研究経過
RNA-seq解析によるパンコムギBゲノム染色体の起源(宅見班)
February 2, 2019 10:50 AM
Category:研究成果
main:宅見班
宅見班では、パンコムギが持つ3種類のゲノムのうち、議論が続いていたBゲノムの染色体の起源について、RNA-seqデータから得たゲノム網羅的多型情報に基づいた研究成果をDNA Researchに報告しました。
高等植物では近縁種間でのゲノムの違いは、雑種での減数分裂時に二価染色体がどの程度形成されるのかに基づいて判断されます。パンコムギ(AABBDD genome)とマカロニコムギ(AABB genome)のBゲノムと同じゲノム記号を持つ2倍体種は存在しません。倍数種にBゲノムを提供したのはSゲノムを持つSitopsis節の5種のどれか、あるいはSitopsisの複数種が関わった、など、様々な議論がなされてきました。
異質倍数性進化に伴って、核ゲノムの遺伝子間領域には様々な反復配列が蓄積して複雑な構造となっているため、今回、エキソン配列のみに注目してBゲノムの起源について解析を試みました。そして、Sitopsis節5種の幼苗葉のRNA-seq解析を行い、パンコムギやマカロニコムギのBゲノムとの間で一塩基多型等のゲノム網羅的な多型情報を得ました。
その結果、Bゲノム染色体の全領域について、クサビコムギ(Aegilopsspeltoides)が起源となっていることを明らかにしました。染色体末端の3領域では例外的な系統関係を示したのですが、コムギの染色体末端では組換え頻度が高くなることがゲノム分化の速度の差となって現れていると考えられました。今後は近縁ゲノム間で異なる蓄積を示す反復配列がどのように二価染色体の形成に影響を及ぼしているのかが、種分化の観点からも明らかにすべきことになると考えられます。
発表論文:Y. Miki, K. Yoshida, N. Mizuno, S. Nasuda, K. Sato and S. Takumi (2019) Origin of whet B-genome chromosomes inferred from RNA sequencing analysis of leaf transcripts from section Sitopsis species of Aegilops.