平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

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研究経過

【プレスリリース】ブラシノステロイドのマスター転写因子に特有な塩基配列認識の鍵と鍵穴の仕組みを解明(宮川班)

October 3, 2018 10:19 AM

Category:研究成果

main:宮川班

東京大学大学院農学生命科学研究科の宮川拓也特任准教授らの共同研究グループは、植物ホルモン「ブラシノステロイド」のマスター転写因子であるBIL1/BZR1と標的DNAの複合体構造を決定し、BIL1/BZR1が特有の塩基配列認識を可能にする構造基盤を明らかにしました。

 

器官成長促進、細胞分裂・伸長・分化の制御、受精促進などの多岐にわたる生理活性をもつブラシノステロイドの作用には、ブラシノステロイド情報伝達のマスター転写因子群を介して引き起こされる特異的かつ多様な遺伝子応答が不可欠です。マスター転写因子BIL1/BZR1は、G-box配列(CACGTG)を認識するbHLHファミリー転写因子と類似の塩基認識残基をもちますが、CAに対する認識をbHLHファミリー転写因子よりも緩めることで、ブラシノステロイド特有の多様な遺伝子応答を可能にしています。BIL1/BZR1及びbHLHファミリー転写因子の立体構造とDNA結合特性を詳細に比較することにより、BIL1/BZR1が塩基認識残基から離れた二量体形成領域の構造を変化させ、塩基認識残基のCAに対する適合度を微調整するという新たな鍵と鍵穴の仕組みを説明しました。

 

本研究で明らかにしたBIL1/BZR1の構造基盤は、非常に多くの高等植物において進化的に保存されており、植物におけるブラシノステロイド応答遺伝子の多様性を生み出す普遍的な仕組みの一つであると推測されます。

 

この研究成果は平成30年10月1日付けでNature Plants誌に掲載されました。

 

◆プレスリリース詳細はこちら

東京大学大学院農学生命科学研究科プレスリリース

http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2018/20181002-1.html

 

<発表論文>

Structural basis for brassinosteroid response by BIL1/BZR1

Nosaki S, Miyakawa T, Xu Y, Nakamura A, Hirabayashi K, Asami T, Nakano T, Tanokura M

Nature Plants 2018 Oct 1. Doi: 10.1038/s41477-018-0255-1