東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

News Release

【研究成果】対立遺伝子の組合せで優劣性が変化する分子メカニズムは低分子RNAで制御、世界初で証明、英国・科学雑誌「Nature Plants」(12/23, 1/8, 30追記)

2016年12月24日 (土)

 昨日から今日にかけて、温暖前線、寒冷前線が通過したのでしょうか。昨日、22日は不思議なくらい暖かい1日。一転、今日の天皇誕生日の23日、祝日は気温は夜中から下がる一方。。。今日くらいの方が、冬らしいと言うか、冬至を過ぎた天候としては普通なのですが。。。アブラナを使った秋の最後の実験には、少し寒いですし、一方で、来春用の材料に春化処理をするためには、この気温が適温のような。。。

20161224205225-d510da2dd010e9b794eb1fe312b79cdc92057479.JPG さて、今年は研究成果として、宮崎大の稲葉先生とのザゼンソウの研究イネを材料にした低分子RNAと耐冷性の研究統合databaseを用いた標準化遺伝子の研究を、これまで発表してきました。年末になったこの時期に、また、新しい研究成果を発表できるのは、望外の喜びです。今回は、メインの研究であるアブラナ科植物の自家不和合性について。アブラナ科植物の自家不和合性は、胞子体的に機能するS複対立遺伝子系で、遺伝学的に説明されています。胞子体的に機能することで、ヘテロ個体においては、S対立遺伝子間に優劣性が生じます(Hatakeyama et al. 1998, Kakizaki et al. 2003)。2010年にclass Iとclass IIの間での花粉側の優劣性を制御しているのが、SMIという低分子RNAをコードした遺伝子であり、優性を示すclass IのS対立遺伝子(SP11)を有する系統には、このSMIが存在し、これが劣性のSP11の発現を抑制していることを示しました(Tarutani et al. 2010)。

 しかしながら、このS対立遺伝子間の優劣性は、さらに複雑で、不思議な現象を示していました。つまり、S44>S60>S40>S29という直線的な優劣性関係がS対立遺伝子間に見られます。S44対立遺伝子は、残りの3つの対立遺伝子に対して、優性を示しますが、S60, S40というのは、どの対立遺伝子とヘテロ個体を作るかによって、優性にも、劣性にもなることができる。きわめて、不可思議な現象を示していることになります。この現象を説明するために、上記4つのS対立遺伝子のSP11/SRK領域を解析したところ、class Iが優性を示すSMIとは異なる領域にSMI2と呼べるSP11のプロモーターに対して、相同性がある領域を見つけ出し、このSMI2がプロモーターとの相同性程度にあわせて、遺伝子発現を抑制し、結果として、上記の複雑な優劣性を制御していることを明らかにしました。このことは、英国・科学雑誌「Nature」の植物専門オンライン姉妹誌「Nature Plants」に掲載されました(日本時間:平成28年12月23日(金) 午前1時, Yasuda et al. (2016) A complex dominance hierarchy is controlled by polymorphism of small RNAs and their targets. Nature Plants 3: 16206.)。

20161224205148-cfc04c2c4bb3f741a26763b4ffe9ac300348daf3.JPG 今回の研究は、奈良先端大、農研機構、大阪教育大、神戸大、東京大との共同研究の共同研究であり、多くの方々の共同研究のもと、メンデルが唱えた「優性の法則」に、新たな一面を書き記すことができたのではないかと思います。このような分子メカニズムで、優劣性を制御することを汎用的に利用できれば、作物の品種改良が新たな側面から展開できるのではないかと思っております。


 わたなべしるす

 PS. News and Viewsにこの論文の内容の解説とする記事をいつも研究の競争相手であるトロント大学のProf. D. Goringが書いてくれていたのは、感動でした。

 PS.のPS. 奈良先端大では、共著の和田先生と安田君がプレス発表を。東北大からもプレスリリースを。そのこともあり、日本工業新聞日本農業新聞NHK関西 NEWS WEB読売テレビ等に、取り上げていただきました。ありがとうございました。

 PS.のPS.のPS. 1日前かも知れないですが、昆虫の擬態がずいぶん古い時代からだと。。。なるほどと。。身近な話では、雨宮キャンパスが青葉山に行くのに対して、片平の近くにキャンパスを集めるというのも。。。集めるという点では、同じかも知れないが。。。

20161224205305-167b119951625c43a8a8b4591591118a888aafba.JPG PS.のPS.のPS.のPS. 1/8(日) 12:35. 12/23(金)の発表は、AOPとしての公開でしたが、2017年1月号に綴じられたと言うことが、HPに。また、表紙として、この論文の材料であるアブラナ科植物の花が取り上げられました。

 PS.のPS.のPS.のPS.のPS. 1/30(月) 18:15. 1/8(日)に、Nature Plantsの2017年1月号に綴られたと言うことを記しましたが、Nature Japanの日本語HPにも。簡単な説明だけですが、。。あと、お知らせしたと思っていたのですが、大学のtop page研究科のtop pageにも記事があったのでした。いずれも、今では過去記事としてしか、見えないですが。。。やっぱり、物事は、タイミングですね。









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