東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

第15回:温室の効果はいかに...!〈カブの観察・計測〉(教:三浦 佳織)

2025年1月12日 (日)

こんにちは!

写真は、帰省した時に空の色がきれいだと思って車の中から撮りました。きれいな空とか月とか星空とかを見つけると写真に残したくなりますが、いざ撮ってみるとあまりきれいに映らなくて、結局肉眼で眺めるのが1番だなとよく思っています。

では本題へ~

今回からはカブ1本でお届けする予定です。

1.カブ(たにぷん)の成長

【播種から99日】1/12(日)16:08 気温5.4℃, 湿度63%

現在のカブの様子です。

胚軸肥大部の直径は、①が3.95cm、②が4.3cm、③が3.4㎝ になりました。

また、本葉の枚数は①が11枚、②が11枚、③が9枚になり、前回のカブの報告から①と②は1枚、③は2枚増えました。
IMG_7225.jpg
IMG_7228.jpg

写真からも分かる通り葉が込み合ってきていると感じるので、①・②より胚軸肥大部の成長が遅れている③は早めに収穫しようかと考えています。

胚軸肥大部の成長のグラフ化

【播種から87日】12/31~【播種から99日】1/12にかけての胚軸肥大部の成長をグラフ化しました。(方法はこの記事に書いた通り)
胚軸肥大部の成長②.png

【播種から88日】~【播種から92日】の間は帰省のため測定していません。

また、帰省中は不測の事態が心配で温室を使っておらず、【播種から94日】から再び使い始めました。

(③は9日間も直径に変化がないなど、私の計測が正確かどうかにはかなり自信がないのですが)一応②と③では、温室使用開始以降に着実な胚軸肥大部の成長を見て取れます。

2.温室の効果を検証!

ここで、2週間前に作成した温室には果たして効果があるのか、温室内外の気温を比較することで調べてみました。

※温室内の気温は下の写真にある時計 兼 温度計で測定し、温室外の気温はアメダスのデータから取ってきています。温室外の気温はベランダで測定していないため実際の気温とは多少異なると思いますが、仙台管区気象台と大きな気温差は無いのではないかと思い採用しました。

1/11(土)15:40:温室内 17.1℃, 温室外 6.0℃ 温室内は温室外より11.1℃気温が高い

1/12(日)15:57:温室内 13.8℃, 温室外 5.4℃ 温室内は温室外より8.4℃気温が高い

(両日とも、この測定をした時には日光が植物にあたっている時間でした)IMG_7209.jpg

1/11(土)の温室内17.1℃という数字はさすがに高いのではないかと思いましたが、2日間とも温室外より温室内のほうが気温が高いという結果が得られたので、「温室により温度を上げる」という目的は果たせていると考えました。

また追加で、湿度の上がり具合についても書いておこうと思います。(湿度に関しては1/12の分しかデータを取っていませんでした)

※これも上記の温度と同じように、温室内の湿度は写真の時計、温室外の湿度はアメダスのデータから取ってきています。

1/12(日)15:57:温室内 76%, 温室外 63% 温室内は温室外より13%湿度が高い

温室によるこれくらいの湿度の上昇は問題ないのでしょうか?

3.アルミホイル集光を実践!

温室作成をした際、オガタさんに「成長がゆっくりなのは、低温よりも日照不足から来ているかもしれません」とアドバイスを頂いたので、カブをさらに成長させるべくアルミホイル集光に挑戦することにしました。

材料は以下の通り↓

・段ボール箱

・アルミホイル

・両面テープ、セロハンテープ

そして、出来上がったものと実際にベランダに置いている様子がこちら!↓

(手前のビニールが温室です)IMG_7206 1.jpg

日光がアルミホイルにきちんと当たり、かつその光が反射して植物に当たるようなアルミホイル板の角度を探し、上の形に落ち着きました。

ただ、アルミホイル板の角度を調整できないため時間による日光の角度の変化には対応できないことが課題として残る制作になりました。今見つけたのですが、2018年度の阿部さんが強度を確保しながらアルミホイル板の角度を変えられる工作をしていました。もしこれを読んでいる未来の受講生がいたら参考にしてみてください。

ひとまず、これで植物に少しでも多く光が当たるようになるといいなと思っています。

それでは今回はこの辺で!

コメント

三浦さんこんにちは

 冒頭の写真は、実際の見た目そのままを伝えられなくとも、充分キレイですよ。そして、日暮れ時というのは何とも言えない色合いですよね。私はこの写真の色合いからやや陽が落ちて、紫に転じる頃の色が一番好みです。

 さあ今は寒くとも冬至を越えたので、一日一日日が長くなります。これは緯度によって異なるのですが、仙台あたりだと一日につき約一分ずつ日が長くなります。

 そういや日の長さは「気持ち的」にも関係しますが、学生にとって切実なのは「運転免許」ではないでしょうか。だいたいどこの教習学校も朝九時から夕方八時まで路上教習を行います。ということは......日が長い季節に受けると、暗い路上を走らなくて済みます。これ、なかなか違いますよ。老婆心までに。

 さてさて投稿の植物、先ずは生育を見てみます。葉の枚数も増えましたが、食用のカブ部が確実に大きくなってきましたね!

 とりあえず一株を収穫するというのもアリです。だいたい市販のコカブは直径5~6㎝のものが多いのですが、それより小さくとも充分コカブの味を楽しめると思います。この講義期間はもうじき終了、しかし残りの二株は市販品のようにしたいですね。せっかくきちんとした温室も整備しましたし......

 生育に話を戻し、グラフの上では一度停滞したが再び上昇してきたように見えます。これは気象や肥料のことではなく、やはり最大要因の「温室の効果」のように思えます。というか、これほど温室の効果が素直に出てくるのかと驚いています。

 そして温室内の温度をしっかり測定していてありがとうございます。この数字が非常に貴重な知見なのです。こちらとしても受講生が作製した「この大きさの」「この造りの」温室がどんな温度上昇の数字になるか、興味がありますし、貴重な情報になります。

 晴れの日(つまり日照エネルギー有り)、午後のこの時間で、10度程度も温度上昇するとは、温室として素晴らしいものです。

 湿度はこの程度なら問題ありません。あまり高いと病害の発生を招いたりしますし......そもそも植物は湿度が高すぎても低すぎても二酸化炭素を取り込み難いので、光合成を順調に行わせるには適湿というものがあります。ここでの63%はいいくらいに収まっているのではないでしょうか。ちなみに人間にとってもこのくらいの湿度がいいですね。

 さて温度上昇はこの日に限れば最適な感じです。過度の温度上昇を心配する人が多いのですが、カブにとって日中の20度程度が最適、何なら25度あっても大丈夫です。そして夜間に向けて0度まで急降下しても、平気な顔をしています。カブにとって大敵なのは夜間の高温、あるいは凍結による物理的障害の方です。

 さあ最後に日照確保のアルミホイル、もう背面だけではなく上部もしっかり作られて...... もはや実験用植物育成室のようです。これは仰る通り、次年度以降の受講生にとって役に立つ連載になりました!

 次回レギュラー投稿、そして最終報告もお待ちしています。

DSC_0087.JPG

 そういや宇都宮土産(自分用)に餃子君を買ってきてました! けっこう一個一個が微妙に表情違うんですよね。個人的にこれが最高でした。

ラボスタッフ・オガタ