研究経過

低施肥でも穂数が減らず、収量を確保できるイネを開発(井澤班)

June 12, 2023 11:23 AM

Category:メディア報道, 論文発表

main:井澤班

 計画研究班の井澤毅教授(東京大学大学院農学生命科学研究科)は、京都大学ならびに農研機構との共同研究により、イネが施肥を受けた際に分げつ数(穂数)が増える分子メカニズムについて、植物ホルモンの一種であるストリゴラクトンの生合成に関わるOs1900遺伝子の転写(mRNA量)が施肥刺激によって減少することが主要な原因であることを明らかにしました。また、そのOs1900遺伝子の発現箇所・タイミングを変える変異を利用して、低施肥でも穂数が減らず、収量性を維持できる新規改良Os1900遺伝子を創出しました(図)。

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図:Os1900遺伝子とOs5100遺伝子の二重変異体は分げつ数が増加し、結果として穂数も増加した

(出典:東京大学ウェブサイト https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20230608-1.html

 

 これまで、品種間の遺伝解析から、分げつ数(穂数)を制御しているのはOs900遺伝子とOs1400遺伝子の二つの関連遺伝子であると報告されていましたが、本研究ではまず、遺伝的な役割はそれらの相同遺伝子のひとつであるOs1900遺伝子の方が大きいことを明らかにしました。その上で、Os1900遺伝子をゲノム編集技術によって改変することで、新しい有用遺伝子を創出できたことは非常に新奇性が高い成果です。この新しく開発した遺伝子資源は、通常よりも低施肥で、高品質・高収量のイネ品種の育成に資すると期待され、SDGs時代のイネ育種に貢献できると考えられます。また、今回の成果では、遺伝子の機能喪失変異やアミノ酸配列を変える変異ではなく、働く組織やタイミングを変える変異が農学上・育種上有用であることを明らかにした点で、汎用性の高いメッセージがあり、非常に意義深い成果となっています。

 

◆詳細はこちら>東京大学ウェブサイトへ

 

また、本研究成果は2023年6月8日付の日本経済新聞にも掲載されました!

ぜひご覧ください。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC084N30Y3A600C2000000/

 

<発表論文>

雑誌:Nature Communications

題名:Fertilization controls tiller numbers via transcriptional regulation of a MAX1-like gene in rice cultivation

著者:Jinying Cui、 Noriko Nishide、 Kiyoshi Mashiguchi、 Kana Kuroha、 Masayuki Miya、 Kazuhiko Sugimoto、 Jun-Ichi Itoh、 Shinjiro Yamaguchi、 and Takeshi Izawa*(*は責任者)

DOI:doi.org/10.1038/s41467-023-38670-8