公募研究

領域略称名:挑戦的両性花原理
領域番号:22A303

○募集要項等は文部科学省からの案内をご覧ください。

① 領域の概要

 雌雄が異個体の動物とは異なり、自ら動くことが出来ない植物では、雌雄の機能を併せ持つ「両性花」を基本とする繁殖システムを進化させてきた。植物は両性花を採用したことで、自殖(自分自身との交雑)と他殖(他者との交雑)という真逆の生殖システムを構築、使い分け、地球上の広範な環境へと進出し繁栄している。換言すれば、「両性花」の採用により、動けない故に植物が独自に編み出した巧妙な生存戦略が存在し、植物は、着生環境に応じて自殖と他殖の選択を常に迫られる宿命を負っているが故に、他殖を促進する仕組み(性決定、開花時期決定、送粉者の誘因機構、自家不和合性、可変的な生殖隔離機構など)は進化過程で何度となく生み出されてきた。一方で、せっかく構築した巧妙な他殖の分子機構を破壊して自殖に転じることもできる。つまり、植物は自殖と他殖を巡って、常に目まぐるしく両性花と繁殖を司る分子システムの「破壊と再構築」を繰り返してきた。

 植物は自殖と他殖を巡り目まぐるしく作働因子を変化(破壊と構築)させるため、その中心をなす自他認識(雌雄認識)因子は進化が極めて速い。さらに、この速い進化は、自他もしくは雌雄の相互作用を規定する中心点にその痕跡が色濃く残されている。裏を返せば、こうした植物の生殖を巡る因子はゲノム情報からの進化予測やタンパク質相互作用・立体構造予測により、雌雄の要となる作働因子の「挑戦性の痕跡」を可視化する上で絶好の標的である。つまり、植物の生殖システムは大規模ゲノム・進化情報をベースとしたAI技術を含む様々な先端情報科学と生物学を融合するのに格好のフィールドである。こうした点から本領域では、先端情報技術を中心とした協働展開を通じて両性花に纏わる作働因子の進化的特徴や種を超えた大規模ゲノムデータの解読によって、「両性花」の成立とその可塑的動態が、植物の繁殖システムに多大な影響を与えたことを見いだしつつある。

 以上の点を踏まえ、本領域では、両性花を基軸とした植物の繁殖戦略の変遷全体を題材に、AI技術を中心とした先端情報技術基盤と、それと親和性の高い分子動力学シミュレーション、ゲノム進化学、構造生物学、有機合成化学的手法なども包括した学際融合を昇華させ、従来研究の枠組みを超えた「両性花を巡る多様な繁殖戦略と、その結果引き起こされる多彩な雌雄間でのせめぎ合いの動態原理」の解明を目指す。

② 公募する内容、公募研究への期待等

 本領域では、両性花システムの多様化を巡る多視点的ネットワークの相互連動を目指すため、課題間で研究項目を分けず、計画研究を組織している。公募研究に対しては、計画研究ではカバーできない「両性花の繁殖戦略」を統御し、変化し続ける作働因子の実態の解明、その分子実態解析の新技術開発などを目的とし、計画研究班・公募研究班相互の共同研究が実施でき、領域研究を補完しつつ、新規な研究展開ができる提案を期待している。多様な植物種を研究対象とした植物生理学、生化学、分子遺伝学、遺伝育種学に加え、構造生物学、分子細胞生物学、進化生態学、ゲノム・エピゲノム学、情報科学、構造システム学、分子動力学シミュレーション、有機合成化学などを融合した新興領域からの提案を歓迎する。公募研究班員が先端技術・解析手法を計画研究班員と同様に共有するために、異分野融合研究支援センター [情報技術 (AI技術) 統括コア、ゲノム・数理モデルコア、進化コア、構造イメージングコア、ケミカル・分子動力学コア、1細胞オミックス解析コア、ハイスループットゲノム編集コア] の積極的活用を促し、本センター活用を前提とした研究提案も歓迎する。本センター活用を通じ、計画研究班員との共同研究を促進し、センターが共同研究の仲介役になることで、領域融合型共同研究の推進を期待している。

 以上の点を踏まえ、本領域では計画研究との有機的連携による相乗効果を目指した合計15件程度の公募研究を採択し、「両性花の繁殖戦略」を巡る原理の探求、究明を推進する。具体的には、研究内容・研究環境を考慮し、2段階の研究費配分を計画した。内訳は、領域目標との高い関連性・実績、大きな研究発展が期待できる研究を5件程度採択し、7,000千円/年、予算配分する。また、若手研究者を含め、革新的でチャレンジングなテーマに対して4,500千円/年の予算配分で10件程度採択する。

令和4年度学術変革領域研究(A)‐公募研究募集要領(PDF)

A01:植物の挑戦的な繁殖適応戦略を駆動する両性花とその可塑性を支えるゲノム動態

7,000千円 5件
4,500千円 10件

キックオフミーティングの動画および質疑応答も合わせてご確認ください。