平成28年度文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

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研究経過

アブラナ科植物の「新たな生殖障壁」のメカニズム解明に関する研究成果がNature Plantsに掲載されました(6/28)

June 28, 2017 9:20 AM

main:渡辺班

sub:高山班, 瀬々班

 異なる地域に由来するアブラナに生じた新たな生殖障壁の仕組みを明らかにした論文Nature Plants誌に掲載されました。また、同誌のNews and Viewsにおいても、この論文の解説記事が掲載され、注目論文としての評価を頂きました。

 アブラナ科植物には柱頭・花粉間識別システムとして知られている自家不和合性があり、その自他認識はリガンド・レセプター型の「鍵と鍵穴」が担っていることが知られております(Watanabe et al. 2012)。一方で、受粉反応では自他認識以外にも、他者(他種)の識別機構の存在が知られており、古くから研究がなされてきました。今回の論文は、アブラナ科植物において他者を認識する新規な「鍵と鍵穴」を単離し、その機能証明をしたものです。

test-1.jpg 渡辺班(渡辺、鈴木、諏訪部)は、以前から、高田らを中心として、アブラナ科植物(Brassica rapa)のトルコ由来と日本由来の植物間で、一側性不和合性を引き起こす組合せの個体の存在を見出し(Takada et al. 2005)、さらには、この現象が自家不和合性とも密接にかかわることを遺伝学的に明らかにしてきました(Takada et al. 2013)。この論文では、原因遺伝子として柱頭側SUI1, 花粉側PUI1という2つを同定しました。SUI1, PUI1はアブラナ科自家不和合性の自他認識因子SRK, SP11/SCRのそれぞれパラログであると考えられました。また、解析したすべてのトルコ由来系統ではSUI1が機能を失っており、逆にすべての日本由来系統においてはPUI1が機能を失っておりました。つまり、自他認識にかかわる「鍵と鍵穴」の遺伝子重複と相互の機能喪失が、結果として他者を認識する新たな不和合性現象を生み出したことになります。

 今回見出した組合せの植物はいずれも同一種B. rapaであり、残念ながらこの結果を持って、アブラナ科植物種間の受粉時の生殖障壁機構を説明できるものではありません。しかしながら、古くから受粉時の種間不和合性と自家不和合性には関連があることが報告されていること、SRKSP11はゲノム中に多数の相同遺伝子が存在することが明らかになっていることなどから、SRK・SP11の遺伝子重複が生殖障壁形成に関係があるかどうか、非常に興味深いものであります。今後、本研究領域の最先端技術と融合した共同研究によって、これらを明らかにしていきたいと思います。

DSCN2758.JPG なお、本研究は高山班、清水・瀬々班、並びに忠南大学(韓国)との国際共同研究として行われました。渡辺研の研究室HPに関連記事があります。あわせてご覧ください。


<発表論文>
Takada, Y., Murase, K., Shimosato-Asano, H., Sato, T., Nakanishi, H., Suwabe, K., Shimizu, K. K., Lim, Y. P., Takayama, S., Suzuki, G., and Watanabe, M. (2017) Duplicated pollen-pistil recognition loci control intraspecific unilateral incompatibility in Brassica rapa. Nature Plants 3: 17096.

Nature Plantsの7月号として、編纂されることが予定されております。綴られましたら、また、改めて、お知らせします。

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