東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

アルファルファと虹いろ菜 【中間発表】 (素人2号)

2015年11月18日 (水)

20151118140837-41fb3fed31217bbb3ee3663fd1b3e1613161db9c.jpgどうもこんにちは。素人二号です。今回は中間発表をさせていただきます。もしまだ、中間発表について聞いていないという受講生の人はこちらに詳しく書いてありますのでリンクを参照してください。

20151118141426-06e5cbd41e17334dce799b6a9707170acc1f9d5a.jpg今回は、すでに収穫の終えたアルファルファの栽培を振り返るとともに、未だに生育を続けるフダンソウについて、前回の報告までの期間と未発表だった【後半】をまとめて記事にしました。


アルファルファ/ムラサキウマゴヤシ マメ科 (Medicago sativa L.)

【動機】今回私がアルファルファを選択しましたのは、店頭でよく見かけるもやしやカイワレ、また、昨年栽培したことのある豆苗とは異なり珍しい印象があったためです。そこで、どのような生育をするのか今回の実習でぜひとも見てみようと思いました。

【栽培方針】暗室栽培で徒長させた後、緑化させるという栽培法はほかのスプラウトに共通するものでありましたが、培地を使わないという点ではもやしに類似しています。生育に適した22~23度を維持し、通気を保ちながら栽培をしました。前半は全暗、後半は8h±で照明下に置きました。給水後は腐敗防止のため毎日、朝夕の洗浄を行いました。

【経過】吸水させてから収穫までの一連の経過と写真で紹介してゆきます。内容が重複してしまうため、ここでは詳解しません。詳細は前回までの記事 アルファルファの報告【前半】アルファルファの報告【後半】を参照してください。


20151118141939-2f768f08b6ad8dd1967a18b66400d7ec485a3cf4.jpg 20151118142039-b913d6de86cfdbfbc12a57c47dbdb9160150063d.jpg 20151118142606-f49ccabc0e8ea1307382f49931368005041a9a0b.jpg

左から図A-1、図A-2、図A-3

図A-1:2015/10/11(1日目)/室温23℃/不稔種子の洗浄・吸水開始

図A-2:2015/10/12(2日目)/室温22℃/吸水完了ここからは毎日朝夕の水洗いの繰り返し。

図A-3:2015/10/14(4日目)/室温23℃/ほとんどの種子が発芽

  20151118143445-008090abdc5b7f09210ffea0c0c21ca6b7585439.jpg 20151118143537-abe32621cd0ff811aea8281c60e4dbc6eed0bda4.jpg 20151118143629-58fd0481bfd2352abf4c99c3537f09b24e378436.jpg

左から図A-4、図A-5、図A-6

図A-4:2015/10/15(5日目)/室温22℃/多くの種子の子葉が展開

図A-5:2015/10/17(7日目)/室温21℃/緑化開始

図A-6:2015/10/19(9日目)/室温23℃/緑化継続

20151118143728-fa5eb4283e4ac93b947b573f732cdc3670b33cae.jpg 20151118143824-1a22eab3d4c5a6e25a6b703c82d7bef6417a1340.jpg 

図A-7.1、図A-7.2

図A-7.1:2015/10/20(10日目)/収穫

図A-7.2:/調理

【考察】アルファルファは、同じマメ科のもやしと形態が似ていることが分かりました。すなわち、可食部のほとんどが胚軸であること、種皮が取れ、子葉が出ること、培地を用いずに栽培し根までが可食部となることなど。食味は前回の記事にも書いた通り、水菜のような食感と無味が特徴でした。言い換えればあっさりしていて食べやすいということです。栄養も豊富であるため、サラダの具材としてもっと普及して然るべきだと思いました。


虹いろ菜/フダンソウ/スイスチャード ヒユ科(アカザ科) (Beta vulgaris var. cicla (L.) K.Koch)

【動機】今回私が虹いろ菜(いろいろな呼称があるが以下虹いろ菜で統一)を選択しましたのは、この今回初めて栽培するこの野菜がどのような生態・形態を示し、食味がどのようなものであるかを確認するためです。名前が示すように様々な色の茎を持つという、1作物種でありながら目に見えて明らかな多様性を持っているということにも興味を持ちました。

【栽培方針】このゼミの方針に従って、はじめは吸水させた状態で発芽の様子を確認し、その後、5号鉢に一般的な草花培養土を用いて植えつけました。11月上旬までは屋外で栽培し、その後室内の窓際に移動しました。現在も栽培経過中ですが植物体の成長に合わせて適宜、間引きと追肥を行い、最終的に1鉢4本ほどにして収穫を行う予定です。間引き菜は有効活用しました。

【経過】給水させてから現在までの経過を見てゆきます。種子の観察から種子の発芽までの観察結果の詳細は前回の記事で紹介したのでふだんそう(スイスチャード/虹色菜)の報告 【前半】(素人2号)を参照してください。

20151118143925-9657491423b359d3074dbb9b27aeb160a232e04b.jpg

図B-1

図B-1:2015/10/11(1日目)/室温23℃/種子観察・吸水開始

20151118144058-4f914dd38018b6c321da768d62d8b1ffd39df498.jpg 20151118144116-fecf55eb39164d1387b85c037fd943cc8be43a66.jpg 20151118144138-5ec79b2a1709373577d9f8901183ce37b80805f8.jpg

左から図B-2(スケールバーは1㎜)、図B-3.1(スケールバーは1㎜)、図B-3.2

図B-2:2015/10/14(4日目)/室温23℃/発芽

図B-3.1:2015/10/17(7日目)/室温21℃/根が伸長・根毛が発生

図B-3.2:/定植・これより室外へ

ここからは未発表です。

20151118144404-eec1715d9a7068d78eb896519c81aa8305ab65a8.jpg

図B-4(スケールバーは1㎜)

図B-4:2015/10/18(8日目)/外気温平均16.9 ℃ 最高21.5 ℃ 最低13.6 ℃/種皮を被った子葉が地上に出てきました。草丈は8㎜ほど。胚軸色はどれも白色です。

20151118144700-0a017790c3ae0da530bb810459aa73f46b51f80f.jpg 20151118144728-37192fc57933523cf6da9d9bd26a25449a386a00.jpg

左から図B-5(スケールバーは1㎜)、図B-6

図B-5:2015/10/22(12日目) /外気温平均14.2 ℃ 最高19.8 ℃ 最低11.2 ℃/種皮も剥がれ、完全に子葉が展開しました。ここで気づいたのが胚軸の色について。黄色、赤、オレンジ色、ピンク色などいろいろな色があります。すでにこの時点で植物体の色に個性が見え始め、用いた種子には大きな多様性があったことがわかります。

図B-6:2015/10/27(17日間) /外気温平均12.6 ℃ 最高19.4 ℃ 最低 5.8℃/ 残っていた種子から発芽するものが相次ぎ、発芽に斉一性がないことがわかります。これはスプラウトなどに比べて顕著に表れている印象があります。

20151118144914-476bd60beac059f1285ce8a47ae4e3491165cfd1.jpg 20151118144949-4d93f6bbde754b74c697fefcea70202cbad55d83.jpg 20151118145110-6133a0fba009803009fab199fd346c4e01bea126.jpg 20151118145143-f6002d3ba9959a7e94fb108f0b09e8cb8a19cc09.jpg

左から図B-7.1(スケールバーは1㎜)、図B-7.2、図B-7.3、図B-7.4 

図B-7.1:2015/11/04(25日間)/ 外気温平均12.2 ℃ 最高18.1 ℃ 最低 6.8℃/今回最も大きかった黄色い胚軸を持つ株の草丈は5㎝に達しました。

図B-7.2:/全体的に子葉も大きく開き、株が込み合ってきました。胚軸も伸びて倒れやすくなってきました。

図B-7.3:/間引きを行いました。画像のように胚軸の色ごとに分けて並べてみました。赤、オレンジ、黄色、桃色など様々な胚軸色があります。

図B-7.4:/間引き菜もスプラウトとして食べられますので、料理に利用しました。画像は調理例です。

20151118145335-0acc3fff4bf067497f2f26c87458bd56ed39e561.jpg 20151118145355-8c82c1e4d30980944e6395b6c1fd8db8593bdf0c.jpg

左から図B-8.1、図B-8.2

図B-8.1:2015/11/12(33日目)/ 室温20℃/ 本葉も出始め、胚軸が長く伸び倒れやすくなってきたので土寄せをしました(画像は土寄せの直前)。またこの日を境に植木鉢を室内の窓際に取り込みました。

図B-8.2:/追肥として緩効性のIB肥料を与えました。

20151118145430-0f7d30da9b8377af5e15e999d8584fac3848c7be.jpg

図B-9

図B-9:2015/11/15(36日目)/現在の生育の様子。土寄せによって株元がしっかりとし、植物体も剛直になった様子です。

【考察】および【1.今回一番感心したこと】

今回一番面白かったのが、この植物の種内における形質の多様性であります。一般的に多くの作物は優れた形質が遺伝的に固定され、形態、食味、収穫時期などの均質性が保たれるように人間によって改良されてきました。なので、一つの作物の中で色が違ったり、大きさがまちまちだったりするものは排除されて徐々に多様性が失われるものです。しかし、今回栽培したこの虹いろ菜はそのばらつき、特に胚軸・葉脈色をむしろ彩りとして重用することで多様性を維持してきたと考えられます。(図B-7.3)実際、胚軸・葉脈色以外にも種子の発芽時期がかなりばらついたのもその名残と考えられます。もともとこの虹いろ菜、もといフダンソウという植物はビート(サトウダイコン)の一品種というか一変異ですので、ショ糖生産現場における品種はきっと高収量性の均質なものが採用されているはずですが、このようなマイナーな野菜として普及しているものは育種が盛んに行われないため、不均質ではありますが、むしろ私たちのようなアマチュアガーデナーにとっては見た目に面白いものとして定着しているのでしょう。


【2.印象的な投稿記事】 

 今回私のなかで個人的に印象に残った記事を選ばせていただきます。一つ目は、文:山田佳歩さんの29日目のハツカダイコンについての記事です。受講生の皆さんの「小学生の時以来、野菜の栽培なんかしていない」という言葉は基礎ゼミと展開ゼミ二回を通してほぼ合言葉のようになっているところですが、今回もその例外にもれず、ほぼ初めての栽培と言っても過言でないようですね。しかし、最初の投稿記事では「知らない」からこそ入念に調べ、リンクもたくさん付けてほかの人に配慮した見やすい記事の構成などされている事に感心いたしました。そして当該記事ですが、ハツカダイコンの子葉の開き方が変化することに注目しているという点に感心いたしました。このような小さな変化を見逃さないことが大きな発見への一歩になることと改めて考えることができました。

もう一つ感心いたしました記事は理:藤井和樹さんの【その3】アルファルファの栽培計画についておよび【その6】アルファルファの結果報告(前編)【その7】アルファルファの結果報告(後編)です。今までも実験にしてみようとする受講生の人は良く見ましたが、実験方法や考察のスタイルは個性が出るものですね。今回藤井さんが行ったようないくつかの条件を設定して比較してみるというのもなかなか面白いと思いました。そして調べた内容に基づいてある程度の予測を立て、結果を自分なりに考察してみるという一連の実験手順の基礎に沿った報告がなされているのは、見る者にとってとても分かりやすいと思いました。また、これは野菜ならではのスタイルですが味を比較しているのが面白いと思いました。大げさかもしれませんが、植物の味というのはすなわち植物の化学成分、すなわち植物組織の生理状態を即表すといえます。成分を調べる場合、抽出操作やクロマトグラフィー、分光光度計測などの様々な方法がありますが、実は最も身近で簡便な方法は舐めてみたり、食べてみたりすることですね。実験結果の考察に食味までを含めるというのはとても素晴らしいことだと思いました。

 みなさん、学部も様々でありながら、これだけの少ない材料から多くの植物学的、農学的な知見を得ているというのは観察眼の賜物といってよいでしょう。今後も皆さんの記事を楽しみにしています。と、同時に皆さんも積極的にほかの人の記事にコメントや質問などしてください。交流が広がるほど記事を書くのも観察をするのも楽しくなりますよ。

【3.参考になったコメントなど】

 自分自身の参考といいますか、ぜひともほかの受講生の皆さんに見て、参考にしていただきたいコメントが、石橋貴也さんの漸進の記事に対する渡辺教授のコメントであります。今回の展開ゼミにおいては野菜の成長を観察して、その中からいろいろなことを発見することが重要であるということは今までの多くの投稿記事とコメントなどから分かったと思います。では、その観察がいつから始まっているのかということを考えてみましょう。扱うのは植物でありますから、当然その種子の段階からですね。種子というのは植物の生育のスタート地点ですからある意味で最も重要といえます。ある作物がどのような種子をしており、どのような発芽の仕方をするのか、ほかの作物とどのように違うのかなどを調べるなどして考察してみることも重要です。今回の取り違えは私達が種子を配布した際に曖昧にしてしまったことが原因と反省しております。しかし、今後もし皆さんがまた栽培をする機会に恵まれましたら、ぜひ、種子をよく観察し調べてみてください。これは10月24日の私の投稿記事に対する渡辺教授のコメントも参考になるかと思いますので是非参照してみてください。ここでは、マメ科植物の分類と発芽の仕方について軽く触れています。詳しく知りたい方はぜひ「有胚乳種子 無胚乳種子」、「地上発芽 地下発芽」、「光発芽種子」、「ラン科 種子」などと調べてみてください。植物の種子が種によってさまざまな特徴を持っていることがご理解いただけるかと思われます。

【4.最終発表までの抱負】

 2013年度の前期の基礎ゼミから参加している私どもはおそらくこのなかでは最も古参であると自負していますが、今年度の展開ゼミまで一貫してこの講義名に「盆栽として」とありますのは、単純に畑が使えないからというわけではないと私は考えております。もちろん畑が使えれば作物の成長も植木鉢とは比較にならないでしょう。しかし、栽培初心者にとって、栽培の入り口として最も大切なものはこれまた小見出しにあるように「観察眼」であると考えております。つまりよく観察すること。身近に置けて観察しやすいのは畑より植木鉢でしょう。なので、今後も私はこの原則に従い、あくまで5号鉢で残るところの虹いろ菜を育てたいと思います。無論強制ではありませんけどね。みなさんに負けないよう私も精一杯小さな鉢でひしめき合う野菜を可愛がってやりたいと思います。それが観察するということだと思っております。

コメント

素人2号さん

遺伝の渡辺でございます。2つの作物について、学名に始まり、栽培の同期、方針、経過をまとめてあり、同じものを栽培している他の受講生の日々の栽培の刺激、参考なります。さすがメンターです。時系列で整理され、また、写真の大きさも見やすい大きさになっているのが、すばらしいです。

サトウダイコンは、いまでは、細胞質雄性不稔を使って、F1雑種育種がされていて、そろいはよいはずです。それに対して、こうしたフダンソウにまでそこまで経費をかけることができないので、そろいがよいとは言えない状態になるのでしょう。niceな考察です。

最後の所に書いてある、なぜ、植木鉢なのかというのは、こちらの講義の真意をストレートに伝えてくれていて、感動でした。3期連続で、参加してもらい、メンターをして、他の受講生に適切なコメントができる理由もよくわかりました。これからも楽しみにしております。

わたなべしるす

旧展開ゼミ