東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

【出前講義】平成28年みやぎ県民大学「植物の品種改良~毎日の食卓を見る眼が変わる~」(8/26, 29追記)

2016年8月28日 (日)

 台風が近いからか、天候が安定しません。台風10号が来週には、仙台に近づくと。これで、3つ目。被害が出ないように。。。というか、今度はガラス室などの管理をしないと。何とか、3つ目の台風が通過したら、秋風が吹いてくれるのでは。。。というか、まだ、イネの登熟には少し早いのはありますが、作柄に影響が出ないことを。。。

20160828104256-b3bb7a5238f06d9025f5e5b487fbe6f4256e432b.JPG そんなちょっと不安定な天候の8月最後の金曜日は、3年目となった「みやぎ県民大学」。「地球にやさしいエネルギーと環境・省エネルギー技術~太陽電池・半導体・超伝導・植物の品種改良~」。半導体はトランジスタからLEDまで、渡辺の子供の頃から電気工作などには不可欠なもの。また、低温室での植物育成には、赤、青のLEDを使っています。太陽電池は、今ではあちこちの屋根の上に見ることができ、超伝導は、JR東海が東京-大阪間にリニア新幹線を開通させるには、不可欠な。。。そんな先端技術のオンパレードの講義が8/23-25に。4日目が、そんな堅いもの系の話から少し外れた「植物の品種改良」。先端技術での地球環境への貢献もあるか知れないですが、植物の品種改良も地球環境に優しい農業を実現するためには、重要な技術。。。と言うわけで、少しheteroな組合せですが、3年目となり、ほぼ、定着したような。。。

20160828104344-ea86d0ba05c1c9c70a977f61fc075fd7e67f5728.JPG20160828104423-0a1326ee38581f10c2647aa1aadc326c3ad4426a.JPG 自己紹介のあと、植物が酸素を作り出していると。。。これに対しては、最後の質問のところで、酸素を作り出す植物が地球上に登場したので、大型動物が進化したのではと。。。鋭い質問が。。。毎年、聴講生の方々には、恐れ入ります。ということを感じます。また、「花」が1つのお題でもあるので、作物の花の写真を10あまり並べて聞いて見るわけですが、これも、難しいものから、答えが出る。。。これも最後の質問のところでわかったのですが、専業農家の方も参加されていて。。。観察力が作物の栽培には不可欠ですから、。。意識の高さと観察力には、今年も感動でした。また、地球温暖化の影響。もちろん、人間の影響が大きいのですが、いろいろな側面から、注視する必要があると。。。先日のNatureに記事があったことを、あわせて、ご紹介をしたり。

20160828104455-26b762ee987c2a4612fb4e20e406f9317ab36e6c.JPG20160828104521-3c9cab8da274efa74c2963a88a9176a498c8b443.JPG 環境に優しいというか、省エネ、コストパフォーマンスを上げるためには、いかに減収を防ぐかが勝負。植物も動物と同じようにストレスを受ける訳で、減収に大きく影響するのは、開花、結実の時期。昨今はずいぶんと夏の暑さが強調されますが、1993年の大冷害では、イネの品種がササニシキからひとめぼれに入れ替わると言うことも。また、効率よい収穫のためには、一定の時期に全てを収穫できること、つまり、そろいがよいと言うこと。そのために、播種する種子に均一性があること。自殖性、他殖性で違いはありますが、今の育種手法は、F1雑種育種。固定した両親を確保して、その組合せで、雑種強勢も期待しながら、そろいをよくする。もちろん、どの組合せがよいのかを、50-100通り、調べる訳なので。。。また、このF1雑種育種によってできた種子を区別するためには、◎△□交配というものを探すこと。もちろん、作目によってはないものもありますが。。。少し種子にかけるコストはかかるかも知れないですが、できあがりの農作物はよいものができますから。

20160828104737-a75978a2c27d19166b8b6ec2b4aa3920be2550d0.JPG20160828105118-0dde84e50b1754be7513d8ac7112b0cda2208a09.JPG 講義では話し忘れたのですが、こうしたコストを下げるために、種苗会社が品種改良をしている訳で、また、農家の方々の日々の栽培に関わる努力を考えると、今の野菜、果物の値段が適切なのか。。。微妙なところです。工業製品と比較することが単純ではないですが。。。もうすこし農家の方々に収益があってもと。。。もちろん、いろいろな考え方はあるかも知れないですが。。。実際に農作物を栽培してみれば、わかるのでは。

20160829131430-4c10c1fa47a5ff34a44912e067c4c6c1282cb9a3.JPG20160828105408-e3bbe6d2eb2d4169aed6fa7b3d3f74c3ecdfba64.JPG 講義の最後の所はこのF1雑種育種を支える技術としての「自家不和合性」。鍵と鍵穴によって、花粉と雌しべがコミュニケーションをすることによって、自己花粉を排除して、非自己花粉で受精する。これにより、効率的な採種ができると言うこと。また、植物も賢いというか、考えているというか。そんなことを考えれば、植物の不思議をさらに理解することで、環境に優しく、高コストパフォーマンスの農業が実現できるだろうと。。。講義をしている感じから、ほとんどの方が、植物、作物にかなりの興味があるのではと。また、最後の質問コーナーでも、遺伝子組み換え作物の功罪、食害を受けた農作物と農薬処理をした作物のどちらがよいか。。。あまり知られてないことかも知れないですが、植物も病虫害に抵抗するためにいろいろな工夫をしていて、「ファイトアレキシン」という二次代謝産物を生産して、抵抗していると。害虫への影響の程度、分解性など、通常の農薬のと比較をしたら、一概に、虫も食べない、農作もがよいというのもどうかと。。。この教えは、渡辺が学生の時に植物病理学を教えていただいた江原教授からのものなのですが。。。今回も講義時間が1.5hr、質疑が0.5hrという長丁場になりましたが、植物を通じた環境への低負荷社会の実現ができることを実感いただき、植物による潤いのある生活を楽しんでいただければと。ありがとうございました。

20160828105439-d5609b00b0ce0297c8811f95f9577d8615cd7fef.JPG 最後になりましたが、こうしたアウトリーチ活動の場を提供頂きました、金属材料研究所の松岡先生をはじめ、関係の皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。また、次年度も誘って頂ければ幸いです。ありがとうございました。


 わたなべしるす

 PS. 講義が終わったあと、最初に紹介した「朝は朝星、夜は夜星、昼は梅干し」という言葉(渡辺が学部生の講義で、植物育種学の日向教授から教えていただいた言葉ですが。。。)のように、お天道様がでたら、外で働き、日が暮れたら帰るという、そんな昔のような生活というのも、どこかで考えることが大事なのではという方。また、自家不和合性の動画を見て「植物の方が動物よりも賢いのでは。。」と言う方も。ありがたいことというか、これからの人間のあり方を考えさせてくれる方々でした。ありがとうございました。

20160828105510-13399cdd643f8d85214ece08168cfa0507f5a299.JPG PS.のPS. 8/29(月), 13:20. 当日の運営などを担当頂いた金属材料研究所の事務の方から、写真を頂きました。ありがとうございました。また、金研のHPを拝見していたら、統括頂いた松岡先生の「日本結晶成長学会 第11回業績賞・赤﨑勇賞」、受賞のお知らせが。おめでとうございます。今後ともよろしくお願いします。




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