平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

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植物新種誕生原理植物新種誕生原理

Nagoya University Live Imaging Center

研究経過

日本植物学会第80回大会シンポジウムにて講演(辻グループ)

September 16, 2016 2:26 PM

Category:招待講演

main:辻班

沖縄で開催された植物学会のシンポジウム「多様な植物現象を理解するためのイメージング:細胞内構造から環境応答まで」にて、メリステムの精緻な反応にイメージングから迫った研究についてお話します。

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フロリゲンが植物に環境の記憶を刻みこむ過程のイメージング

 フロリゲンは長距離移動性の花成誘導因子であり、その正体はFTタンパク質である。花芽形成に適した環境の葉で合成され、茎頂メリステムまで輸送されて機能する。ここで興味深いのが、フロリゲンの合成量と花成の関係である。フロリゲンは葉において毎日合成され、その総量は直線的に増加していく。一方で、フロリゲンの機能の場であるメリステムは、栄養成長か生殖成長かの二つの状態しか取り得ない。したがって植物には、日々増加するフロリゲン総量を記憶・積算し、閾値を越えたらメリステムで花成を開始させる、未知の環境記憶メカニズムが存在すると考えられる。この分子実体を解明するため、遺伝子発現の解析とイメージングを組み合わせた実験を行った。

 はじめにイネの茎頂メリステムは何日分のフロリゲンの合成を必要とするのか調査した。その結果、イネの花成には34日分のフロリゲン合成が必要であることがわかった。この時期の茎頂におけるフロリゲンの分布を独自のフロリゲンの生体イメージング、及び超解像度イメージングで観察したところ、フロリゲンの分布パターンがフロリゲン合成日数の記録、つまり環境の記憶となることを示唆する結果を得た。

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