東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

最終報告 観察眼と文章力の確かな成長(理:山本実永)

2023年1月22日 (日)

最終報告

 皆さんこんにちは。山本である。今回は最終報告をしたいと思う。早いもので、履修したいという旨のメールを夏休みに書き、そして10月から受講し、あっという間に16回の講義(というよりは記事の投稿)まで来てしまった。ここまで速く感じるのはなぜだろうか...その理由は、難しい科目を多く履修したため勉強時間が増し、忙しくなったからだと思う。私は理学部のカリキュラムに従って履修しており、理科や数学が必然的に多い。しかし、私の苦手科目は理科と数学であり、かなり苦戦している(どうして理学部に入ったんですか?)。特に、有機化学が分からなさすぎて、苦戦を強いられている。そんなQOLが犠牲になるような生活の中で、一つだけオアシスと呼べる講義がある。それが、本講義だ。自分のやりたいように野菜を栽培し、それを好きなように記事にするということが、とても楽しい。来年度も受講したいが、それは後輩たちの受講機会を奪うことになるので、やめておく。さて、だらだらと話すのはここまでにして、最終報告に入る。

目次

(1) 思っていたよりもうまくいった、大変だったということ
(2) 他の講義への波及効果
(3) 毎日の観察を通じて身に着いたこと感じたこと
(4) 受講前後の変化
(5) 自分自身が習得できた点と研鑽が必要な点
(6) 記事のコメントをどの程度自分の栽培に反映できたか、どんな意味があったか
(7) 中間発表で掲げた目標の達成度
(8) 本講義で学んだことを日常生活にどのように活かせるか

(1) 思っていたよりもうまくいった、大変だったということ

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 私が思っていたよりもうまくいったことは、徒長せずに育ったことだ。徒長に気を付けるということは、第1回の講義や投稿した記事の中で何度も言われたことである。他の受講生の中には徒長に苦しめられた人もいたようで、このようなことにならなくて本当に良かったと感じる。徒長しなかった理由として考えられることは、私が野菜に対して厳しく接したことかもしれない。屋外の日光が当たるところで野菜を栽培していたことが功を奏したと考える。写真は、朝の日差しに当たる朝霧と同じところにおける夜の様子である。

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 このように判断したのは、他の受講生のある記事を読んだからである。それは、鹿股さんの『3. 成長とこれから』と『4. まさかの、、、』という記事である。当時の私は徒長しているかどうかの見分け方が分からなかったため不安に感じていたが、徒長に関して詳しく書かれたこの記事がとても役に立った。徒長した植物の形状や色について細かくかつ客観的に観察しており、徒長した植物体の変化をよく理解できた。
 次に、思っていたよりも大変だったことは、毎日の観察を続けるということである。私は、朝と夜(もしくは夕方)の一日2回の観察をするようにしていた。(ただ、このスタイルは途中で転換した。中間報告の頃から朝の観察に力を入れるようにし、その代わりに夜の観察をやめた。)最初の内は、観察することに慣れておらず気が進まないことが多かった。朝の観察の方は、早起きが得意なこともあって苦にならなかったのだが、疲れて帰ってきてからの夜の観察が億劫だった。加えて、植物には休日というものはなく(当然である)、観察を毎日行わなければならないということを面倒くさく感じていた。しかし、観察を数週間続けたところ、変化が起きた。毎日観察することは当たり前と感じるようになったのである。心情の変化は行動の変化としても現れ、遅刻しそうな朝であろうと眠気で倒れそうな夜であろうと、必ず観察するようになった。毎日観察することで記事のネタがしっかり溜まり、毎週の記事投稿も難なくこなせるようになった。やはり「一年の計は元旦にあり」というように、何事も最初が大事だと実感した。また、飽きっぽい私でも4か月も続けられたということで、少し自分に自信を持てるようになった。写真は、私が10月の栽培開始から付けた観察日誌である。大体100日分ある。

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(2) 他の講義への波及効果

 本講義で身に付けたことが役に立っていると感じた講義は、自然科学総合実験である。自然科学総合実験は理系学部生の前に立ちはだかる科目として有名である(悪名高いの方が適切かもしれない)。まず講義の内容を簡単に説明する。2回の講義の1回目に実験を行い、2回目に実験の振り返りや考察をするという構成で、それを6つの課題について繰り返す。締め切りは1回目の実験から2週間後に設定されており、書くべき内容をすべて網羅した6000字くらいのレポートを求められる。本講義で身に付けたことが役に立ったと感じた点は二つある。一つ目が、観察して気付いたことを客観的なデータと共に文章化することである。私は本講義で記事を書くことを通じて、植物の変化の捉え方と得られた気付きを文章化することに慣れた。この力は、実験結果の解釈とその解釈から分かったことを記述するときに発揮された。実際それは成果としてもある程度現れたようだ。私のレポートの成績は及第点ばかりで、ダメ出しと共にレポートが返ってくるということが常であったが、一度だけ結果の記述が丁寧だと褒められたことがあった。二つ目が、タイピングの技能である。自科総はかなりの文字に加えて図や表を挿入し、更に設問に答えなければならないため、レポート作成にかなりの時間がかかる。そこで、早く書き上げるためには、文字を入力するという単純作業を速くするということが必要である。初めの頃の私はタイピングがとても遅かったが、今ではキーボードを見なくても打てるようになった。それもこれも、本講義で毎週記事を書いてタイピングを続けたからである。タッチタイピングが板につくと、様々な課題を素早くこなすことができ、とても快適である。最初は自科総のレポートを書き上げるのに8時間くらい費やしていたが、最速で仕上げたものだと5時間くらいで完成したこともあった。やはりタイピングが下手で損することはないが、上手で得することはあるようだ。

(3) 毎日の観察を通じて身に着いたこと感じたこと

 毎日の観察をすることで、どうしたら相手にうまく伝わるか考える癖が身に着いた。その変化が現れている例として、第2回の記事第13回の記事を挙げる。第2回の記事では、3つの植物の様子を1日ごとにまとめた日記調で書かれている。一方、第13回の記事では、それぞれの植物について1週間の変化が記録されている。第2回記事を書いたときは、日記調で書いたほうが変化をつかみやすいのではないかと思っていたが、今になって読み返すとかなり分かりづらい。一つの植物の変化をたどるために、1日ごとにちりばめられた情報を集約しなければならず、かなり読みづらい。他方の第13回記事は、植物ごとに変化がまとまっているため、読者が変化を追いやすくなっている。更に、変化がまとまっているということは筆者にも影響があるということに気が付いた。第2回記事では野菜の変化を日ごとに記述して終わっていたが、第13回記事では1週間の野菜の変化を記述したうえで、何らかの判断をするところまで踏み込んで記事を書いている。これらの書き方の変化は、相手にどのようにして伝えるかを考えていることの現れである。その習慣は日常生活でも生きていて、メールやメッセージを送る前に文面が分かりやすいかを見返す癖が付いた。また、写真の撮り方も異なっている。第2回記事の写真は斜め上から撮ったもので、定規を当てておらず実際の大きさをつかみにくい。一方、第13回記事では、真上と真横から写真を撮り、定規を当てているため、大きさをつかみやすくなっている。今になって見返してみると、定規がないと全く大きさが分からない。実際に育てているときは、毎日のように見ているため感覚的に分かるが、数か月も経つとすっかり忘れてしまうものである。育てた私がこの有様では、定規がない写真を読者が見たときに大きさが全く分からないということは火を見るよりも明らかである。

(4) 受講前後の変化

 受講前と受講後では、一回に書ける文章の量が増えたと感じる。受講前は、400字くらいのレポートでも書き上げるのに苦労していた記憶がある。今では、1000文字くらいの文章を涼しい顔で書けるようになった。このような変化の要因として考えられることが二つある。一つ目が、文章を書く習慣ができたことである。以下は第二外国語の先生から聞いたことだが、人間は習慣化された行動をするときストレスを感じないそうだ。例えば、歯磨きが習慣になっている人が、歯を磨くことをめんどくさいと思うだろうか。それと同じことで、毎週のように長い文章を書くことに慣れると、ストレスを感じないで長い文章を書けるようになるというわけである。二つ目の要因が、書かなければならない文章の量が増え、それに適応したということである。この適応に大いに影響したのが、前述の自科総である。自科総ではレポートに含めるべき内容が提示されるのだが、それら全てを網羅するとかなり長い文章を書かなければならない。私がこれまで提出したレポートでは、大体6000字くらいである。どんなに嫌であっても単位のために書くということを繰り返すことで、適応したのではないだろうか。そして、長い文章を書くことの副産物として、タイピング速度が向上した。これも本講義を受講したことで生まれた変化だと言える。

(5) 自分自身が習得できた点と研鑽が必要な点

 まず、私が習得できた点について。本講義を通じて、自分なりの着眼点で気づいたことを文章化する力が付いたと感じる。これについては(2)と被ってしまうので、詳しくはそちらを読んでほしい。次に、更なる研鑽が必要な点について。それは、観察していて何らかの変化に気づいたときに、その変化の要因を考察するということである。私がこのように感じたのは、高橋さんの『小松菜ついに実食』という記事を読んだ時である。この記事では、栽培した野菜を調理して食べ、その時に気づいたことを記述し、その気づいたことの原因となっていることを考察するという構成になっている。私の記事はというと、気づいたことを記述するところまでは達しているのだが、考察するところまでできていない。そして、なぜ考察できていないのかということを考えたときに思い当たることは、知識が足りていないことが挙げられる。知識が足りないことが問題として顕在化していないが、いつか何らかの支障をきたすだろう。そうならないために、分からないことがあったらまず調べてみてみようと思う。インターネットや本を使って、簡単に検索することができるので、それらを活用していきたい。今後、卒業研究では足りない知識を何としてでも補う努力が必要になるだろうから、知らないことを調べて我が物とする癖を身に付けたいと思う。

(6) 記事のコメントをどの程度自分の栽培に反映できたか、どんな意味があったか

 いただいたコメントは、概ね栽培に生かせたと思う。先ほども書いた通り、私は野菜を育てるということにそれほど詳しくないため、栽培方法をどうしたらよいか悩むことが多々あった。そのような時に、コメントが大いに役立った。自分の記事に書いた質問へのコメントはもちろん、他の受講者の記事に対するコメントも参考になった。他の受講生が記事に書いていることは自分が気づかなかったことに満ちており、それに対するコメントも私が受け取ったものとは異なるもので、新たな気付きを得る機会となった。

(7) 中間発表で掲げた目標の達成度

 まず、中間発表で掲げた目標を振り返る。目標は大きく三つ書いた。一つ目が、毎週投稿のペースを守りつつ、分かりやすい記事を書くこと。二つ目が、他の受講生の記事で得た新たな気付きや着眼点を自分の記事に取り入れること。そして三つ目が過去の記事や他の受講生の記事をしっかりと読むことである。
 一つ目については、毎週投稿のペースを守り、分かりやすくなるように書いたと思う。毎週投稿は1回だけできなかったが、あれは必要火急だったのでやむを得なかった。分かりやすさというのは読者が評価することなので、何とも言えない。ただ、私は記事を書き上げた後に2回ほど見返してから投稿するようにしている。また、写真の入れる位置をよく考えて、文章と写真の関係が分かりやすいレイアウトになるように心がけた。そのため、多少分かりやすくなっていると期待している。
 二つ目については、ある程度できたと感じる。ある程度とした理由は、他の受講生の記事には参考になることがたくさんあり、すべてを取り入れきれなかったからである。私が参考にさせていただいた一例として、鹿股さんの記事がある。写真を加工して株ごとに名前を振り分けるということをしており、栽培していない人でも識別しやすいようにしている点が素晴らしいと思い真似した。これを生かした記事が第12回記事である。この記事では朝霧の葉の様子を述べているが、写真に円を書き込むことでどの葉について言及しているか分かるようにしている。写真に書き込むという方法を駆使すると説明が簡単になり、読者にとっても分かりやすいのではないだろうか。
 三つ目については、できたと思う。他の受講生が記事を投稿したらすぐ読むようにしていた。また、過去の記事は、朝霧と浅漬けミックスの温室を作るときにたくさん読んだ。先達や他の受講生の記事を読むと、栽培で何に注意すればよいのか、何で困ったのかなどが分かり、ためになる情報ばかりたった。また、自分と同じところでつまずいていたり悩んでいたりする記事があると、その記事のコメントが自分の栽培に生かせるということも多くあった。最近は忙しくてあまり読めていないが、テストが終わったら未読の記事をまとめ読みしたいと思う。

(8) 本講義で学んだことをどのように他の講義に生かせるか

 本講義では、文章を書く力と観察する力、更にタイピングする力(というよりは技能)が身に着いた。これらの力は、これからの大学生活できっと生きるに違いない。例えば、実験をするときに注意深く観察し、気づいたことを分かりやすくまとめ、それを文章にするというように生かせる。他にも、課題を短時間で終わらるために素早くタイピングする力が生きる。また、日常生活でも生かせる。例えば、連絡をするときは分かりやすくまとめるという力が生きるだろうし、何らかの判断をするというときは注意深く観察することで適切な選択をできるだろう。
 そして、最後に栽培した作物について。実は、栽培した野菜は収穫して食べてしまった。これらについてはおいおい記事を書こうと思う。できれば春休みに入る前に書き上げたいが、さてどうなることやら。

それでは、これにて最終報告を終えたいと思う。(6048字)

コメント

理学部 山本さん

育種の渡辺です。最初のカブの写真がハイインパクトですね。市販のカブのように下の黄色くなった葉っぱを除いて、とても管理されている畑(でなくて、植木ばちなのですが)のように見えます。どのように見せるかという点もこの半年でしっかり学習できたのではないでしょうか。理学部で理科と数学に苦戦しているのは、ちょっと大変なのでは。という渡辺も有機化学は苦戦しましたが、何とか理解したのを思い出します。数学の代数幾何学はかなりというかめちゃくちゃ難解でした。そんな中で、理科の生物学でしょうか。いや、作文をしているので文系なのかも知れないですが、オアシスになったのであれば、幸いです。そんなオアシスだったことも起因したのでしょうか。また、この講義をリードして、最終報告も一番乗りというのは評価に値します。

DSCN1907.JPG毎日の観察。大変だったと思います。それを続けることができたことはこれからの活動の自信になるでしょうし、このレベルならできる、という線引きが心の中でできあがったのではないでしょうか。1点、これから学年が上がるごとでよいので、こうした実験の記録を専用の「ノート」に記すのがよいと思います。できれば、鉛筆でなくてボールペンで。卒論、修論、博論などの実験ノートが研究では用意されます。また、記録をあとで修正できないように、ボールペンで書くのが大事です。特許などのいつ、というような大事な証拠になるということです。是非、それを2年次ではトライしてみて下さい。きっと、自分のもののできると思います。書かれてあるように、ノートに書くことが自然な行動になりますので。

「自然科学総合実験」というのはこんなにハードなのですね。6,000文字の文章を書かないといけないのはすごいです。渡辺が学生の頃は、理科の中の「化学」、「生物」だけが必須でした。渡辺の学科は(農学部農学科)。物理、地学は好きな人が受講する感じでした。その実検とあわせて、この講義でキーボードを見ないで入力できるようになったのはこれから大事な戦力になるはずです。脳みそでイメージしたことが文章になる訳なので。是非、この力をさらに磨き上げて下さい。レポートだけでなく、結果をどのように見せるのか、よい写真とよい文章が重なると、分かりやすいわけです。その大事さを時系列で改めて、振り返りができていることがniceです。写真に物差し。自然科学の研究をやると、当たり前になるのですが、是非、学年が進むごとにそうした大事なことをさらに習得して下さい。

DSCN1939.JPG変化に気がつくということ、これも結構難しいことです。しばらく立てば変化に気づきやすいですが、短い時間でどこがどのように変化しているのか。最近であれば、Time-lapseという方法があります。同じ角度から写真を撮って、それを重ねて動画のようにする。ぱらぱらマンガのような方法と言えばよいでしょうか。そうした機会の力を借りるのももちろんですが、自分でここが何となくと気がつく感性を持つこと。その感性を習得すると、実験が楽しくなります。もちろん、書かれているようにその結果を解釈することは、来年度以降の専門の学びで必要な事象を習得すれば、知識は増えますし、考えるようになりますので。

目標を立てると言うことは短期的にも、長期的にも大事なことで、これができたという達成感も生まれてきます。ここまで書いたような一連のことを自分で記事を書くだけでなく、他の受講生からも刺激を受ける感受性を持ったこと。大事にして下さい。講義としては、今週が最後ですが、書かれているように試験などが落ち着いたら、食レポなどの記事を投稿して下さい。最近は講義のあとに投稿する受講生は減ってきましたが、コメントは投稿がある限り書きますので。

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わたなべしるす