栃木県立宇都宮女子高校の平山陽菜です。
いよいよ最後の特別講義を迎えました。第8回特別講義で行われたのは薬学研究科の岩渕好治先生による「薬を創る化学技術」と医工学研究科の西條芳文先生による倫理教育「知っておきたい研究倫理のキホン 」、そして英語サロンです。この中から、私は「薬を創る化学技術」をピックアップします。
私は今回の講義の中で、薬の作用について初めて具体的に知りました。今まで、薬が作用する仕組みについてあまり調べてこなかったことに気づくと同時に、なぜウイルスを構成する成分に直接作用する薬ではなく、ウイルスの作用を阻害する薬が多いのだろうかと疑問に思いました。私はこれには2つ理由があると考えました。
①ウイルスは変異しやすいから
まず1つ目は、ウイルスのDNAを覆うタンパク質が変異しやすいため、ウイルスのタンパク質に作用する有機化合物が製造しづらいからです。ウイルスに直接アプローチする治療薬を製造するとすれば、最も効果的なのは開発した有機化合物をウイルス表面のタンパク質に結合して変性させ、ウイルスが生存できなくなるように作用させることだと思います。しかし、ウイルスは変異しやすいです。例えば、新型コロナウイルスの変異株は約2年という短い期間で約10種類の変異株が生まれました。新型コロナウイルスの変異株とは、ウイルス表面にあるスパイクたんぱく質に変化が生じたウイルスの種類です。つまり、ウイルス表面のタンパク質を標的とする抗ウイルス薬を製造するためには短期間の変異に対応しなければなりません。もともと特定の有機化合物を製造することは容易でなく、その上でこういった変化にも対応しなければならないことから、ウイルスの表面のタンパク質を標的にしないほうが得策だと考えられます。
②DNA・RNAの複製方法にアプローチさせるほうが容易だから
2つ目は人間とウイルスで大きく異なるRNA・DNAの複製方法に作用させる手法が容易であるからです。人間を含め動物は細胞内でDNAポリメラーゼが働くことで鋳型DNAからDNAを複製し、セントラルドグマという流れに乗ってDNAからmRNAを転写、mRNAからタンパク質に翻訳します。一方、ウイルスは宿主の細胞に侵入すると、逆転写酵素を用いて持っているRNAを複製します。逆転写酵素はウイルスにとって不可欠な要素であり、どのウイルスにも共通している物質です。したがって、ウイルスの逆転写酵素に作用する薬が1種類開発されれば、さまざまなウイルスに応用できると考えられます。 これらの理由により抗ウイルス薬はウイルスを直接殺す作用ではなく、ウイルスの作用を阻害する効果をもつのだと考えました。
科学者の卵の特別講義に参加してきて、文章を書く力、質問力、批判的思考力などが高まってきたのを実感します。卵の特別講義が終わっても、普段の生活からこれらを意識して、将来優れた科学者になるために励んでいきたいと思います。
投稿者:栃木県立宇都宮女子高等学校