【研究成果】野生から栽培種へ~フラボノイド代謝経路の切り替えから読み解く大豆の進化と色彩の科学
2026年6月26日 (金)
誰もが一度は見たことがある、お馴染みの「大豆」。じつは黄色や黒、緑だけでなく、赤茶色など、びっくりするほどたくさんの色のバリエーションがあるのをご存知ですか?こうした色の違いは、大豆に蓄積する「フラボノイド」という色素成分の種類が異なることで生まれます。
東北大学大学院生命科学研究科の渡辺正夫教授(渡辺研究室)や農学研究科の小島創一助教、そして福島大学などの共同研究グループは、この多様な色彩が生まれる見事な遺伝子のメカニズムを世界で初めて明らかにしました。
研究チームは、なんと333品種にも及ぶ大豆のゲノム情報を徹底的に解析しました。その結果、大豆の色はバラバラに決まるのではなく、色素合成に関わる「4つの主要な遺伝子」がまるでパレットのように複雑に組み合わさることでコントロールされていることが分かったのです。さらに大豆は、「豆」だけでなく「花」や「さや」といったパーツごとに色素を作るルートを上手に切り替えていることも判明しました。
なかでも大きな大発見だったのが、これまで謎に包まれていた「赤色(赤茶色)の大豆」が生まれる仕組みです。詳しく調べたところ、この赤さはイチゴなどにも含まれる「ペラルゴニジン-3-グルコシド」というアントシアニンの一種であることが突き止められました。しかも面白いことに、この赤色は遺伝子が新しく加わってできるのではなく、2つの遺伝子の機能があえて「失われる」という偶然の組み合わせによって、隠されていた赤色のルートが目覚めることで現れる奇跡的な仕組みだったのです。
大昔の野生の大豆はもともと黒っぽい色をしていましたが、私たち人間が育てやすいように品種改良(栽培化)を重ねる中で、黄色や白といった明るい色へと変化してきました。環境によっては黄色い大豆にうっすらと色が出てしまうこともありますが、現代の優れた品種では複数の遺伝子の機能をあえて失わせることで、色素の合成をより確実に抑え、外観の美しさを安定させていることも今回の研究で分かりました。これは、より見た目の良い大豆を安定して届けたいという、昔の育種家たちの試行錯誤の歴史そのものです。
今回の研究によって大豆の色素合成メカニズムが明確になったことで、今後はこれまでにないユニークな色を持つ新品種の開発や、より品質の安定した大豆の生産につながることが期待されています。
東北大学からプレスリリースも出ています。併せて、ご覧になってみてください。
スズキ

