秋田県立能代高等学校 二年 中村響
〈第四回講座での成果と反省〉
午前中に行われたサイエンスカフェは、科学者が持つべき「倫理」についてでした。私の学校の教育課程には倫理がないため私自身緊張してしまったのか、堅苦しい雰囲気で臨んでしまいました。ただ、「科学の悪用」という消える事のない課題を慎重に考える事が出来たため、良い態度であったのかな、と感じます。
まずは、この講座で学んだこと、タイトルの〈成果〉についてです。私は科学が悪用された事例や事件をいくつか知っていますが、身近な事でないため、この講義を受けるまで重要な課題として捉えたことがありませんでした。一つ目の成果は、この課題が自分にとって身近な課題になった事です。なぜかと言うと、講義の前半に行った2019年から十年後に初めて実用化されそうな技術を考える時間に、私が大学で研究したいと考えている地震予報を挙げた際に悪用法を思いついてしまったからです。地震予報が実用化されると、今まで信頼されなかったようなネット上の地震の予言が現実味を帯びてしまいます。地震についてのデマ情報は現時点でも人々の恐怖感を煽る材料として十分すぎる効果を発揮します。これに現実味が付加されたら、人々の生活にまで影響を与える可能性があります。更に、デマ情報が多く流れると、本当の地震予報への信頼の希薄化も懸念されます。
二つ目の成果は「科学で社会を幸せにするためには規制が必要だ」という考え方を学べたことです。講義内で紹介された科学技術の規制の中で、私はラッセル・アインシュタイン宣言の適切な規制が出来るまでは、技術の使用を認めないという態度が理想的であると考えます。長神先生の言葉を拝借すると、科学者が準備のない社会に"何にでも使える"ものを投げ込む事こそ無責任という事です。科学の用途は使用する人に依存します。だから、社会に準備(=規制)があればよいと考えます。
次に、サイエンスカフェでの〈反省〉についてです。今回科学者の卵養成講座が始まってから初めてグループ内の話が盛り上がらないという経験をしました。科学者の卵養成講座は、他校の生徒と交流をすることで見聞を広げ、科学者に必要な協調性を育むという目的もあります。しかしこれではそのどちらも果たせていません。とても惜しいことをしてしまいました。今回の私は積極性が欠けていました。同じグループになったおふたりに迷惑をかけてしまったと反省しています。
午後の最初の講義は、滝澤先生の「化学反応の場を探る」というテーマの講座です。固体に加える圧力を超高圧にすることですべての物質を固体にして新たな材料を生み出すという話しもマイクロ波によって隣接した物質それぞれの温度を変化させて新しい化学反応を作り出す話しも斬新で、研究に尽力する東北大学での講義だからこそ拝聴できるのだろうと感じ、参加の喜びを感じました。また、この講座には私にとって大変な成果と言えるものがありました。(3つ目)それは、圧電素子について先生が解説した情報とコンデンサーについてのお話しを聞けたことです。その情報とは、物質に交流電流を流すことで超音波を発生させることが出来るというものです。私は今、課題研究をコンデンサーの大容量化というテーマで行っています。しかし、実際にコンデンサーを作成する段階が、ほとんど成功していなく、更には誘電体からなる謎の音の正体をつかめずにいたため、研究が滞っていました。ですが、その情報のおかげでこれらの問題が解決しそうです。
まずは、コンデンサーが完成しないことについてです。私は電源としてコンセントに接続する電源装置を使っていました。コンセントから流れる電流は交流電流です。これではコンデンサーの極板の正負が定まりません。だから充電がされなかったのだと考えます。更に、謎の音は誘電体として使っている水の分子の運動によるものではないかと考えます。
では、家庭用の電子機器内のコンデンサーはどのようなつくりなのでしょう。これらにも交流電流が流れているはずです。私が作ったコンデンサーと何が違うのでしょうか。なぜ交流電流が流れているのか、誘電体の分子の運動によって電気エネルギーが熱エネルギーに変化されるのか、この二つについて調べる必要があります。(確か、コンデンサーは熱が充満して破裂する事があると聞いたことがあります。その熱はもしかして誘電体の運動によるものなのでしょうか)電子回路についてより深く学ぶ必要が出てきました。すべきことが増えて忙しくなりそうですが、研究が進展する見込みが出来たことを嬉しく思っています。また、電子回路の改良のための別のアプローチも見えてきそうです。研究が面白くなってきました。
最後は、パネルディスカッションについてです。テーマは「科学は社会・世界を幸せにするか」でした。以下、私の印象に残ったパネリスト数名の言葉を記載します。
まず一つ目の質問「高校時代にやっていてよかったことは?」と言う質問に対する神田さんの答えです。神田さんと同じように、私も一年前からTo Doリストを作っています。しかし、決めたスケジュール通りに進める事が出来ず何度か挫折しそうになりました。講義終了後、神田さんにアドバイスをもらいに行きました。うまくスケジュールを組むコツは、ゆとりを持ったスケジュールにすること、決めたスケジュール通りに進むように気合で頑張る事だそうです。確かに、私のスケジュールはゆとりがなかった気がします。気合の度を越えて無理をしてしまっていたかもしれません。Doの後はReflectionをしていましたが数カ月経ってからのReflectionでも反省点は多く見つかりました。
三つ目の質問「世界トップクラスの研究に不可欠なことは?」への山中さんと西貝さんの回答の一部の、アメリカの大学の他大学との付き合い方についてのお話しはとても貴重で印象に残りました。これが4つ目の成果です。アメリカは、学部や大学の壁を超えたコラボレーションが行われている(但し、話してよい範囲を決めている)そうで、日本は内部の繋がりのみを重視するためアメリカには追いつけないと山中さんは仰っていました。西貝さんもプリンストン大学は学部を越えたディスカッションを毎日行うと仰っていました。私は海外に赴いた事がないため、海外の情報をお二人が話してくださったので貴重なお話だと感じました。
メインテーマ「科学は社会・世間を幸せにするか?」への回答は、京都大学の飯田さんの言葉が印象に残りました。実は、このパネルディスカッションで私が一番注目していたのが飯田さんです。飯田さんはパネリストの5人のうち唯一の文系であるので、科学について俯瞰的に見た意見を聞けると考えたからです。飯田さんの回答は「幸せに出来ないものだとしたらやめた方が良い」でした。私の考えに一番近い考えでした。
私の考えは「科学で社会を幸せに出来る保証はない。科学は規制して正しく利用すべきであり、規制できない状態では利用すべきではない」です。私は、科学は社会を何らかの形で幸せにするために作られたものだと信じています。そして、悪用は幸せの副産物だとも考えています。ですから、副産物を制御できない可能性のある科学は自由な利用をやめるべきだと考えます。
以上、4つの成果と一つの反省が第四回講座の振り返りです。
次回は英語交流サロンがあります。前回留学生と楽しく話すことが出来たので、次回も楽しみです。また、パネルディスカッションでも英語は話す能力も重要だと聞いたので、今回の反省を生かして積極的な態度で臨みます。これで終わります。ありがとうございました。
投稿者:秋田県立能代高等学校