東北大学・探求型「科学者の卵養成講座」(グローバルサイエンスキャンパス協定事業))

東北大学・探求型「科学者の卵養成講座」(グローバルサイエンスキャンパス協定事業)

令和元年度 活動ブログ

令和元年度 活動ブログ養成講座の活動を記録しています

2019.09.15

卵からひよこに向けて4歩目

 こんにちは。大船渡高校の平田美智子です。今回は、前日に学校の前期末考査が終わったばかりで、半分燃え尽きていた中での参加でした。(11月の科学者の卵は、後期中間考査とばっちり被っています。あ~あ。)テストでは時間が足りないし、ど忘れするし、もう少し考えて勉強すれば良かったな・・・、というテストの結果に対する絶望がありましたが、寝たら吹き飛びました。頑張ります。今回のブログは気持ちを切り替えて、小説風に書いてみようかと思います。会話の部分や人に関する事は、完璧に再現しているわけではありません。あまり小説を書かいたことがないので下手ですが、温かい心で読んでください。

プロローグ

 ・・・寝坊した。テスト終わりで結構疲れていたらしい。でも、5時半からのBRT(バス)には無事乗れたし、疲れはとれたから良いことにしよう。大船渡からバス・鉄道・新幹線・地下鉄と乗り継ぎ、ようやく東北大青葉山キャンパスに着いた。疲れが溜まったままでの参加になるかもしれないという不安を感じていたが、心配はなかったようだ。そして、会場の工学部中央棟に着いた。物語が始まる。

サイエンスカフェまでの間 10:00~11:00

 さて、今日も頑張りますかと受付を済ませて、指定されたテーブルに行ってみると誰も来ていない。場所は工学部中央棟1F。以前に英語交流サロンでも使ったことがある、どこかバーの雰囲気が漂うカフェのような場所だ。テーブルは正方形の形をしていて4人がそれを囲んで座れるようになっている。私は適当に一番近くの席に座った。

これから行われるのはサイエンスカフェか。サイエンスカフェって初めて聞くけど、どんな感じなんだろ。受付で渡された資料を軽く眺めていると、これまでの講座で仲良くなった仙台の友達が声をかけてくれた。その友達の先輩に、私と同じ研究をしている人がいる。話もその研究についての話題になった。(私はセイタカアワダチソウのアレロパシーという現象について研究している。知っている人はいるかもしれないが、アレロパシーとは、植物が出す化学物質が他の植物や生物に影響を与える現象の事である。)「そういえば、先輩の研究はどんな感じ?」気になっていたことを聞いてみた。「それがですね、化学物質の効果が結果に表れなくて、『どうしてどれも同じになるんだー』って嘆いていましたよ。」ん?それは気になるな・・・。「それはどんな方法で実験していたの?」「えーと、アレロパシーの研究で有名な研究者が開発したサンドイッチ法を参考にしていましたね。」ふむ、それは私も同じだ。その先輩も、私と同じように寒天培地を作って実験しているらしい。その研究についてをまとめたものを見せてくれたのだが、はっきりとした原因は分からなかった。「私は先輩の研究を引き継ぎたいんですよね。」「おー、いいね。」この研究は進めていてとても面白いし、同じ研究をする仲間が増えてなんと言っても嬉しい。私の部の後輩も誰か研究を引き継いでほしいなとさりげなく思う。引き継いでくれるかな。いや、どうだろうか・・・。

 サイエンス尽くしの楽しい会話が終わり、自分のテーブルに戻ってみると、もう二人が来ていた。その二人は、私に対して右の席と向かいの席に座っている。右の席は頭がよさそうな男子で、仙台の高校から来ていた。学科は理数科で、化学が好きらしい。向かいの席に座っていたのは私がよく知る女子で、この講座で仲良くなった友達だった。その友達は私と同じ岩手から来ていて、この講座の第一回目の時に出会い、いっしょに食堂でカレーを食べたという思い出がある。サイエンスカフェが始まるまでまだ30分くらいあったので、それぞれの部活の様子や高校生活についてなどのたわいもない雑談をした。「ねえ、ここの席に来る人はどんな人だと思う?」まだ私の左の席の人は来ていなくて、来ない可能性もあったのだが、話のネタがなかなか思いつかなかったから二人に聞いて見ることにした。二人は突然聞かれて悩んでいる様だった。ここで私の思いつき。「他のテーブルを眺めた感じ・・・、男子かな。このテーブルには、岩手からが二人で仙台が一人いるから山形あたりが来るかもね。」

 三人で考えを巡らせていると、日に焼けている男子が来て私の左の席に座った。予想が当たったので、ちょっとガッツポーズ。そして、首に掛けているネームプレートで高校を確認して見ると・・・、岩手の高校だった。はずれてちょっとがっかり。もちろん私の知っている高校である。その人は、カフェが始まる少しギリギリで来たので軽く紹介を済ませた。これは余談なのだが、私たちのメンバーはみんな所属している部活がそれぞれ違うのだ。右の席の男子は卓球部。向かい席の友達は英語部。左の席の男子は陸上部。そして私は自然科学部である。この講座に参加する前は、みんな生物部や地学部などの科学系の部活なのだろうと思ったけど、案外そういう訳ではなかった。ある意味、多様性が保たれているのが面白い。そんな多様な人たちとの雑談を続けていると、気づけば11:00になった。サイエンスカフェが始まる。

サイエンスカフェ 11:00~12:00

 まず講師の紹介から始まった。講師の長神風二先生は、科学者ではなくサイエンスコミュニケーターであるらしい。サイエンスコミュニケーターとは博物館や科学館の展示や企画などに関わったりする職業であると語っていた。少し気になる。

「今から10~20年後に初めて実用化されそうな技術を考えてみてください。それから、グループで話し合ってもらいます。」

私は少し考えてみた。むむ、なかなかアイデアが思いつかない。そういえば、核融合の研究が進められていると言うし、脳に電極を埋め込んでロボットを動かすという事も実現されつつあるらしいから、そういったものを出していくのだろうか。長神先生は歩き回りながら、いくつかのテーブルの所に行き、そのテーブルの一人にマイクを向けて何を考えたかを聞いている。「空飛ぶ車」や「ガンダム」など、様々なアイデアを聴きながら、私は「二人の脳にチップを埋め込み、記憶や経験などを共有する技術」や「小さくしたコンピュータを体内に入れて、体内から病気を治療する技術」などと考えた。

「それでは、それぞれのテーブルで二つのグループに分かれて、アイデアを書いた紙を交換して、あなたならその技術をどう悪用するかをグループで考えて見てください。」

私たちは適当にグループを決めて、向かいの席の友達と同じグループになった。回ってきた紙には、「自動運転」や「人型ロボット」について書かれていた。ふむふむ、「自動運転」だったら変な電波を流して大量に事故を引き起こせそうだし、「人型ロボット」だったら・・・、新しい兵器かな。同じグループの友達はなかなか思いつかないようだった。いいな、純粋だ。「さて、思いつく悪用の用途についてはどこまでが、発明する側の人たちの責任でしょうか?」後半からいきなり難しい内容になった。私は例として出された遺伝子組み換えについて、考えを巡らせて見る。

ー今では、遺伝子組み換えで、人工的に遺伝情報を書き換えることができる。それは生まれてくる子供を自分たちの好きな姿に変える事ができるし、重篤な遺伝病を負った子供たちを救う事ができる。しかし、生殖細胞を変更することは、私たちがその子供の人生に、大きな影響を与えてしまう。良くも悪くも。それでこのまま先延ばしにすれば、未来から、「やろうと思えばできたのにどうしてやらなかったの?」と責められてしまう。ー

 ・・・、いったいどうすれば良いのだろうか。

講義 「化学反応の場を探る~マテリアル・デザインと新物質探索~」 13:00~14:50

 サイエンスカフェが終わった後、私は食堂でスタミナ焼き肉丼とサラダを友達と喋りながら平らげ、講義が行われる2階の部屋(講義室だったか会議室だったか)に行った。この部屋は全体が白で統一されていて、400~500人くらいは入れそうな広さを持っている。私の高校ではあり得ない規模だ。部屋に入ると、ほとんどの人が昼食を済ませて席に座っていた。私はいつも前の方の席に座っているのだが、完璧に埋まっている。もう少し早く昼食を食べ終われば良かったな、と仕方なく後ろの方の席に座った。渡されたこれから行われる資料に目を走らせていると、すぐに13:00になった。

 時間ぴったりに講義が始まる。講師は滝澤先生で、知らない人に講義の内容を簡単に説明すると、「どのようなプロセスで新物質を作り出すのかを学ぼう」という感じだ。

「超伝導体開発の歴史はこのようになっています。」・・・うむ、今回の講義は少し難しいな。それに加えて、昼食の食べ過ぎで眠くなってくる。私は頑張って、滝澤先生の話に集中する。

「ダイアモンドは地球の近くと上部マントルの間あたりの超高圧場で作られます。圧力によって体積が減少し、電子の密度などが変わります。それでですね、超高圧力場の中では、全ての元素が金属になります。これで新規物質探索の場が広がります。」おっ、それは初めて知った。

「ここで話がガラリと変わりますよ。皆さんは、電子レンジの原理を知っていますかか?マイクロ波を使うことで、物質がそれを吸収し発熱します。しかし、マイクロ波の吸収は物質によって違います。という事は、マイクロ波吸収の違いによって特定物質のみ加熱することができます。今までは、同じ温度上でしか化学反応を進められなかったのですが、これでそれぞれの温度を変えてまた新たな物質を作り出すことができます。」これはとても興味深い。これでどれ程、新物質探索の場が広がることだろう。将来自分の手で新物質を作り出すのも面白そうだ。でも、この分野に進むには、化学を一生懸命勉強しなくてはいけないな・・・。最近行われた化学のテストの出来を思い出しながら、そう考えた。そして、この化学へのささやかな希望は、講義後のレポートでダメージを受ける事になる。

 レポートの第一問目、「周期表を見て、気付いたことを書きなさい。」時間が掛かりそうだから後回し。第二問目、「資料の例以外で、電子レンジの原理を使う化学プロセスを考えなさい。」・・・はい次。プリントの裏の方を見てみる。第三問目、「今日の講義の感想、コメントなど、自由に書いてください。」冷や汗が背中を伝った。

東北大ー京都大共同企画 パネルディスカッション  15:00~16:50

 なんとかレポートに食らいつき、全ての問いに必ず何かを書いて終わらせた私には、間の休憩が短すぎるように感じた(10分くらいだったかな)。友達を誘って、講義で気になった事を滝澤先生に質問しようかと思っていたが、先生のところには私と同じように気になった点を質問しようと、たくさんの人が並んでいる。質問だったらポートフォリオでもできるし、時間がないから諦めた。そうこうしている間に、これから行われるパネルディスカッションの準備が終わったようだ。

 パネルディスカッションと聞いて、私は岩手県で行われる自然科学部門のポスター発表のようなものかとイメージしていたがまったく違かった。(よく考えたら、それはポスター発表ではないか。)もちろん、パネルディスカッションに参加することは初めての経験である。このディスカッションの題目は、「これからの科学、社会を考えよう」だ。パネリストは京都大から二人、東北大から二人、プリンストン大学から一人の計五人で、ステージに用意された長机のところにいる。司会は、第一回目の講義でお世話になった渡辺先生である。

 パネルディスカッションが始まった。最初の課題は、「高校時代にやっていてよかったことは?」だ。プロジェクターに大きく五人の意見が表示される。それぞれの意見は、英語・ToDoリストの作成・部活動・高速フーリエ変換(?)だった。私はパネリストの意見を聞きながら、それを何かのプリントの裏紙にメモしていった。それらの意見の中で気になったのは、ToDoリストの作成である。ToDoリストとは、自分がやるべき事をリスト化するというものらしい。今回初めて聞いた。計画性がない私には良いかもしれない。

 そんな調子で、「なぜ、この科学分野を選んだのか?」のディスカッションも終わり、「世界トップクラスでの研究に不可欠なことは?」のディスカッションに移った。これは、気になっていた課題だ。五人の意見は、「情報のインプットとアウトプット」、「コラボレーション」、「優秀な同僚と情報収集」、「金と純真な好奇心」、「なさそう、個人的には発想力だけど」だった。情報収集が大切というのは理解できるし、様々な人とのコラボレーションで、新たな道が開けるかもしれないということにはとても共感できる。そして、「金」。今回のディスカッションでは、お金というワードがたくさん出てきた。それ程切実な問題なのだろう。この課題は試験や受験にも繋がると言っていたから、きちんとメモをする。後でしっかり向き合おう。そしてこの課題が終わると、「科学は社会・世界を幸せにするのか?」という課題で議論が進み、ついに最後の課題に移った。

 「これから先、何で名を成したいと思うか?」それぞれの意見は、「研究」「世界の○○になる」「自分の名前がついた理論を作る」「世界を1mm動かす」「研究で炎上したい」だった。みんな夢がでかい。しかも「炎上」って何だ。さすが世界トップクラスの研究をしているだけある。私と同じようにこの講義を受けている仲間の中からも、将来、パネリスト達のように研究をする人が出てくるのだろう。私もそうなれるだろうか。パネリスト達の話を聞きながらそう思った。

エピローグ

 帰りは、仙台から新幹線で岩手の一関まで戻り、そこからバスに乗り換えて大船渡に帰る。そのバスの中、私は今日の出来事を振り返った。一ヶ月に一回しか会えない友人との会話。初めて参加したサイエンスカフェ。何かと困った滝澤先生の講義。盛り上がったパネルディスカッション。今日も一日が長く感じた。この講座に参加しているからこそできる楽しい経験ばかりだ。大船渡に帰ったら、まずブログを書かないといけないし、機会があれば先生に今日の様子を伝えないといけないな。バスの外はもう暗い。通り過ぎていく街灯の光が淡く輝いている。・・・zzz (終)

投稿者:岩手県立大船渡高等学校

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