【出前講義】飛翔型「科学者の卵養成講座」特別講義「進化論を唱えたダーウィンも注目した高等植物の自家不和合性」(5/28, 31追記)
2016年5月29日 (日)
昨日の午前中の雨がうそのような快晴、好天。天気がよければ、昨日は、旧遺伝生態研のソフトボール大会だったのですが。。。ニュースでは、ヒロシマ訪問と羽田空港の火災。。。「科学の歴史」という記事の中に、e=mc2とゴジラ。ゴジラ世代だったものには、なるほどと。。。ふとそんな記事を見つけた土曜日。
「科学者の卵養成講座」として始まった高校1, 2年生向けの講座。今年で8年目。今では、飛翔型「科学者の卵養成講座」となり、その3年目。最初の修了生は、就職していると2年目。大学院生であれば、修士課程の2年。ずいぶん、時代がながれたのだなと。そんな1, 2期生から5, 6期生くらいだったでしょうか。今年度のひよこメンバーとして、がんばってくれそうです。そんな風に準備が整い、8年目がスタートでしたが、これまでと大きく違うのが、5月開催が第1回目。なにより、募集方法をこれまでの紙媒体から電子媒体に。ということをしたこともあり、この時期、高校ではいろいろなイベントがあるのではと、気にされた向きもありましたが、。。おかげさまで、95%を超える出席率で開始。
前半は、開講式と海外研修報告会。開講式では、花輪理事からwelcome、励ましの言葉が。ありがとうございました。そのあと、科学者の卵養成講座の概要を代表の安藤総長特別補佐から。いろいろなコースがあることもですが、なにより、HP・SNSなどへの記事の投稿については、十分に配慮してほしいと。。。そのあと、この3月に昨年度の受講生から選抜されたメンバーでの海外研修報告会。海外で何を学び、また、科学者の卵養成講座で何を習得したのか、こちらにもよく伝わりましたし、今年度の受講生には、講義を聴く前に、よい刺激になったのでは。。。
渡辺が講義のトップバッターを努めるのは、2年ぶりでしょうか。遺伝、植物の生殖、自家不和合性。遺伝については、この前の記事に書いたように、植物と動物でちょっとイメージが違うと言うこと。その先を少し突っ込んで、植物なら、従来通りの遺伝子を単離・解析するために、交配をして、F1, F2などの世代を展開して、mappingが有効であったわけです。ところが、いまとなっては、そのことが足かせとなって、流行りとなりつつある「GWAS(Genome Wide Association Study)」を十分に使いこなせてないなと。そこまで突っ込んだ話をするには、時間の関係もあり、話ができなかったのが、少し残念でしたが。。。いずれ、遺伝学は着実に進歩しており、今回の話であった、作物の栽培化であったり、進化の歴史を解き明かせる時代になったと。。。おもしろい学問体系ができつつあると思います。
講義のイントロは遺伝学でしたが、そのあとは、作物の花と作物の関係。覚えてほしいと言うことより、普段の観察力を大事にしてほしいと。もちろん、今回も出し物には、渡辺の論文の別刷を。記念と言うより、きっかけになってくれれば。。もちろん、ずいぶん多くの名前が出てきたのは、普段からよく観察しているなと。もちろん、興味があることもありますが。。。では、なぜ、生殖を行うのか、遺伝的多様性を確保をいかにするのか、もちろん、一方で、果樹のほとんどは「さし木、接ぎ木」というクローンで増えているわけです。意外と知られていないのは、理科の教育体系をもうすこし考えるきっかけのようにも。また、遺伝的多様性を確保するためには、自殖性でなくて、他殖性であってほしい。ところが、メンデルの遺伝の実験に使った「エンドウ」は、自家受粉ができる自殖性。ここに矛盾と今回の講義の面白さがあるわけです。
あと、雑種ができるというか、植物の場合、花粉を自由に運ぶ「訪花昆虫」が必要なわけです。逆を言えば、昆虫のおかげで、受粉が成立する。植物の受粉システムと昆虫の間には、共進化があるわけです。もちろん、講義をしたときに話をした「花の旬」のこと、これはしっかり理解して下さい。もちろん、最初に書いたe=mc2というか、相対性理論というか、ワープというか。。。季節感を大事にして下さい。ここで少し時間をとりすぎの感じでしたが。。。訪花昆虫のおかげで、たまに、他の種の花粉が雌しべにつくわけですが、そこには「種の障壁」が。。。種の障壁の実体は十分に解明されているわけではないですが、。。一方で、植物の場合は、雌雄同花の種がが多く、自家受粉が起こりやすい。その自家受粉を避けるために「雌雄異熟」という戦略をとっていたり、さらなる発展型が「自家不和合性」だと。
何より、動画で自家不和合性を実感してもらうことが。そのメカニズムの説明は、うまく伝わったのか、少しこちらも説明を工夫しないといけないなと。。。一方で、例年よりも少し突っ込んだ話、自家不和合性と自家和合性を話し始めていたので、ダーウィンの著書である「The effects of cross and self fertilisation in the vegetable kingdom.」について、簡単に紹介して。もちろん、原著を読むのは大変だと思いますので、訳本でよいのかと。自殖、他殖を続けて、世代を経ると、。。。自殖による「自殖弱勢」が。この点も少し説明不足だったかも知れないですが。劣悪な遺伝子、劣性homoが多くの遺伝子座で起きる、ということな訳なので。。。一方で、何故か「ヒーロー」のようなものも、栽培化の歴史上では、出現してきていることは、事実かと。。。
講義の最後の所は、受精をしたら、何ができるのか。単純なことですが、意外と。。。日々の食生活で、果実を食べることは多いこと。そんな時、是非、また、見返して下さい。というか、思い出して、考えてみて下さい。不思議というか。最後の動画は、名古屋大の東山先生からお借りしている受精の動画。種の障壁の実際というか、そんなものは実感頂けたのでは。。。講義のあとの質問時間は、十分とったつもりでしたが、それでもたくさんの方から質問が。こちらが説明不足だった点をうまくカバーしてくれたのではと。また、講義終了後には、長い列ができるような質問の数々。中には、ペチュニアの自家不和合性について、詳しく知っている方も。びっくりでした。不思議に思うことは大事なことです。渡辺に質問ができず、レポートにも書けなかった方は、是非、mailででも質問して下さい。楽しみにしております。
わたなべしるす
PS. 講義の最初だったでしょうか。渡辺の講義を小学校時代などに聞いてくれた方。ずいぶん多かったのが、感動でした。少しずつですが、出前講義がではなくて、線になろうとしているのかなと。ありがたいことです。是非、次回以降の講義の時に、渡辺に声をかけてくれれば、幸いです。
PS.のPS. 講義が終わったあとの質問コーナーに、懐かしい方も。本当にご無沙汰でした。。。ありがとうございました。また、いらして頂ければ、渡辺の講義もまた、計画しておりますので。
PS.のPS.のPS. 科学者の卵養成講座のHPにも関連記事を書いておきました。あわせて、参考にして頂ければ、幸いです。
PS.のPS.のPS. 5/31(金), 15:30, 東北大学Webサイト、工学研究科Webサイトに、科学者の卵養成講座が開講されたという記事が掲載されています。あと、驚くことは、工学研究科Webのトップページに、渡辺が講義している様子の写真が。。。そういえば、子供の頃は、ゴミ捨て場にある、テレビからブラウン管の磁石、トランス、真空管、抵抗などをgetしていたのを。子供の頃の夢がかなったようです。。。ありがとうございました。そんな子供時代の話を次回(11/12)のキャリア教育で行いたいと思いますので。