平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

植物新種誕生原理植物新種誕生原理

Nagoya University Live Imaging Center

研究経過

【プレスリリース】植物の花粉は受精しなくても種子を大きくできることを発見しました。(東山グループ)

December 5, 2016 1:58 PM

Category:研究成果

main:東山班

名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 笠原 竜四郎 研究員、東山哲也 教授らのグループは、雄しべの花粉管の内容物(花粉管内にある液体)が、雌しべの中にある胚珠で放出されると、受精しなくても、種子を大きくする機能を持つことを発見しました。

 

胚珠の中にある卵細胞のもとへ精細胞を運ぶために、花粉は花粉管という輸送器官を伸ばします。この花粉管の内容物は機能を持たないと考えられていました。笠原研究者らは花粉管内容物に注目し、受精に失敗しても、胚珠の中で花粉管内容物を放出するシロイヌナズナの変異体を用いて交配実験を行いました。その結果、花粉管内容物が放出された胚珠は、受精していなくても細胞分裂し、種子を肥大させることを発見しました。それだけではなく、種皮や胚乳も形成することが分かり、「胚珠は受精しなければ肥大することはない」という植物界の常識を覆しました。

 

植物の生殖は花粉が雌しべに付着する受粉から始まり、花粉管誘引を経て受精に至ります。本研究は、花粉管誘引と受精の間で、花粉管内容物が作用する段階が存在することを明示する重要な発見となりました。人類が穀物を収穫して食用とするのは、主に種子の胚乳です。イネ、トウモロコシ、コムギの種子の大部分は胚乳でできています。本研究で明らかになった花粉管内容物の機能を解明し、作物に応用する技術が開発されれば、受精せずとも胚乳を形成する穀物を生産できる可能性があります。開花期に台風、高温などの悪天候や異常気象が起きる条件下では受精が高確率で失敗するので、作物の生産に甚大な被害をもたらしますが、受精に頼らないで胚乳を形成できれば、気象に左右されない穀物生産が可能になります。

 

本研究成果は、米国オンライン科学誌「Science Advances」に掲載されました。

 

プレスリリースの詳細はこちらをご覧ください。