。ハクサイとホウレンソウにさほどの差異はないでしょう。
ただそういったことを「気付き」、「調べて」、「応用する」ことは素晴らしいと思います!
さあ、次がラストとのことですが、食べてみた様子、また感想、期待してお待ちします。
これを懐かしい!可愛い!と感じるとすれば明らか昭和の人......
ラボスタッフ・オガタ