東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

第12回:《最終報告》責任と反省(医:佐々木円花)

2020年1月28日 (火)

 (1) 植物、作物の栽培を行って、最初に想像していたよりも、たいへんだったこと、うまくいったこと

 カイワレの栽培については、初回と帰省中の分は失敗してしまいましたが、2回目、3回目は上手く育てることができました。

 帰省中の分に関しては水やりをすることができなかったという意味で、仕方がないところがあるとは思うのですが、初回の栽培での失敗は反省すべき点が多いものでした。初回は、ワタを買いに行ったときに、店舗で聞いてみたところ、これしかないと言われてしまい、仕方なく購入したワタを使用していました。それがこちらです。

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 調理用ということで、外に包装があるのですが、それを取り外し、中のワタをバラバラにして使用していました。無加工のワタに対して外側に放送を施しただけだそうなので、特別な成分は加えられてはいないようですが、2回目以降に普通のワタにしたところ生育のよさが段違いでした。やはり、オガタ先生からコメントをいただいたように、植物に対して有害な何らかの物質が含まれているのだろうと思っています。加工がされていないことにより、逆にワタ由来の、他の植物の成長を阻害するような物質(アレロパシー物質)が処理されないでいるのではないか、もしくは、外装由来のマイクロプラスチックが混入することによって植物の生育を阻害するようになっているのではないかと考えています。

 うまくいったことについてですが、とりわけ3回目は、緑化のタイミングもよく、成長しすぎてプラスチックのカップから外に出てしまうということもありませんでした。これは植え床を薄くしたことも原因として考えられると思います。こちらが3回目の栽培の植え床の様子です。

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 まだ少し厚い印象は受けますが、これによりだいぶ茎の曲がり具合が改善されたことは確かです。

 緑化のタイミングが良かったことについて、緑化を行うと、葉が生き生きとした緑色になるという本来の効果だけでなく、気のせいか茎も太く、よりまっすぐになったように感じられました。また、味も、2回目の栽培で緑化をしなかった時よりも臭みがなかったような気がして意外でした。二回とも火を通しての調理だったのですが、これが正解だったようで、個人で栽培したスプラウトは店舗で販売されているものよりも衛生面で管理が甘いことがあるので、火を通した方が良いとのことでした。2回目の栽培では、緑化をせずに収穫に至ってしまったわけですが、実際、もう収穫だろうというところまで来てしまっていても、光に当てることにより多少は緑に近づくようなので、諦めることなく緑化していればもっと良かったと思います。

 ちょい辛ミックス4については、初めに発芽させた個体群は、大きな鉢に植え替えたタイミングでほとんどの株が死滅してしまいました。これは、オガタ先生からもアドバイスをいただいたように、発芽してから鉢に植え替えるまでの期間を長く取りすぎたことが問題だと考えています。2回目に後から植えたものは、発芽したのを確認後すぐに大きな鉢に植え替えました。初めのうちは全く芽が土の上に出てくる様子がなかったため、失敗に終わってしまったのだろうと落胆していましたが、年末の帰省から帰ってくると、なんと植えたものがほぼ全て無事に芽を出していました。位置が偏ってしまっていたのは、水やりの時に勢いよく水を与えてしまったために初めの位置からずれてしまったのだろうと思います。

 イタリアンパセリは、最初は順調に生育しているかに見えましたが、途中から成長スピードが一気に落ちて、毎日見ていてもほとんど変化が見られない日が続きました。同じ植物を育てている他の受講生の方々と比べても、自分の育てている植物の育ちが遅れをとっているのは明らかでした。日当たりはどうしても確保することはできなかったのですが、吉田さんのように、温室を作るなどして対応すべきだったと反省しています。

 ちょい辛ミックス4とイタリアンパセリに共通することなのですが、初期に室内で育ててしまっていたということもあり、徒長が進みすぎてしまいました。また、早い段階での徒長だったので、ほぼスプラウトと同じような見た目になってしまっていました。そのせいで、後で土寄せをするときに茎が細すぎて折れてしまうのではないかという状態でした。

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 これは徒長が進みすぎたちょい辛ミックス4の様子です。10/26頃の写真で、播種から約20日経過しています。20日でこれしか成長していないということは、どれだけ室内の人工の光が植物の成長にとって不十分であるかが理解できます。

 また、水やりの頻度については、あまり毎日与えすぎると、気温も低く水分が蒸発しにくいため、植物が根腐れを起こすのではないかと思って、初めのうちから1週間に1回にしていましたが、渡辺先生の記事を拝見してこれが正解だったと知って安堵しました。

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 (2) それ以外の科目などへの波及効果

 実際に効果があった他教科としてまず挙げられるのは医化学です。動物と植物は構造こそ違えど、転写因子、遺伝子調節機構、その他様々な微小レベルにおいては類似点も多く、非常に勉強になりました。今までは医学系の論文しか読んだことがなかったのですが、この講義においてさまざまなことを調べるにあたって、植物に関するものも時々読むようになり、気づけばミクロレベルの機序を知るのはやはり楽しいと感じるようになっていました。また、展開ゼミでは、観察をするだけでなく、観察の中において疑問を抱くということにも重点が置かれていたように思います。そのおかげで、医化学において何か疑問が生じた時に、授業や教科書等の内容を参照して満足するだけでなく、自分で論文にあったて調べるという習慣もつけることができました。自分の中にある知的好奇心をこの展開ゼミを通して再び呼び起こすことに成功したように思います。

 また、化学Cを学習する上でも波及効果がありました。この講義は化学物質の作用について、人体における影響に絡めて学習していくというものでしたが、色素等については、展開ゼミにも関連がある部分なので、興味を持って取り組むことができました。また、逆に、化学Cで学んだ作用機序をもとにして、展開ゼミに関連する学術記事の理解を深めるなど、相互に良い影響があったと実感しています。

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 (3) 毎日の観察をするということで、身についたこと、感じたこと

 初めのうちは、毎日欠かさずに観察をしていましたが、試験期間と被ってしまうとどうしても観察がおろそかになってしまうのを避けることができませんでした。そのせいか、植え替えのタイミングを逃してしまったり、肥料を与える時期を誤ってしまったりと、今振り返ってみるとかなり致命的なミスにつながってしまったのではないかと後悔しています。他の方も書いていたように、植物は十分に成長すれば最初よりは目をかける頻度は落ち着かせても良いのでしょうが、私の場合は最初の最も敏感な時期に丁寧な世話ができなかったので、その影響が後々まで及んでしまったのではないかと思います。

 また、植物の大きさをはじめは計測していたのですが、徒長のために土寄せをしてから、計測する部分が曖昧になり、途中でやめてしまっていました。写真を撮影する際には、わかりやすいように定規とともに撮影するようにはしていましたが、今自分の書いた記事を見返してみると、定規を置いている位置も統一されているとはいえませんでした。継続して観察を続けた項目といえば植物の大きさということになるのですが、十分とはいえません。

 中間段階でもっと目をかけていれば、植物が今何を必要としているのかということを判断でき、今頃順調に成長していたのではないかと思うと、1日の中のほんの少しの時間であっても継続するということの大切さをみにしみて感じました。

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 (4)文章を書くという点で、ゼミ開始前とあとでどのような変化があったか

 パソコンで文章を書くのが速くなったと感じることが多くなりました。以前までは全くブラインドタッチができなかったのですが、現在はほとんどキーボードを見なくても打てるようになりました。今まで自分がどれだけ時間をかけてしまっていたのかが身を以て実感できました。打ち込みにかかる時間が大幅に短縮したことにより、レポートを仕上げるのにかかる時間も少なくなり、文章を書くことが苦ではなくなりました。

 プレゼンの仕方については、正直に言ってしまうといまだに少し苦手に感じてしまう部分があります。他の受講生の方々の報告は、読ませていただいていて非常に楽しいですし、もっと読んでいたいと思います。しかしながら、自分の書いてきた報告を見て、もっと読みたくなるようなものかと問われると、NOと言わざるを得ません。自分でさえそうなのですから、他の方から見たらきっとより強くそう感じることでしょう。フォントや写真を見やすくしたり、データをグラフ化したりするなど、もっと視覚に訴える記事にすべきだったと強く感じています。

 結論としては、文章を書くという行為そのものに対する抵抗感はほとんど無くなったのですが、その内容を充実したものにするという点ではまだまだ未熟な部分が残っているので、今後またこの展開ゼミのように、多くの人に対して何かをわかりやすく伝えるための文章を書く機会があったら、今回の反省を生かしたいと考えています。

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 (5) 自分自身が習得できたと思う点、他の受講生と比較して、さらに、研鑽を積むことが大事と思う点

 前述の項目と多少重複してしまうところはありますが、ある現象が起こる理由について、ミクロレベルの機序から知ろうと意識することが多くなりました。私は一応理系ではありますが、最初の方ではあまり物事についての深い考察が不十分であったこともあり、オガタ先生からもっと科学的なものの見方をするようにというご指摘をいただきました。思い返せば、高校時代は周囲のことについて自然科学的観点から疑問を感じる機会も多く、また、疑問を感じるようにしよう、興味を持って物事に取り組もうと心がけていたのに、大学になって普段の生活が忙しくなるにつれて、そういった姿勢を失ってしまっていたように感じます。ご指摘をいただいて以降は、科学的なものの見方を心がけ、日々の観察に取り組むようになったのではないかと思っています。

 ただ、他の受講生の方のように、継続して何か一つの要素について観察するということができていれば、少しの変化に気づき、疑問を感じやすくなったのではないかと後悔しています。

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 (6) コメントにどの程度、followできたのか、意味があったのか

 私は序盤に、自分の部屋の日当たりの悪さを気にして、カイワレ以外の植物についても室内での生育を行ってしまっていました。このことについてオガタ先生からご指摘をいただき、屋外に移したところ、ひょろひょろと徒長ばかりしていた植物が、茎も太くなり、安定して成長するようになりました。スプラウト等であれば室内で育てて徒長させるのが正しいですが、ちょい辛ミックスやイタリアンパセリは初めから屋外で育てるべきだったと反省しています。人工の光は、継続的に当てることはできますが、光量も少なく、与えるエネルギーにしてみれば太陽光の比較にもなりません。さらに、自然の状態から逸脱したリズムで光を当て続けることによって、光阻害が起こり、結果植物の生育に悪影響を与えてしまうこともあります。至極当然のことではありますが、植物にとっては何よりも自然光が大切であることを改めて実感しました。栽培している様子をアップすることにより、その場でアドバイスがいただけたおかげで、自分の栽培方法の不適切な点についても大変なことになる前に気づくことができましたし、その都度詳しい知識についても教えていただけて、興味が尽きることなく受講することができました。特にオガタ先生からいただいた、アレロパシーに関するコメントに関しては、自分でも興味を持って調べたりもしました。いただいたコメントをきっかけとして、それ以外のことにも自分から興味をもって取り組めたのではないかと考えています。

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 (7) 中間発表で目指した点がどれだけ達成できたか

 中間報告の際に立てた目標としては、ちょい辛ミックス4とイタリアンパセリを最終報告までに収穫するということでした。しかしながら、どちらも収穫に適した大きさには程遠く、当分収穫の日はやってきそうにありません。やはり、光が当たらないことに対して何らかの対策をとることをしなかったのが一番の原因であると考えています。ちょい辛ミックスはともかくとして、本来イタリアンパセリは地中海沿岸が原産地であり、15〜20℃の温暖な環境で育つ植物です。この気温を日光だけで確保できないのであれば、日野原さんがなさっていたように、温室等を作成しての対策が必要でした。それを怠ってしまったせいで、現段階になってもこのような成長状態で収穫ができずにいるのだと反省しています。

 

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 (8) この展開ゼミで学んだことをどの様に活かすことができるか、まだ収穫していない作物を今後どの様に管理したいか

 今回の記事のタイトルにもしているのですが、自分の行動に対して責任を持つということ、そして、植物も命ある存在なので、その命をあずかる責任として、きちんと日々心を込めて世話をすること、という2点を通して、責任ある行動をとることの大切さを痛感しました。

 この展開ゼミにおいては、日々の他の活動の中で、時間を見つけて継続して一つのことをやり続けることの大切さを学習しました。その大切さはとっくに知っていたはずなのに、実際に自分ができなかったということに少なからず動揺しています。大学生活においては、自分を律することができるのは自分をおいて他にはいません。時間がないなら他の部分を多少無理してでも削って、必要なことに割くべき時間を捻出するのが、自立した個人として最低限果たすべきことだったと、非常に反省しています。また、本来は毎日オンラインのチェックをするべきでしたが、確認を怠っていた期間があり、中間報告に遅れてしまいました。先生方に非常に迷惑をおかけしたこと、この場をお借りしましてもう一度お詫びさせていただきたく思います。本当に申し訳ございませんでした。期限を厳守するという当たり前のことさえ守れなかった自分を非常に情けなく思います。

 今後は決してこのようなことのないように、当たり前のことを当たり前にこなせるようになりたいと思います。渡辺先生もおっしゃっていたように、自分で、やるという自由を選択したのですから、責任の伴った行動をするように、今回の展開ゼミで得た反省を生かしていきたいと思います。また、自分のキャパシティを把握して物事に臨むことが非常に大事であると改めて実感しました。やるべきことを全て行うには、容量の良さはもちろんのこと、プランニング能力も非常に重要です。今後の生活においては、やるべきことの管理をする際に、自分の能力ではどのくらいまでできるか先読みして、時間配分を計画的に行うということも心がけていきたいと考えています。

 また、未だ収穫できていない植物についてですが、今後、暖かくなっていくにつれて、あまり順調には生育していなかった私の植物も次第に成長していくことと思います。せっかく命を預かったからには、最後まで見届けるのが責任というものですし、ここまで一緒に過ごしてきたので、きちんと世話を続けていきたいと考えています。

 もし、これから植物の成長に変化が見られたり、成長した植物を収穫したりするようなことがあったら、そのことに関する記事をぜひ書かせていただきたいと考えています。

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 これまでご指導いただきました渡辺先生、オガタ先生、増子先生、本当にありがとうございました。ご迷惑をおかけした点も多く、大変反省しております。この展開ゼミを通して学んだことを糧に、今後の大学生活を送っていきたいと考えています。ご指導誠にありがとうございました。

コメント

医学部・佐々木さん

 育種の渡辺でございます。タイトルが今回の展開ゼミを通じて、心に残ったというのは最終報告からもよくわかりました。渡辺は「赤い血」を見るなどが苦手で、動物が苦手です。植物はそんなことはないですが、動物と同じ生命体と思って、栽培しています。時には、幼植物だけで、どこかをサンプリングして、残りを破棄することがありますが、やっぱり忍びないです。植物を扱う上で、「生命倫理」を問われることは実質的にはありませんが、他の生命体と同じく命あるものとして扱う心を持ち続けることは大事だと思います。医学部で学び、ヒトあるいはそれに近い動物に命をと思う場面も多いかも知れないですが、今回のことをきっかけに、広く命の大切さ、そのことへの責任感を大事にして下さい。

 中間報告のところで躓いたことがあった分、そこからの反省に学んでいることは、これから先の大学、社会人として「失敗を活かすことができる」ことを理解するきっかけになればよいかと。また、書かれてあったように自分を律して、自分で決めて、自分で行動する、その大変さは工学部・吉田さん農学部・竹本さんも書いてあったとおりです。直近の計画を立てることはもちろん、将来の専門を決めるに当たり、自分を理解して、行動することが大事かと。何かでこうしたことができそうでないと思ったとき、この展開ゼミでの大変さ、うまくいったこと、そうでなかったことを思いだして、チャレンジしてみて下さい。

20200128154438-b3ed84a2b01c97b63c2ea03ee6241cb84d02fcef.JPG 文章をどの様に書くのか、おもしろくストリー性があるように書く。そんな点に苦労したようですね。研究室に配属されるようになって研究をすると、いわゆる「論文」を書くようになります。論文もある種の流れがあると、とても読みやすいです。また、読みやすさを司るもう1つの要因は、イントロ部分であり、最後のまとめのところなのかも知れないですね。その意味で、イントロでどれだけ読み手を引きつけ、最後のところで納得してもらえるのか。読んでおもしろい論文というのは、そんな風になっているのだと思います。個別の各項目はそれなりに書けていると思います。翻って、項目間の連携、あるいは次への繋がりという点をもう少し工夫することで、さらなる高い文章を書くことができるのだと思います。そのためにも、これというよい文章をたくさん読んでみてください。その中の表現を取り込むことでよい文章のパターンというか、特性を理解できると思いますので。

 動物には細胞壁がなく、植物には細胞壁があります。そのことが動物と植物で活きる姿を大きく変化させているのは事実だと思います。ただ、共通な祖先から進化したと言うことで、細胞なり、機能するユニットでの作用機序では似ているところはたくさんあります。動物、ヒトで何かを学んだとき、すぐに分解することは難しい場合がほとんどかと。一方、植物では命あるものとはいえ、容易に解剖したり、観察したりできます。動物を植物に置き換えてと言うことは難しいかも知れないですが、何かを知るきっかけであり、深く理解できることに繋がると思います。なので、動物、ヒトだけというのではなく、植物も絡めて考えるようになれれば、幅広い思考ができるようになると思いますので。もちろん、なぜという気持ちを持つことは「科学」をする上で大事なことですから、忘れないように。また、この講義がきっかけというか、たくさんのレポートなどを書くために、キーボードを見なくてよいというのは、これからさらに文章を書き、文章力を高めるためには大事です。この後は、上にも書いたようなストーリー性を高めて、そんな文章を短時間で完成できるような構成力の向上に努めて下さい。講義が終わっても投稿があれば、コメントしますので、是非、uploadして下さい。いつでもwelcomeですので。さらに、成長してしっかりした文章を楽しみにしています。


 わたなべしする

 PS. 中間発表が大きく遅れての投稿でした。その時に考えた反省事項を忘れず、これからも〆切を守って頑張って下さい。