東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

15.最終報告~すべては繋がっている~(文:小松澤亮晴)

2021年1月15日 (金)

(0).挨拶

 こんにちは、小松澤です。あっというまで、もう最終報告になってしまいました。ここで自分が報告、というか考えたことは、副題にもあるように「すべては繋がっている」ということです。具体的にいえば、この展開ゼミで学んだことは、どんなに些細なことであってもなにか重要なことと結びついており、さらにその重要なことが組み合わさったりして高次のものがでてきたりする、ということです。ボードレールの「correspondances:万物照応」にも対応しているかもしれません。ともかく、本題のほうに入っていきたいと思います。


~目次~

(0).挨拶

1.栽培面で想定外だったこと

2.他講義への波及効果

3.「観察」から身に着いたこと

4.文章力の変遷

5.自然科学的な視点の獲得

6.コメントの意義

7.中間発表時からの目標

8.学んだことの活用

(9).結び


1.栽培面で想定外だったこと

 まず、栽培を行うにあたって想定外だったことを述べていきます。想定より大変だったことについて、一つ目は「植物の様子をしっかり観察しなければならない」ということです。当たり前かもしれませんが、植物も動物でも、育てるときはその様子をしっかりみてやらなければなりません。しかしこれが今までペットも飼ったこともなければ植物を育てていたのも遠い昔の話である自分にとっては、初めはなかなか大変なことでした。さらに冬になってきて、外の植物の様子を見に行くということがたいへん億劫になってきたこともありました。最初の方に育てていたカイワレダイコンは特に毎日毎日様子を見なければならず、しかもカイワレダイコンは陰の方に置いてあるので、いちいち思い出して様子を見なければなりませんでした。カイワレは3世代分育てましたが、1世代目は様子を見るのをさぼってしまった結果、この記事のように、気づいたときには少し腐ってしまっていました。あとは、植物は案外水がない状態に弱い、ということも意外だったことの一つです。これは品種改良されたものですが、ふつうの雑草にとってはしばらく晴天続きで雨が降らない状態というのはよくありそうですが、自分が育てているやつは、これも様子を見るのを数日さぼってしまったのですが、それでも水をあげて数日でこの記事のように葉っぱが完全にしおれてしまっていました。

 あとは、意外と成長が早く止まってしまったということもあります。自分はここらへんが限界かな、と判断して収穫してしまったのですが、どうやら尾形さんのコメントを見る限り、まだまだ様子を見てあげてもよかったのかな、と思いました。

20210114005656-8ecf101d8bbb6adf6b1c0df191e0637377d6d3b9.jpeg20210114005723-fec0856bc4cbc86ad2ddca75cfd431e2749ae3ec.jpeg20210114005747-cd175107fc4e7f0afbe04918da3532a44fbe1697.jpeg
これは84日目のものです。ベビーリーフはともかく、小松菜と芭蕉菜はもう数週間くらいこの状態から、施肥をしても変化がなかったのですが、たしかに収穫したものは少し市販のやつに比べて小さいよな、と感じられました。

 では、意外とうまくいったことについて、これはなにより種まきが適当(雑)で、間引き後も全く好ましくないような間隔になってしまったにもかかわらず、ほとんど問題なく植物が育ってくれたことです。

20210114005926-af78f59877b7770b2578e89e25ed54d0825393e3.jpeg20210114005945-fb0870f7ea9dba456b1239b5661c089fde945be0.jpeg
このように、特に芭蕉菜の方は、苗が大変密なかんじで植えられていました。これは佐々木さんの記事との比較で、そのひどさが分かるかと思います。それでもしっかり育ってくれたということはよかったと思います。


2.他講義への波及効果

 他講義への波及効果について、講義ごとではなく、効果ごとに言及していきたいと思います。まずは、「文章を書く力が身に着いた」ということです。これは自分だけでなく、すべての受講者の方も同様だと思います。これがどう影響したかということですが、それもやはりレポート関連になります。例えば、森先生の「思想と倫理の世界」の期末レポートは、2500字以上で2月4日までに出す、というものでしたが、自分は12月22日に、しかも4000字越えの分量で出しました。そうですね、文章を書く力だけでなく、「早い時期に執筆に取り組む」ことも、この展開ゼミで成長したところだと思います。文字を打ち込むので、パソコンのタイピングも少し上達したのかな、と思います。同じく、1月下旬締め切りの篠澤先生の「論理学」、曽我先生の「日本国憲法」の課題も、12月中に出すことができました。他にも鈴木先生の「文学の世界」「民間信仰」の講義の毎週のレポート(感想)はすぐに仕上げることができました。この感想はよく何を書くか行き詰ってしまうことがあるのですが、ここではこの展開ゼミで学んだ「話をつなぎ合わす」能力に助けられました。自分はこの展開ゼミの記事で、文学部ということで、冒頭に読んだことのある文学作品の紹介をしていました。しかしそれだけでは正直ただの字数稼ぎになってしまいます。そこでその作品と展開ゼミの内容を結びつけなければならないという、むしろ難易度の上がるようなことをやっていたわけですが、そのおかげで毎週の感想では自分の書きたいことと講義の内容をうまく関連させて書くことができました。しかし、これはただの文章を埋めるためのコツ、のようなくだらないことではありません。異なる二つのことがらをまとめて論じることができる、というのはいわゆる現在広く試みられている学際的な研究のあり方で、さらには矛盾するかにみえることがらを結びつけることで、弁証法的に高次の事柄に出会う可能性だって、生じてくるのです。しかしここで実は問題が生じてきます。異なる事柄を結びつけるということを徹底すると、その結びつくところのものはそのぶんいろいろなものに当てはまる、ということになり、これはその究極においてトートロジーに陥ってしまうのです。トートロジーとはいわゆる同語反復でなく、恒真命題のことで、トートロジーは "何も語らない" 命題とされています。例えば、「晴れている∨晴れていない」という恒真命題が何も語らないように、自分の思考、主張も、いろいろなものに当てはめていくことによって、かえって何も語らなくなってしまうという可能性が生じてくるのです。これも、展開ゼミの記事を書いているときに考えたことで、これは他の講義どころか、これからの研究全体に対しても波及効果があるように思われます。


3.「観察」から身に着いたこと

 毎日植物を観察していく中で、やはり気づくことや学ぶことはでてくるものです。例えば、この記事に書いてあることだと、このとき注意深く観察していたおかげで、植物がなにものかに食べられてしまったということに気づき、さらに観察を続けていくと、それが虫でなく鳥の仕業であり、鳥が気温が低いこの時期に来たのは、植物がほどよく成長したからかもしれないということ、鳥は小松菜、ベビーリーフより芭蕉菜を好んでよく食べることなど、このことだけでもいろいろなことを考え、気づくことができました。ここで重要なことは、こうして観察によって、そこにある事実だけでなく、他の事柄も推論できる能力が身に着いたということだと、私は考えました。


4.文章力の変遷

 これは3.のところで触れたところですが、改めてまた説明していきたいと思います。まず先に述べたところとして、「文章を書くことのできる量が増えた」ということと、「異なる話題を関連させることができるようになった」ということがありました。これに加えて、記事でプレゼンをする際に、「できるだけ写真やグラフ等に頼らない説明をする」ことを心掛けるようになりました。この展開ゼミの記事は写真を載せる必要があるので、これを書く側はどうしてもその写真に頼りがちな説明をしてしまいそうになります。例えば、「この写真を見てわかるように~」などということを書いてしまいがちになってしまいます。自分ももしかしたら何度か、こういうことをやってしまっていたかもしれません。しかし、これを改めて、例えばさきの文を、「この写真を見てください。この部分とその部分に、色と形がこう言う感じの、こういうものがついていました~」などの、写真で伝わることを写真だけにまかせず、それをしっかり文字に起こす、ということをしなくてはなりません。これは尾形さんの他受講生への記事のコメントを見て気づいたことで、自分もそれを見てから、写真を見ていない人にも伝わる説明を心掛けるようになりました。他には、文体が少し変わったかな、ということを思いました。初めはレポートのような自己完結的な文体だったのですが(もちろんレポートは今もその文体のままです)、このような「~ですね」などの柔らかい文体で文章を書くこともだいぶできるようになったのではないかな、と思います。


5.自然科学的な視点の獲得

 自分は今年度唯一の文系学部ということで、この自然科学的な視点の獲得、というところは他の理系の受講生よりも得るところがあったのではないかなと思います。例えば、自分が苦心したところは、植物が元気か、などの曖昧なことは文章で感覚に訴えでもすれば、頑張ればうまく伝わるのかもしれないですが、これを感覚でなく、客観的に表すにはどうすればよいか、ということには大変考えさせられました。また例を出してしまいますが、例えば車とパンとではどちらが価値があるか、という問いがあるとして、これは文系(人文科学・社会科学)的視点でいうと、価値は多様であり、定まらない、ということになります。餓死寸前の人にとってはパンはなによりも大事でしょうからね。しかし、これを自然科学的に、客観的に定めようとするとなると、少し問題がややこしくなってきます。そこで我々は「貨幣」という客観的な価値「基準」を持ち出す必要があるのです。こういう基準はたしかに本質的ではないかもしれませんが、これがないと我々の生活世界はたちまち秩序を失ってしまいます。ベルクソンが時間は分割できない、ということを証明したとき、我々はその時点で「過去」「未来」という概念を生活から一切、虚構として退けてしまってよいのでしょうか。物理学に4次元としての時間という基準を設けてはならないのでしょうか。いや、それではいけないでしょう。かくして自分も「暫定的な基準を仮定する」ということをしなくてはなりません。植物の元気さを伝えるには、たとえその基準が正しくないようなものであっても、「葉っぱの色が~」とか、「成長が何cmの時点で停滞している~」などの表現で伝えなければなりません。そうしてこそ万人にとって普遍的な自然科学が開けてくるのでしょう。


6.コメントの意義

 尾形さんのコメントには、ほんとうに多くの点で助けられました。初めのうちにわからないところや不安なところに答えてくれ、さらにはこちらが何も聞いてなくても、施肥や水やりの頻度、度合いなどを教えてくださりました。後者の方は私は自分の栽培が順調だと勘違いしていて、たしかに大きな障害などはなかったのですが、施肥の量や頻度は、言われたようなことをこれまでできていなかった、ということを知ることができました。他のところにも書いたことですが、記事を書く際に写真に頼り過ぎないようにすること、また写真の撮り方、映す箇所をどう工夫できるか、ということを、他の受講生の記事のコメントからも学ぶことができました。また、渡辺先生や増子さんのコメントも、それぞれ自分の栽培にとって得るところがあったように思われます。なにより自分が最も助けられたことは、自分の記事を他の人が必ず見てくれている、ということを実感させてくれる、ということでした。しかも、自分の場合は、冒頭の文学作品のところにも丁寧に言及してくれ、自分にとって、たいへん記事を書くモチベーションになりました。


7.中間発表時からの目標

 自分は以前の中間発表で、「他者の記事を参考にする」ということを目標にしてこの展開ゼミに取り組んできました。これについては先に述べたように、まずは他者の記事の尾形さんの記事にはたくさん参考にさせてもらいました。しかしやはり、自分の栽培は後半はとくに問題もなく、スムーズにいっていたので、他者の記事自体が参考になった、ということは少なかったです。もちろんいい意味でなのですが。しかし、他の人の記事はすべて見るようにしていたので、そこはよかったかなと思います。


8.学んだことの活用

 ここまで述べてきたことで、特に自分が重要だと思って書いていたことで、異なる事柄どうしを結びつける能力が養われた、ということがあったと思います。副題にあった「すべては繋がっている」というのも、ここからきています。そしてこれも既に述べましたが、やはり重要なところなのでもう一度繰り返しておきたいと思います。これから私は、この異なる事柄どうしを結びつけるということを、自分の将来の研究分野、いやそれだけならず日常世界に及ぶまで試み、まさに「すべては繋がっている」ということを証明してやろうという気持ちでいきたいと思っています。


(9).結び

 以上になります。もう言うこともなくなってきました。短いですが、これを以て結びとしておこうかと思います。それでは、ここまでの展開ゼミ、今まで本当にありがとうございました。(5285字)

コメント

文学部・小松澤さん

 育種の渡辺です。一番乗りでの「最終報告」、報告の記事の日付は1/15(金)になっていますが、記事を見つけたのは1/14(木)の朝???。でも、早め早めの行動はよいことです。他の講義のレポートも速めに行動できているとあり、この講義での収穫とあったのは、こちらとしては望外の喜びですね。是非、この早め早めの行動をこれからも続けて下さい。意外に速いペースで収穫をされたので、食レポはあとからでもよいというのを書いたくらいでしたので。今年の気温は秋から冬にかけて、比較的天候がよく、気温も高めに推移したので、初期生育が確保でき、そのあとの低温にも耐えることができたのかと思っています。これが逆になると、大変なので。でも、見るところを見て、しっかり植物に対応できていたと思います。ものを言わない植物に対応できたことで、これからも色々なことにしっかりとやれる自信が持てたのではないでしょうか。

20210114163736-ee616459622ac6f1e0ec0f3053aa85ff21c010d5.JPG それから、文章力についてのところで、「写真を見たら分かるように・・・・」という表現はよくないと書いてありましたが、その通りです。写真の見方は千差万別。それぞれが解釈したいように見るわけです。その要点を理解して、どの部分に自分は着目しているのか、その上で、自分として何を主張したいのか、それをサポートする写真を脇に添えることの大事さを習得できたことは、これからのレポート作成など、様々な場面で行かすことができるのではないかと思います。この講義は双方向での講義です。今でこそ、コロナ禍なので、リモートでの講義が常態化していますが、他の講義とは少し違って、こちらからのコメントだけでなく、同じようなことをしている受講生が何を考え、その時、どんな行動を取ったら、何が起きたのかを、ある意味、可視化しているわけです。見えるように。それで自分はどうするかを判断できる。そうした大事なポイントもきちんと抑えているのはniceですね。ある程度慣れてくれば、人のことが気にならなくなりますが、慣れるまでは色々なことが気になるもの。そんな時、ちょっと周りを見ることができると、冷静になれる、そんなことも理解できたのではないでしょうか。

 最後のところの「全てはつながっている」、その通りかと思います。人生、不思議なところでつながっていますし、その繋がりを大事にすると、次の繋がりが活きてくるというものだと思っています。観察緑を大事にすることで、今までつながらなかったものがつながってくる。また、意外なコメント、記事に対して自分なりの考えを持つことで違った角度から物事がつながってくるなど、多方面に及ぶことだと思います。普段から、そんなことを意識することで、気がつかなかった「繋がり」を見つけて、さらに一段高いところに上がって物事を俯瞰的に見ることができるようになって下さい。

 ということで、講義としては終わりです。記事を投稿して評価につながるのは、最終報告の最終日まで。でも、改めて、種播きからやってみるなど、これまでも色々な受講生がいました。理系文系関係なく、今回のことに懲りず、栽培をやってみて下さい。今回のコラボをしてくれた「渡辺採種場」の担当の方のコメントは、また、後日、掲載するにしますので。これからもがんばって下さい。

20210114163801-9404fc72f3f65c1f137ea78357008806c4e2929a.JPG
 わたなべしるす