東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

第7回 浅漬けをいただきます。(理:山本実永)

2022年11月24日 (木)

第7回報告 11月18日~11月24日

 こんにちは。山本である。先日、温度湿度計を買うことにした。野菜栽培の温度条件を客観的に知るためである。さて、できるだけ安いものを買おうとした私は通販サイトを覗いた。そこにはなんと300円くらいのアナログ温湿度計があるではないか。私は、迷わず注文した。しかし注文を確定してから気づいたのだが、それが到着するのが注文してから2週間から3週間後ということだった。どれだけ待てばいいのやら、待ったところで確実に届くのか?不安が尽きない。皆さんも、通販サイトには用心してほしい。それでは本題に入る。今週は、収穫後の浅漬けミックスの様子と作った浅漬けを食べての感想、朝霧の生長についてである。渡辺先生から、植物の変化がよくわかるのは昼間の写真であるというアドバイスをいただいたことを受けて、今回から朝に撮った写真を使う。朝寝坊して写真が撮れなかった日もあるが、これからはちゃんと起きられるようにしたい。

1 朝霧の生長
2 2回目の収穫後の浅漬けミックスの生長
3 浅漬けを食べての感想
4 最後に

1 朝霧の生長

 前回の記事で、朝よりも夜の方が葉が横に広がっているように見えると述べたが、この変化についてはよくわからなかった。生長の過程でそのように見えただけということかもしれない。ただし、その変化を追っている中で気づいたことがある。それは、初めの方に出てきた1枚目から4枚目の本葉は横に広がって茎に付いている一方、5枚目以降に出てきた本葉は中心にまとまるように付いているということだ。また、1枚目から6枚目の本葉は円みを帯びていて、大きい。それに対して、7枚目以降の本葉は細長く先がとがった形をしていて、6枚目までの本葉に比べると小さい。小さいということの理由は、まだ生長しきっていないためかもしれない。しかし、形の違いと茎への葉の付き方は明らかに異なっている。普段調理するホウレンソウは(一人暮らしを始めてから調理したことはまだないが)、これほど大きな円みを帯びた葉が付いていただろうか、と不思議に思っている。もっとも、売られているホウレンソウの品種にまで意識を向けて見たことがないため、朝霧が持つ性質であって他のホウレンソウにはない特徴なのかもしれない。2枚の写真は播種から44日目となる11月23日の朝霧の様子である。上の写真で、横に広がっている葉が1枚目から6枚目の本葉である。ない、このうち1枚は事故により欠けている。下の写真は、7枚目以降の本葉の様子と形である。

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そんな朝霧だが、播種から41日目となる11月20日に土寄せをした。種の朝霧が発芽することを期待してぐずぐずせずに、もっと早い時期にやっておくべきだったのかもしれない。土寄せをしてからは、株がぐらつくこともなく安定して生長している。写真は、土寄せをした翌日の11月21日夜に撮った写真である。朝霧の根元を写した。

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また、播種から45日目となる11月24日には、子葉が黄色く変色し枯れ始めている様子が観察された。最初はこの2枚の子葉から始まったことを思い返し、思わずねぎらいと感謝の言葉をかけてしまった。順調に生長して、収穫する日が楽しみである。写真は11月24日の朝霧の子葉を写したものである。真ん中の茎は事故で折れてしまったところ。

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2 2回目の収穫後の浅漬けミックスの生長

 収穫後の浅漬けミックスがめざましく生長したというのは以前の記事で書いた通りである。今回は20cm前後で収穫したのだから、次の収穫までに25cmくらいまで伸びてしまうのではと期待した。しかし、そのようにはならず、20cmくらいで生長が頭打ちになってしまっている。まず、収穫したのは播種から38日目となる11月17日である。

IMG_20221117_212956.jpgそして、それから4日間、浅漬けミックスはものすごい速さで生長した。写真は、上が11月18日、下が11月21日の浅漬けミックスを横から写したものである。

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しかし、播種から42日目の11月21日に20cm前後に達してからは、生長が止まっている。なぜだろうか?考えられる原因は大きく二つである。一つ目が、空間的な余裕がないということである。段ボール箱で作った温室の中に入れているため、天井で生長が制限されているのではないだろうか。尾花沢の四角いスイカは、プラスチック製のケースに入れることであの形にしていると聞いたことがある。それと同じことが浅漬けミックスでも起こっているのかもしれない。二つ目が、土の養分がなくなってきたということである。既に2回収穫しているため、土中の養分はかなり吸い上げられているはずである。そろそろ肥料がなくなってきてもおかしくはないと思う。この二つについて見てみたが、前者については当てはまらないようである。浅漬けミックスの最も高いところと天井の間には10cmくらい余裕があり、それで生長が制限されるということはまず考えにくい。となると後者かもしれない。前回液体肥料をやったときは、播種から24日目に当たる11月3日頃だったと記憶している。ちょうどそのころ第1回の収穫を行っている。そうすると、前回の収穫時から20日近く液体肥料をやっていないことになる。この20日間の間に、浅漬けミックスはかつてないほどの速さで生長し、そのため土壌の養分が減っているのかもしれない。追肥したほうがいいのだろうか?

3 浅漬けを食べてみての感想

 浅漬けは、季節の野菜と野菜の重さの2%に当たる重量の塩で作れるそうだ。私もそのレシピにだいたい従って作ってみた。まずは漬ける前の浅漬けミックスの葉を食べてみることにした。生の葉は、噛み切れる程度に筋張っており、飲み込んだ後も筋が口に残った。とてもではないが生食するものではない。そういうわけで浅漬けにした。まずは、安定する入れ物を用意する。これはバットでもどんぶりでもボウルでも、手軽に準備できるものでよい。今回はどんぶりを使用した。一口サイズに切った野菜をどんぶりにいれ、それに塩を振りかけた。そして、その上に重しを載せて漬けた。重しには、500ccの缶ジュースを使用した。ちなみに、私が実食したのは漬けてから1日経ってからのことであり、それだけ漬ければ十分であるようだ。写真は食べる直前の浅漬けの様子である。白いものは塩である。

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ここからは食べた感想である。根・茎・葉の順番で食べた。まず、根はこりこりとした食感で、筋っぽさはなかった。食感はたくあんに近かった。次に、茎・葉は生で食べたときのような筋っぽさはなくなっていた。また、おひたしのような食感であった。味に関してはしょっぱすぎたと思った。本当にこれだけで塩が足りるのかという思いから、入れすぎてしまったのかもしれない。次は、もう少し塩を減らしたいと思う。

4 最後に

 第7回報告は以上である。そろそろ追肥したほうがいいのだろうか。追肥するとしたら、液体肥料と化学肥料のどちらでやるべきだろうか?渡辺先生、オガタさん、助けてください...お願いします。

コメント

理学部 山本さん

育種の渡辺です。急ぎのようなので、コメントを入れておきます。少なくとも、ホウレンソウについていえば、葉っぱの緑色が下がってないので、渡辺なら、このままにします。追肥をすると、葉っぱのタンパク質量が増えて、いわゆる、青臭い野菜になります。もちろん、栄養価は高いと思いますが。

ミックスは少し色が下がっているのがあるので、即効性を考えると、液肥ですね。これが渡辺の感性です。あとは、ホウレンソウ、ミックスの直近の施肥のタイミングがわかるとありがたいです。いろんなことをやっているので、全てのことを覚えてないので。。なお、明日、ラボスタッフのオガタさんがコメント対応するので、その時、この点も議論したいと思います。なので、施肥は少しお待ちください。


わたなべしるす



山本さんこんにちは

 中間報告後も順調に記事を上げていて、いい仕事してますね!

 さて温湿度計について、300円は妥当であると思いますが、100均に無かったでしょうか...... 実は私の目覚まし時計は100均で500円だったと思うのですが、それに温度計湿度計がついてます。どんだけセンサーの原価が安いのか......

 話の本題に入り、ホウレンソウはなんともキレイに成長しています。大成功ではないでしょうか。このまま順調にいけば(突然鳥が食ったりしなければ)最終報告より早く収穫ですね。

 葉の形態についてよく観察しています。写真ではあまりよく分からなかったりしますが...... スキルがあれば、赤丸で囲むとかできればよいのですが。

 どうしてそういう葉の変化があるのかは分かりません。感覚的には、確かに後に出た葉の方が尖っている気がします(市販品)。ここで植物の生存戦略的に想像すれば、生育初めにはとにかく早く日光を得ることが大事なので丸い葉にして、生育後期には株元まで日が当たるように、丸い葉にしないことは理にかなっています。ですがこれは勝手な想像なので実際は分かりませんね。

 ちなみに、丸い葉の西洋ホウレンソウと尖った葉の日本ホウレンソウ、市販品は両者の交雑種です。そのため、生育や環境に応じてどちらかの性質がひょいと顔を出すこともあるかもしれません。まあ、そんな遺伝子スイッチがあればですが......それまた想像です。

 栽培では土寄せもいい感じです。ホウレンソウは成長点が地際にあり、ここを覆わないギリギリが最適量になるのですが上手です。

 浅漬けミックスも凄い成長です。アブラナ科植物は初期生育が速いものですが、中でもハクサイやカブに近い仲間は速いのです。

 肥料について、これは渡辺教授が書かれた通りです。葉の色からすれば浅漬けミックスの鉢には施した方がいいですね。どんどん大きくして、葉を順次取って長く収穫しましょう。ですが、ホウレンソウでも今のうちのスパートを狙って施してもいいかもしれません。

 液肥と固形肥料、どちらを使っても構いません。どのみち小さい鉢では余分な肥料分は土に保持されず、流れ出てしまいますから。細かいことを言えば固形肥料の方が一定量の肥料効果を持続するので、液肥と違ってうっかり日数が経ったのを忘れることはありません。逆に液肥は液肥の利点があり、素早く、しかもより根に均一に行き渡らせることができます(固形肥料でもそう気にすることはないのですが)。

 そのため、先ずは固形肥料を少量置き(10-20粒ほどずつ、鉢の三か所へ、土に深く埋めることはしなくてよい)、液肥も併用したらいかがでしょうか。どのみち液肥は大量に余ると思います。ただし、液肥以外でも水をやり、それが鉢底から充分出るくらいだというのが前提です。なぜなら余分な肥料分が流出するのが前提だからです。

 最後に浅漬けの作製と食レポですね。

 塩が2%というのは初めて聞きました。なるほど...... ちなみに人間が美味しいと感じるスープの塩分濃度は0.9%、つまり生理食塩水というか血液の塩分濃度なのです! これはどの料理のスープにも当てはまります。ということは、染み出た塩水を捨てれば浅漬けもそれくらいの塩分になるかもしれませんね。

 ちなみにですが、料理も科学です。よく知られていますが、ステーキの焼き加減は感覚ではありません。筋繊維のミオシンを変性させ、アクチンを変性させない温度にするべきで、それがミディアムです。

 梅酒作りも氷砂糖を使います。それは氷砂糖が溶けない初期、梅の実が水分を取り込み、やがて氷砂糖が溶けて浸透圧が増加、梅の実から逆に水分を出させるのです。これが粉砂糖では直ぐに溶けるので梅の実のエキスを抽出できません。

 さていろいろ工夫した浅漬け、良い出来ですね! 根・茎・葉の違いも面白く読みました。しかしまあ、さすが浅漬けミックス、浅漬けにすると筋っぽさが消えて真価を発揮するんですね。

 次記事もまた期待してお待ちします。

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ラボスタッフ・オガタ