研究経過
ハワイ諸島の多様な環境での新種形成の初期過程をゲノムレベルで解析しました (清水グループ)
February 20, 2017 10:30 PM
Category:研究成果
main:瀬々班
遺伝子解析技術の著しい進歩により、野生生物の適応・進化過程をゲノムレベルで解明できるようになりました。ハワイ諸島に優占して生育する固有種ハワイフトモモ (フトモモ科) は、一種でありながら多様な環境へ適応し、環境の異なる集団間では別種とも思える程に、形態の異なる葉をもちます (図) 。ポスドクの伊津野彩子博士らが京都大学での博士課程以来、ハワイフトモモを種分化初期過程研究のモデル生物として研究を進めてきています。まず、N50が5MB以上という非常に高いクオリティのゲノムアセンブリを確立しました (Izuno et al. 2016)。さらに、ハワイ島マウナロアの標高150-2,400 mの範囲に生育する72個体を対象に、ゲノム内の1,659遺伝子座における塩基変異を調べました。その結果、異なる環境に適応し、互いに異なった形態を持つ集団間においてもゲノムの大部分では遺伝子交流があり、遺伝的差異は小さい反面、気温や降水量変化への応答に関与すると思われる一部の遺伝子座 (34遺伝子座) においては、選択によって生じたと思われる、大きな差異が認められました。従って、ハワイフトモモは、一部の遺伝子座の変化によって葉形態等に著しい差異が生じることで多様な環境に適応し、新種形成の非常に初期の段階にあることが示唆されました。
Izuno A, Kitayama K, Onoda Y, Tsujii Y, Hatakeyama M, Nagano AJ, Honjo MN, Shimizu-Inatsugi R, Kudoh H, Shimizu KK, Isagi Y. (2017) The population genomic signature of environmental association with gene flow in an ecologically divergent tree species Metrosideros polymorpha (Myrtaceae). Molecular Ecology