研究組織
公募研究班(R7-8)
転写後の遺伝子発現制御が司る花粉管の持続的伸長原理
花粉管は、胚珠への旅路で多様なシグナル分子に応答しながら成長制御を行う。これまで花粉管の伸長制御では、花粉管先端にある核での転写が重要な要素と考えられてきたが、代表者の研究から先端領域に核がなくとも長時間の伸長が可能であることが判明した。このことは花粉管伸長において、効率的なタンパク質翻訳システムがより本質的な役割を担っている可能性を示唆している。さらに、翻訳制御の重要性に加え、RNA代謝自体も花粉管機能に深く関わる。幾つかの植物では、両性花の自殖と他殖をRNA分解酵素が規定するなど、RNAは生殖戦略に多面的に影響している。しかし花粉管内部でのRNAの局在や翻訳制御の時空間的動態は未解明のままである。
本公募班では、これまでの研究で明らかになった花粉管内部のRNA動態に関する知見をさらに発展させる。「花粉管の未知なる効率的翻訳現象」の分子メカニズム解明を目的に、細胞空間的アプローチによる翻訳効率解析、様々な「場」とRNAのダイナミクス観察、翻訳依存的な花粉管伸長機構の解析を時空間レベルで遂行する。従来の細胞生物学に加え、RNAイメージングや空間オミクス解析など多角的な解析技術の確立にも取り組む。これらの時空間的アプローチを通じて「転写非依存的な持続的先端成長」現象の理解を深め、花粉管の類まれな先端成長制御能力の動力源を解明する。得られる翻訳制御機構の知見は、花粉管の先端成長能力の分子機構解明に迫るとともに、両性花の生殖戦略を含む植物生殖研究の新たな展開を拓くことが期待される。
メンバーリスト
- 元村 一基
- 立命館大学 総合科学技術研究機構