平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

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研究経過

研究成果がJournal of Cell Science誌に掲載されました(丸山班、東山班)

September 29, 2017 5:48 PM

Category:研究成果

main:丸山班, 東山班

受精後の胚珠では花粉管誘引物質を分泌する助細胞がすみやかに不活性化されることで,不必要な2本目の花粉管の接近が阻まれています.

 

近年,私たちは受精後の助細胞が胚乳に吸収されて不活性化されることを報告しました.助細胞胚乳融合と名付けた現象のメカニズムに迫るため,今回の論文では様々な阻害剤を用いた実験を行いました.動物の細胞融合や酵母の接合などでは,細胞膜融合においてアクチンフィラメントの集積やタンパク質の分泌が重要と考えられていました.しかしながら,受精後の胚珠をアクチンの重合阻害剤や分泌経路の阻害剤で処理しても助細胞胚乳融合が起こる頻度にほとんど影響は見られませんでした.その代わり,受精した胚珠を転写阻害剤や翻訳阻害剤で処理すると助細胞胚乳融合が強く抑えられたことから,受精後における新たな遺伝子発現の重要性が示されました.さらに,サイクリン依存性キナーゼの阻害剤であるroscovitineの処理によっても助細胞胚乳融合の頻度が低下することが明らかとなり,G2期からM期への転換が助細胞胚乳融合に必要であることが示唆されました.

 

助細胞胚乳融合の実行因子は未だ同定されていませんが,いずれ順遺伝学などの別のアプローチによって徐々に明らかになってくるでしょう.今回の知見はそれらの因子がどのように働いているのかを考える上で重要な役割をはたしてくれると考えています.

 

*本研究はJournal of Cell Science誌に掲載されました.

  

  

<発表論文>

Motomura, K., Kawashima, T., Berger, F., Kinoshita, T., Higashiyama, T., and Maruyama, D. (2017). A pharmacological study of Arabidopsis cell fusion between the persistent synergid and endosperm. Journal of Cell Science.

doi: 10.1242/jcs.204123