研究経過
【国際共同研究】Genome BiologyのPlant Epigenomics特集号にシロイヌナズナ種子におけるDNAメチル化のリプログラミングについての論文が掲載されました(川勝班)
September 27, 2017 10:00 AM
Category:研究成果
main:川勝班
植物は動物と異なり種子が休眠することでライフサイクルを一時的に止めることができます。動物では受精から胚発生の間に大まかな形が作られますが、植物では胚発生だけでは形作りは完了せず、発芽後も新たに葉や花を作り続けて形作りが継続します。DNAメチル化は遺伝子発現やトランスポゾン転移の抑制に関わっています。動物ではリプログラミングによって胚発生過程で親世代から引き継がれたDNAメチル化を消去し、新たにDNAメチル化を再構築します。植物でも花粉細胞や胚乳のリプログラミングは報告されていましたが、植物の形作りにおけるリプログラミングはあまり知られていませんでした。
私たちは胚発生中の種子と発芽中の種子のDNAメチル化パターンの変化を詳細に調べ、胚発生ではCHHメチル化が誘導されて休眠中の完熟種子は非常に強くCHHメチル化を受けているが、発芽後数日間でCHHメチル化が一気に解除されることがわかりました。胚発生におけるアクティブなCHHメチル化は小分子RNAに依存したRdDM経路とヘテロクロマチン構築に関わるDDM1-CMT2経路に依存していること、一方で発芽におけるメチル化の解除は細胞分裂に依存した受動的な脱メチル化が原因であることもわかりました。
DNAメチル化の変化と遺伝子発現の変化を比較すると、DNAメチル化の変化はゲノム上でランダムに起きているのではなく、休眠中は発現していないが発芽によって発現が誘導される遺伝子の近傍に多くなっていることがわかりました。このことから胚発生と発芽過程ではDNAメチル化によって発芽に関係する遺伝子発現を制御している可能性が示されました。
種子の休眠・発芽は新種誕生に必要な生存競争に関わるだけでなく、重要な農業形質の一つです。今回得られた知見はエピゲノム制御による休眠・発芽の最適化に繋がっていくことが期待されます。
<発表論文>
また、La Trobe UniversityのMathew G. LewseyグループとCentre national de la recherche scientifiqueのVincent Colotグループからも関連した論文も公開されており、Nature Reviews GeneticsのReserach HighlightとBioMed CentralのOn Biologyに紹介記事も掲載されています。こちらも合わせてご覧ください。
<関連論文>
<紹介記事>
Morneau (2017) Exploring the epigenetic dynamics of early plant development. On Biology