【研究成果】あえて「臭く」進化した花たちのニオイを生み出す仕組みを解明 - Science誌に発表
2025年5月 9日 (金)
稲葉靖子准教授(宮崎大学農学部、東北大学大学院生命科学研究科クロスアポイントメント)らの研究チームは、国立科学博物館、国立遺伝学研究所、昭和医科大学、長野県環境保全研究所、情報・システム研究機構ライフサイエンス統合データベースセンター、龍谷大学、慶應義塾大学との共同研究により、悪臭を放つ花の3属(カンアオイ属、ヒサカキ属、ザゼンソウ属)のゲノムを比較研究し、臭い花の匂い成分をつくる新しい酵素を発見しました。
靖子先生は、岩手大学で研究をされていた時代にザゼンソウの発熱に関する研究をはじめました(岩手の山林にはザゼンソウがたくさん生えているのです!)。渡辺教授はその頃、岩手大学で助教授をしており、その頃から靖子先生とのご縁があり、共同研究を行っています。
ザゼンソウは英語名"スカンクキャベツ"とも呼ばれ、花からものすごく臭い匂い(昆虫にとっては良い匂いかもしれませんね)を放ちます。その時期に、花が熱を発生する、という現象が知られています。おびき寄せられた昆虫、動物に受粉を手伝ってもらい、ザゼンソウは実をつけるのです(ザゼンソウが雪を溶かして顔を出す景色は美しいので、興味があるかたは調べてみてください)。靖子先生は宮崎大学に着任されてからも、ザゼンソウだけでなく、ソテツやクワズイモをはじめとした様々な花の発熱メカニズムの研究を発展させ、研究されています。
ザゼンソウだけでなく、他の属の植物でも、臭い匂いを発して昆虫を引き寄せる花が多く見られています。今回の発表は、それらの植物が独立に進化し、同様の"匂い"成分を合成するに至った収斂進化にフィーチャーした論文となっています。"匂い"は植物が能動的に作りだし、利用しているのでは...?と考えさせられる内容です。靖子先生、おめでとうございます!
また、今回の論文に使われた材料には、国内の研究機関のコレクション植物が活用されています。多様な植物コレクションの維持には大変なコストと手間と時間がかかっているらしいです(大変ですよね)。ですが、これからの時代、これらの多様な植物資源から、重要な現象がどんどん明らかになっていくのかもしれませんね。コレクションって大事!
詳しくは、2025年5月8日付の米国科学誌『Science』に掲載されています、ご興味があれば是非ご覧ください。
Yudai Okuyama et al. Convergent acquisition of disulfide-forming enzymes in malodorous flowers.Science 388, 656-661(2025).
大学院生命科学研究科公式ウェブサイト、東北大学公式ウェブサイト、宮崎大学公式ウェブサイト、他多数、プレスリリースとして掲載されています。
あわせてご覧ください。
河北新報、PR TIMES、沖縄タイムス、各種メディアにも取り上げて頂きました。ありがとうございます!
スズキ