研究経過
【プレスリリース】植物花粉の急速な目覚めを支える巨大タンパク質の発見(藤井班)
December 5, 2024 10:00 AM
Category:プレスリリース, 論文発表
main:藤井班
当領域の計画研究班・東京大学大学院農学生命科学研究科の藤井壮太准教授(兼任サントリーSunRiSE研究者)および同所属のSurachat Tangpranomkorn特任研究員(当時)、高山誠司東京大学名誉教授と、東京家政学院大学現代生活学部の石綱史子准教授、中部大学応用生物学部の鈴木孝征教授による研究グループは、植物の花粉発芽の鍵となる分子を明らかにしました。
本研究ではホタルルシフェラーゼを応用しラボ独自に開発した花粉活性検出システム(図1左)を用いることで、花粉の機能に必要なVPS13aタンパク質を同定しました。植物では初めてVPS13分子種の詳細な機能が明らかになり、この研究成果は今後植物の生殖制御に役立つことが期待されます。
図1:植物の花粉と発芽において機能するVPS13
◆詳細はこちらをご覧ください>東京大学のHPへ
<発表論文>
雑誌 New Phytologist
題名 A land plant specific VPS13 mediates polarized vesicle trafficking in germinating pollen
著者 Surachat Tangpranomkorn, Yuka Kimura, Motoko Igarashi, Fumiko Ishizuna, Yoshinobu Kato, Takamasa Suzuki, Takuya Nagae, Sota Fujii*, Seiji Takayama*
DOI 10.1111/nph.20277
URL https://nph.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/nph.20277
【プレスリリース】ヒメツリガネゴケをモデルとしてメスの生殖器官発生を運命づける転写因子PpRKDの同定に成功(榊原班)
December 4, 2024 5:30 PM
Category:プレスリリース, 論文発表
main:榊原班
計画研究・榊原班の立教大学 養老瑛美子助教・鈴木誠也氏(修士課程学生)・秋吉信宏助教・榊原恵子教授、金沢大学 小藤累美子助教らの研究グループは、同じ個体の同一頂端にオスとメス両方の生殖器官を発生するヒメツリガネゴケにおいて、メスの発生運命を決定する転写因子PpRKDを同定しました。
植物には、同一個体にオスとメスの両方の生殖器官をつくる種が大多数存在します。それらの種は、生殖器官をつくる際に、オスとメスのどちらの生殖器官をつくるのかを制御しています。陸上植物が最初に進化させたオスとメスの生殖器官は、造精器と造卵器です。しかし、これらの発生運命がどのような因子によって制御され、オスとメスがつくり分けられているのかはいまだよく分かっていませんでした。コケ植物のヒメツリガネゴケは、茎葉体と呼ばれる茎葉構造の頂端に、先にオスの生殖器官(造精器)が発生し、後からメスの生殖器官(造卵器)が発生します。本研究グループは、ゲノム編集と相同組換えによる機能欠失変異株および誘導的発現株を作製し、発生初期の生殖器官の頂端細胞を共焦点顕微鏡で観察することで、メスの発生を運命づける転写因子PpRKDの同定に成功しました。PpRKD遺伝子が働かないと、メスの生殖器官がつくられず、オスの生殖器官でPpRKD遺伝子を働かせるとオスの生殖器官がメスへと性転換することが分かりました。
◆詳細はこちらをご覧ください>立教大学のHP
<発表論文>
雑誌 New Phytologist
題名 The transcription factor PpRKD evokes female developmental fate in the sexual reproductive organs of Physcomitrium patens
著者 Emiko Yoro*, Seiya Suzuki, Nobuhiro Akiyoshi, Rumiko Kofuji, Keiko Sakakibara*
*責任著者
DOI 10.1111/nph.20262
URL https://nph.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/nph.20262
本領域のメンバーが令和7年度 日本育種学会【奨励賞】を受賞しました(津田班)
December 4, 2024 10:00 AM
Category:受賞
main:津田班
公募研究班(津田班)の 津田 勝利 助教(国立遺伝学研究所)が令和7年度 日本育種学会「奨励賞」を受賞しました。
おめでとうございます!
【受賞題目】
「イネ科植物における茎形成機構の研究」
■ 詳しくはこちらをご覧ください。
なお、授賞式は令和7年(2025年)春に開催されます。
本領域メンバーが2025年度 日本植物生理学会奨励賞を受賞しました(藤井班・津田班)
December 3, 2024 9:57 AM
Category:受賞
main:津田班, 藤井班
本領域メンバー2名が「2025年度日本植物生理学会奨励賞」を受賞しました!
おめでとうございます!
【日本植物生理学会奨励賞】
藤井 壮太 (藤井班・東京大学 大学院農学生命科学研究科)
「植物の受精前障壁に関する分子機構の研究」
津田 勝利 (津田班・国⽴遺伝学研究所)
「茎の初期発⽣機構の研究」
■ 詳しくはこちらをご覧ください。
植物の遺伝子制御を「目で見える」形に:~新しい実験手法で植物研究の効率化に貢献~(元村班)
November 19, 2024 10:39 AM
Category:論文発表
main:元村班
公募研究班の立命館大学・元村一基研究グループは、植物の重要な遺伝子制御メカニズムである「RNAサイレンシング」を、簡単に評価できる実験手法を考案しました。この成果は2024年5月19日、国際学術誌「Plant Molecular Biology」に掲載されました。
研究のポイント
・植物の遺伝子制御の活性を「赤紫色素」で可視化・評価する手法を考案
・高価な実験機器を必要とせず、短時間で結果を確認可能
・生殖研究など、幅広い分野での活用に期待
研究の概要
RNAサイレンシングは、小さなRNA(small RNA)が特定の遺伝子の働きを抑制する仕組みで、植物生殖組織の発生や、両性花における生殖隔離現象など、様々な現象に関わっています。従来、この仕組みを調べるには、蛍光タンパク質(GFP)などを使用する必要があり、高価な顕微鏡や複雑な実験手順が必要でした。
元村らは、食品着色料としても使用される赤紫色の天然色素「ベタレイン」を作り出す遺伝子カセット"RUBY"を活用。これを使うことで、RNAサイレンシングの働きを「目で見える形」で簡単に評価できる手法の開発に成功しました。本手法は、肉眼で遺伝子抑制活性の程度が観察可能であり、蛍光顕微鏡などの機器が不要です。更に短時間での定量評価が低コストで実施可能であるという、多くのメリットを備えています。この新しい実験手法により、生殖メカニズムを含む植物の遺伝子制御研究がより効率的に進められることが期待されます。
本研究は国際的にも高く評価され、遺伝子研究ツールの提供プラットフォームAddgeneの20周年記念の一環として、科学誌「Nature」でも紹介されました。
https://www.nature.com/articles/d41586-024-03152-4
論文情報
タイトル:Straightforward and affordable agroinfiltration with RUBY accelerates RNA silencing research
著者:Tabara M, Matsumoto A, Kibayashi Y, Takeda A, Motomura K.
掲載誌:Plant Molecular Biology(2024年5月19日付)
DOI: 10.1007/s11103-024-01463-8
図. 本研究の概要
A) RUBYを用いた定量系の模式図。ベタレイン色素が溜まったエリアを破砕して吸光度を測ることでRUBY遺伝子カセットの発現量が定量できる。
B) RUBY遺伝子カセットと、invertet-repeat (IR)というRUBYの発現を抑制するDNAを同時に打ち込んだタバコ葉。
C) RUBY遺伝子を抑制しないIR-GFPに比べ、RUBY遺伝子を抑制するIR-GTやIR-CYPを同時に打ち込んだときは、ベタレイン色素由来の吸光度が大きく減少した。この吸光度はRUBY遺伝子発現量と強く相関した。
図はCC BY-NC-ND 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/) に基づき引用した。