東北大学・探求型「科学者の卵養成講座」(グローバルサイエンスキャンパス協定事業))

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2016.12.26

【お知らせ】本講座開講以来の受講生との約束、達成・その3(生命科学・渡辺, 12/26)

 遺伝の渡辺でございます。この講座が始まって、今年度で8年目が終わろうとしています。毎年、1回は「キャリア教育」の講義を行います。このところは、渡辺が担当していますが、はじめの頃は、2回だった時期も。他の色々なイベントが入る関係で、たぶん、開始から3年目当たりから、1回に。時間のある受講生の方。古い記事をめくってみたら、その歴史などもわかるかと。

 そのキャリア教育自家不和合性のいずれの講義でも、世界トップクラスの研究を行うと言うことを話してきました。富士山には登ったことがないですが、頂上に行ってはじめて、周りの風景を展望できたり。。。。というように、頂上を目指すからこそ、サイエンスは楽しいわけです。そんなで、受講生の皆さんと、Nature, Scienceというtop journalに10回、論文を掲載(sister journalも含む)するという約束をしてきたわけです、現役引退までに。ちょうど、本講座が始まった翌年度の2010年に「ダーウィン」「メンデル」が鍵となる論文をNatureに掲載し、このHPに記事を書きました。ここまでで、都合、6回の掲載でした。

20161226170424-fcdbb151acee1db03b6994e64f951227449f6454.jpg 今回、Natureには届きませんでした、その姉妹紙である「Nature Plants」に論文を掲載することができました。メンデルの遺伝の法則には、優性の法則というのがあります。いまは、遺伝学の基礎の部分は、中学校で習うとか。。。教科書を見たことがないので。。。優性の対立遺伝子を一般的に大文字で、劣性の対立遺伝子を小文字で表記します。Aという遺伝子を仮定したときに、Aは、優性の対立遺伝子。aは、劣性の対立遺伝子。優性とか、劣性とか言うので、よい、悪いと思われがちですが、そうではなくて、Aaというヘテロ個体になったときに、どちらの対立遺伝子が表現型として現れるかと言うことになります。一般的には、優性の対立遺伝子は機能するタンパク質をコードしており、劣性の対立遺伝子は、その遺伝子部分が欠失、あるいは、機能できない、壊れたタンパク質をコードしていることが普通です。

 そんな優劣性ではなくて、ちょっと変わった優劣性があることを示したのが、2010年のNatureに掲載した論文でした。自家不和合性の講義でも説明したように、対立遺伝子は、40-100くらいの複対立遺伝子系になっています。つまり、単純な遺伝子が機能している、壊れていると言うことではないわけです。自家不和合性の優劣性の場合。例えば、S1がS2に対して優性という場合(S1>S2)、S1S2のヘテロ個体からできる花粉の表現型が全てS1になると言うことです。S2ホモ個体になっても、きちんと自家不和合性を示し、壊れているわけではありません。ヘテロ個体になったときに、S2が何かの仕掛けで隠れる、と言うことになります。2010年にNatureに論文を掲載したとき、優性の対立遺伝子に低分子RNAという遺伝子の発現調節を行っている分子がコードされており、優性対立遺伝子由来の低分子RNAが劣性対立遺伝子の発現調節領域をメチル化することで、劣性化すると言うことを発見したのでした。

20161226170454-1a05068020bb93bed68da8d3f894bb9b6b72d2f2.jpg ところが、40以上も対立遺伝子があることから、もっと複雑な優劣性が存在しています。実際には、S44>S60>S40>S29という直線的な優劣性が存在するわけです。S44, S29は、先ほどのように考えれば、よいですが、S60, S40という対立遺伝子は、ヘテロ個体になるときの組合せが、どの対立遺伝子になるかによって、優性になったり、劣性になったりという複雑な変化ができるわけです。一般の優劣性発現では、こんなことはありません。今回の論文では、この優性、劣性に変化する分子機構は、どうなっているかを明らかにしたものです。仕掛けは実に巧妙で、上位にある対立遺伝子由来の低分子RNAが下位の対立遺伝子の発現調節領域との相同性程度により、抑制機能が発動するというようになっていました。文章で書いても難しいので、大学のtop page研究科のtop pageにプレスリリースを行っていますので、そのモデル図を見ながら、考えて見て下さい。あと、渡辺のHPにも記事を記していますので。あわせて、ご覧下さい。

20161226170512-5e92f67201baaece5817eed9c6eb996591f79b17.jpg と言うわけで、受講生との約束も最低限であと3報。若者に負けないように、気合いと根性で、がんばると言うことで。。。また、1月にお目にかかりましょう。


 わたなべしるす





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