【研究成果】倍数体植物が他殖性から自殖性に進化するメカニズム解明「Nature Commun.」(11/30)
2023年11月30日 (木)
アブラナ属植物に含まれる(B. rapa, B. oleracea, B. nigra, B. napus, B. juncea, B. carinata)のゲノム関係を示した「禹の三角形」。二倍体種であるB. rapa, B. oleracea, B. nigraは自家不和合性。それに対して、それらの2種から構成される複二倍体のB. napus, B. juncea, B. carinataは自家和合性。二倍体であれば、不和合性になる組合せが最大で2つの対立遺伝子。このように倍数性は一般に自殖性。二倍体種は他殖性が多いわけですが、そのメカニズムは不明でした(「禹の三角形」の説明については、エッセンシャル植物生理学などを参考のこと)。 そこで、モデル植物ともいえるArabidopsis属のハクサンハタザオ(二倍体で他殖性)、セイヨウミヤマハタザオ(二倍体で他殖性)、ミヤマハタザオ(複二倍体で自殖性)を材料にして、自家不和合性を制御する雌雄因子(SRKとSP11/SCR)の遺伝子構造、遺伝子発現などを調査し、ミヤマハタザオのSP11/SCR遺伝子発現が抑制されて、自家和合性になっていました。機能型のSP11/SCR遺伝子を導入すると、自家不和合性に復活することでSP11/SCR遺伝子が自家和合性の原因であると証明。ところが、この仕組みでは説明できない系統もあり、その系統はSP11/SCR遺伝子の発現を抑制する低分子RNAが機能することで自家和合性になっていることも証明できました。また、ミヤマハタザオの亜種であるタチスズシロソウ(朝ドラ「らんまん」の牧野富太郎博士が命名)では、低分子RNAが欠失しており、SP11/SCR遺伝子導入で自家不和合性に復帰しました。
このように、花粉側制御因子SP11/SCR遺伝子の発現制御を様々に行うことで、自殖性に深化したのではないかと結論づけられました。この研究成果は、チューリッヒ大、横浜市大、東京大、三重大との共同研究であり、Nature Commun.に英国時間の11月29日に公開されました(Yew et al. (2023) Dominance in self compatibility between subgenomes of allopolyploid Arabidopsis kamchatica shown by transgenic restoration of self incompatibility. Nature Commun. 14: 7618)。Open accessになっていますので、pdfはfree download可能です。引き続き、よい形でのコラボができればと。
わたなべしるす
PS. 本学HPのトップページにプレス発表された資料のpdfがあります。あわせて参考にして下さい。また、研究科のHPにも本件の記事を掲載頂きました。