研究経過

ケシ科植物の自家不和合性に関する解説記事が掲載されました

September 27, 2022 3:10 PM

Category:論文発表

main:藤井班

計画研究班の藤井(東京大学)が、ケシ科植物の自家不和合性のメカニズムについて解説した記事がCurrent Biology誌に掲載されました。

植物の半数以上は、雌しべにおいて自分と他の個体の花粉を見分けるしくみをもっており、自家不和合性と総称されています。自家不和合性には様々なタイプの分子メカニズムがありますが、ケシ科植物は雌しべからPrsSと呼ばれるペプチドを分泌して、花粉でPrpSと呼ばれる受容体タンパク質で感知するしくみをもっています。このPrsSとPrpSが自己に由来するものであれば、相互作用します。そして花粉が自己拒絶反応を起こし、細胞死するため自家不和合性になると考えられています。

最近、このPrsSとPrpSが相互作用することで引き起こされる自己拒絶反応において、細胞中の急激なATP低下が中心的な役割を果たすことが報告されたため、その研究を解説する記事を書きました。ATPは生命の共通エネルギー通貨と呼ばれる重要な分子ですが、ケシ科の自家不和合性では自己拒絶反応が起きた2分以内に速やかにATPが枯渇することがわかりました。ミトコンドリアや葉緑体でつくられるATPの、エネルギー資源としての機能はよく研究されているものの、シグナル伝達におけるその役割には未知の部分が多く、今後細胞生理においてどのような役割を果たすのかが明らかになっていくことが期待されます。

<発表論文>

Sota Fujii,

Plant physiology: ATP at the center of self-recognition,

Current Biology, Volume 32, R962-R964, 2022

https://doi.org/10.1016/j.cub.2022.08.004