平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

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植物新種誕生原理植物新種誕生原理

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研究経過

【プレスリリース】モノーが提唱したアロステリック制御メカニズムの一端を解明 (上口班)

May 2, 2020 3:09 PM

Category:研究成果

main:上口班

名古屋大学生物機能開発利用研究センターの上口(田中)美弥子教授と竹原清日研究員らの研究グループは、量子科学技術研究開発機構の桜庭俊研究員、名古屋大学シンクロトロン光研究センターの永江峰幸助教らとの共同研究で、いくつかの成長に関わる植物ホルモンの代謝酵素が、植物ホルモンの濃度に応じてタンパク質レベルで巧みに恒常性を制御・維持することで、植物の成長を調整していることを初めて明らかにしました。

今回、構造解析と分子動力学的シミュレーションを組み合わせることにより、植物ホルモンの一つであるジベレリン及びオーキシンの代謝酵素が可逆的に植物ホルモン濃度依存的な多量体構造を形成し、それに伴って活性を上昇させることを見出しました。このような調節は、古くは、モノーのアロステリック酵素として提唱されていた概念ですが、そのシステムが植物ホルモンの可逆的な調整システムとして進化の中で何回か独立して誕生し、共通に進化させてきたことも示唆されました。

この結果により、このような多量体形成を利用して、様々な植物ホルモン応答を人為的に制御できることが期待されます。

図3のみ.png

図:本研究で明らかにした 代謝メカニズム

ジベレリン代謝酵素(GA2ox)及びオーキシン代謝酵素(DAO)は、植物内のジベレリン(GA)やオーキン(IAA)量が多くなると次の反応に必要なGA4やIAAを分子間に結合させ不活化を促進することが示された。その際、gateと名付けた活性中心を覆う蓋のような構造が開閉することで、基質(生成物)が出入りすることも示唆された。

本研究成果は、2020年5月1日付け英国科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載されました。

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【論文情報】

論文タイトル:A common allosteric mechanism regulates homeostatic inactivation of auxin and gibberellin

著者: Sayaka Takehara, Shun Sakuraba, Bunzo Mikami, Hideki Yoshida, Hisako Yoshimura, Aya Itoh, Masaki Endo, Nobuhisa Watanabe, Takayuki Nagae, Makoto Matsuoka, Miyako Ueguchi-Tanaka

DOI: 10.1038/s41467-020-16068-0